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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第九章「記録し続ける者」

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閑話「500年目の夜」

 1920年、工作船。


 帳簿のインクが切れたのは、1920年の秋だった。

 佑は気づかなかった。書いていた。気づいたら、紙に何も残っていなかった。


 ペンを見た。空だった。

 三百三十八年間、同じペンを使っていた。異世界から持ってきたペンだった。インクを補充しながら使っていた。補充できないほど減ったのは、初めてだった。


 佑は翌日、市場に行った。

 文房具店があった。ペンを買った。日本製だった。


 工作船に戻った。帳簿を開いた。新しいペンで書いた。

 字が少し違った。

 佑はしばらく字を見ていた。


 その夜、フィリアが部屋に来た。

「佑、ペンが変わりましたね?」

「ええ、インクが切れました」


「何年使いましたか?」

「数えていません」


 フィリアが窓の外を見た。夜の地球が見えた。

「佑」


「なんですか?」

「故郷に帰りたいと思いますか?」


 佑は少し間を置いた。


「……異世界の前、こことは別の日本ですか?」

「流石に無理ですよ」


「帰れたら帰りたいですか?」

「いえ既にここが故郷ですよ。フィリアや皆がいる、考える事を止めない人達がいる」と佑は言った。


 フィリアが笑った。

「そうですか」


「なによりずっと楽しかったんですよ。フィリアは?」と佑は言った。

「勿論今も楽しいですよ」


「初めは戦国にやってきて、どうなる事かと思ったけどね」

「ね」


 佑は新しいペンで帳簿に書いた。



【1920年・秋・記録】

 ペン、新調。日本製。

 書き心地、悪くない。


備考:故郷について考えた。

   結論、ここでいい。

   和食があるから。

   それ以外の理由も、ある。

   書かない。


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