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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四部「戦争・決着・そして締め」第八章「豪州合衆国との戦争」

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閑話「佑、初めて怒鳴る」

 1865年、工作船 佑の帳場。


 戦死者名簿が届いた。

 瀬川研究所からだった。七代目所長・瀬川次郎が集計したものだった。豪州との戦争、開戦から十年間の累計だった。


 佑は受け取った。


 表紙を開いた。

 数字があった。

 1847。


 佑はしばらく数字を見ていた。

 フィリアが部屋に入ってきた。何か言おうとした。

 

「フィリア」と佑は言った。

 声が違った。フィリアが止まった。

「出ていてください」


「……佑」

「今すぐ」


 フィリアが出ていった。

 佑は1847という数字を見ていた。

 

 一人ずつ、名前が並んでいた。ページをめくった。名前が続いた。まためくった。また続いた。

 佑は立ち上がった。


 何かを言おうとした。

 言えなかった。


 代わりに、帳簿を机に叩きつけた。

 音が出た。工作船の中に響いた。


 廊下でフィリアが聞いていた。ライルも来ていた。ドワリンも来ていた。全員が廊下に立っていた。

 誰も入らなかった。

 

 しばらくして、佑の声が聞こえた。

「……一人ずつ、名前を読む」


 独り言だった。

「全員、読む」


 それだけだった。


 その夜の帳簿に、佑は書いた。



【1865年・記録】

 戦死者名簿受領、1847名。

 名前を全員読んだ。

 読み終わるのに四時間かかった。


備考:怒鳴った。

   誰もいない部屋で怒鳴った。

   恥ずかしいとは思わない。

   思えなかった。


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