閑話「戦場で焼けた学校」
1867年、九州 ある村。
シャリアが村に着いた時、学校はなかった。
あった場所は分かった。礎石が残っていた。焼けた柱の跡があった。三週間前、砲撃があった夜に燃えたと、村人が言った。
シャリアは礎石の前に立っていた。
何も言わなかった。
村人が言った。
「先生方は無事でした。子供たちも」
「……そうですか」
「本だけが、全部燃えました」
シャリアはまだ何も言わなかった。
礎石を見ていた。四つの角の礎石が、等間隔に残っていた。建物の大きさが、礎石だけで分かった。小さな建物だった。
村人がもう一言言った。
「子供たちは今、納屋で授業をしています。先生が、燃えなかった本を一冊持ち出せたそうで。それを皆で回し読みして」
シャリアが村人を見た。
「授業を、続けているんですか?」
「ええ」と村人は言った。「先生が『建物が燃えても授業は続ける』と言ったそうで」
シャリアは礎石に戻った。
長い間、立っていた。
日が暮れた。
シャリアはまだ立っていた。
翌朝、シャリアは工作船に戻った。
何も言わなかった。
ただ、その日から一週間、シャリアは一人で本を作り続けた。教科書だった。手書きで、百冊分。
一週間後、村に届けた。
村の先生が受け取った。
「ありがとうございます」
「礼はいりません」とシャリアは言った。「ただ一つだけ」
「なんですか」
「続けてください」




