↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
終章「最高の商売。和食は、最後まで旨かった。」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/133

閑話「2070年の歴史授業」

 エピローグ、高校にて歴史の授業。


 2070年、春。

 高校二年生の歴史の授業だった。

 教師の名は中村といった。四十代だった。


「今日は城佑について話します」と中村は言った。

 生徒の一人が手を上げた。

「先生、城佑って本当にいたんですか?」


「いました」

「でも四百年生きてるじゃないですか。人間じゃないですよね」


「人間ではありません」と中村は言った。「エルフです」

「エルフって本当にいるんですか」


「記録が残っています。外見の描写が四百年間一致しています。帳簿の筆跡が四百年間同一です。エルフという存在が何であるかは別として、城佑という人物が四百年以上存在し続けたことは事実です」


「エルフなのに何で名前が日本的なんですか?」

「良く分かってないんです」


 別の生徒が手を上げた。

「先生、結局城佑は何をした人なんですか」


「売った人です」

「それだけですか?」


「それだけです」と中村は言った。「教科書を開いてください。第七章」

 生徒たちが教科書を開いた。


 中村が黒板に書いた。

「神の力を持ちながら何もしなかった。だから人間は自分で考えた。」

「これが城佑についての最も正確な記述です」と中村は言った。「では質問します。城佑は何もしなかった、と言いますが、本当に何もしなかったと思いますか?」


 しばらく沈黙した。

 前の席の女子生徒が手を上げた。

「売りました」


「そうです。売りました。では売ることは何もしないことですか?」


 また沈黙した。

 後ろの席の男子生徒が言った。

「売ることで、買った人間が考えるようにした、ってことですか?」


「もう少し正確に言えますか?」

「……売るだけで、あとは人間に任せた。だから人間が考えた」


「そうです」と中村は言った。「それが四百年間続きました」

 生徒が一人、呟いた。

「和食のためだけに、四百年ですか?」


 中村が少し笑った。


「帳簿には鰻重の記録が四百回以上出てきます」

「好きすぎる」と誰かが言った。笑いが起きた。


 中村が笑いが収まるのを待った。

「来週、帳簿の原文を読みます。一番最初のページから」と中村は言った。「何が書いてあるか、予習してきてください」


 チャイムが鳴った。


 生徒たちが教室を出ていった。

 最後に出た女子生徒が、黒板の字を見ながら言った。

「先生、城佑って、幸せだったんですかね」


 中村は少し考えた。


「帳簿に『鰻重、旨かった』と四百回書いてある人間が、不幸せだったとは思えませんが」

 女子生徒が笑った。出ていった。


 中村は黒板を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。