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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第九章「記録し続ける者」

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閑話「日本人、エルフに礼を言わない」

 1950年、東京。


 戦後復興の市場を、佑は歩いていた。

 声をかけられた。


 振り返ると、三十代の男だった。作業着を着ていた。

「あんた、耳長いな?」

「長いですね」


「エルフか?」

「そうです」


「ふうん」

 男は特に驚かなかった。じろじろ見なかった。


「何か用ですか?」と佑は聞いた。

「別に」と男は言った。「ただ、珍しいから声かけた」


 それだけだった。男は行ってしまった。


 佑はしばらくその場に立っていた。

 三百六十八年前、佑が最初に市場を歩いた時、人々が避けた。指さした。遠巻きに見た。


 百年前でも、まだ「神の使い」と言って頭を下げる人間がいた。

 今は「珍しいから声かけた」だった。


 佑は歩き出した。

 悪くなかった。


 むしろ、これが一番良かった。

 その日の帳簿に、佑は書いた。



【1950年・記録】

 市場にて、作業服の男に声をかけられた。

 「珍しいから」とのことだった。

 礼も言われなかった。

 神扱いもされなかった。


備考:最高だった。


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