↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
終章「最高の商売。和食は、最後まで旨かった。」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
130/133

閑話「信長の墓前、そして」

 2060年、死の床にある佑が見た、最後の夢の話だ。


 場所は分からなかった。


 明るかった。暗くもなかった。ただ、どこかに居た。

 声がした。


「遅いぞ、長耳」

 振り返った。


 信長がいた。

 三百年前と同じ顔だった。老いていなかった。あの頃と同じ目をしていた。鷹の目だった。


「……信長殿」

「やっと来たか」と信長は言った。「四百七十年は長すぎる」


「商売が長引きました」

「知っている」


 信長が何か持っていた。杯だった。二つあった。一つを佑に渡した。

「飲め」

「何ですか?」


「日本酒だ」と信長は言った。「最高の米で作った。値段はつけるな」

 佑は受け取った。

「……値段をつけません」


「珍しいな」と信長は言った。「お前が値段をつけないのは、よほどのことだぞ」


「よほどのことです」

 二人で飲んだ。


 信長が言った。

「長耳、楽しかったか」

「ええ」と佑は言った、迷わなかった。「最高に楽しかったです」


 信長が笑った。

 四百七十年前、本能寺の翌朝に初めて見た笑い方だった。


「そうか」と信長は言った。「ならよかった」

 また沈黙した。


「人間は腐りましたか?」と佑は聞いた。

「腐らなかった」と信長は言った。「お前が見てきた通りだ」


「あんたの言った通りでした」

「そうでもない」と信長は言った。「お前が売らなければ、腐っていたかもしれん。外の者が守り続けたら腐るが、外の者が何もしなくても腐る。売るだけで丁度よかった」


 佑は杯を見た。

「……そうですね」


「まあ」と信長は言った。「どちらにしても、面白かったろう」

「面白かったです」


 信長が立ち上がった。

「もう行け」と信長は言った。

「まだいてはいけませんか?」


「お前の仕事は終わった」と信長は言った。「和食は旨かったか」

「……旨かった」


「なら十分だ」

 信長が背を向けた。


「信長殿」と佑は言った。

「なんだ?」


「ありがとうございました」

 信長は振り返らなかった。

 ただ、手を一度だけ上げた。



 佑は目を開けた。

 フィリアの作った味噌汁の匂いがした。

 旨そうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。