閑話「ドワリン、砲撃後の水道修復」
1868年、博多 戦後三日目。
砲撃が止んで三日後、ドワリンは博多にいた。
水道管が破裂していた。四箇所。地下で割れていた。地上に水が溢れていた。
ドワリンは地図を広げた。管の配置を確認した。どこから直せば最速で復旧するか、三分で計算した。
「ここから始めます」とドワリンは作業員に言った。
「えっ、今すぐですか?」と作業員が言った。
「今すぐです」
「でも戦闘が終わったばかりで——」
「水道は戦闘より速く復旧します」とドワリンは言った。「それが私の仕事です」
作業が始まった。
瓦礫を退かした。地面を掘った。割れた管を見つけた。ドワリンが管の状態を確認した。
「これは三十年前に私が設計した管です」とドワリンは言った。
「よく分かりますね?」
「分かります。私が作ったものです」
修理が始まった。
六時間後、一箇所目が復旧した。
近くにいた住民が、蛇口を開けた。水が出た。
住民が水を手に受けた。顔を洗った。
ドワリンはそれを見ていた。
何も言わなかった。
次の破損箇所に向かった。
四箇所全部が復旧したのは、翌日の夕方だった。
作業員が言った。
「ドワリン殿、少し休んだらどうですか?」
「後で」とドワリンは言った。「次の街に行きます」
「次?」
「長崎の水道も破損報告が来ています」
作業員が黙った。
「戦争が終わっても、水道の仕事は終わりません」とドワリンは言った。「文明を軽視した人間の後始末は、いつも時間がかかる」
ドワリンは次の街に向かった。




