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第49話 一九六〇年代 平和の時代
戦争が終わって、世界は少しずつ変わった。
豪州合衆国は少しずつ復興している、華南・華北と朝鮮半島では余りに多くの人が亡くなり経済がガタついている。
少しずつ出来る事をやるしかない。
日本列島は、その全てを外から見ていた。
嵐の外にいた。
佑は低空飛行で日本を見た。
一九六〇年代の日本は、明るかった。テレビが普及し始めていた。工場が動いていた。若者が街を歩いていた。
「……良い時代です」とモリスが言った。
「良い時代です」と佑は言った。
「でも佑は心配そうです」
「少しだけ」
「何が心配ですか」
佑は下界を見た。
「平和に慣れた人間は」と佑は言った。「平和の値段を知らない」
「それは仕方ないことではないですか」とモリスは言った。
「仕方ないことです。ただ」
「ただ?」
「知らないまま、知ろうとしないことが、怖い」
モリスが少し考えた。「佑は何か書きますか、それについて」
「……考えています」と佑は言った。「いつか書きます」
「いつか」
「まだ、言葉が見つかっていないので」
それから五十年かけて、佑は言葉を探し続けた。




