第89話 デートでフードコートあり? なし?
時間も昼時を過ぎつつあったので俺達はのんびりとフードコートに向かう事にした。
途中で服やアクセサリーなどの雑貨を見ながら移動する。
俺の服でもネックレスを付けたりすればちょっとオシャレに見えたりして、アクセサリーってすげぇなんて思ったりもした。
フードコートに着くとまだ人は多いものの無事に席に座る事が出来た。
「どっこいしょ~」
さっき俺の事おっさんくさいとか言っていたが、今の七月さんの方がおっさんくさいぞ。
「何食べる?」
「う~ん……柊くんは?」
「俺はーうどん食べようかな」
「うどんか~」
そんなにお腹も空いている訳でもないし、俺は元々食べる方ではない。
七月さんは顎に手をやり少しの間唸る。
「じゃあ私もうどんにする!」
「分かった。買ってくる。ざるうどんでいい?」
「いいよ!」
荷物と席を七月さんに任せてうどん屋さんに向おうと立ち上がった瞬間七月さんは「大で!」と付け足してきた。
「りょーかい」
無事に注文を終え会計も済ませ、うどんを受け取る。
うわ、意外と重いぞ。落とさないように気を付けよう。
他の人にぶつからないように慎重に、でも腕の限界が近いのでなるべく早く席に持っていく。
「わ、大丈夫? 持つよ、ありがとね」
「うん」
近くまで来ると七月さんが俺の腕が限界なのを察して持ってくれた。
やっぱり気遣い出来る人っていい。そしてこの程度で腕が限界を迎える俺はダサい。
やっぱり運動しないとだよな……。
俺の全盛期はバスケしてた中学生。その頃は腹筋も割れていたし、体力だって滅茶苦茶あったのだが今は見る影もない。
しょうがない、だってバスケをしていたのも中学一年生の途中まで。それと同時に学校にも行かなくなり運動もまともにせず家にいる日々。
高校に入ってから運動するのは体育の時だけ。他はダラダラ過ごしているんだからそりゃ色々と衰えるのも当たり前だ。
今も腹筋は割れているのだが、肉が無さ過ぎて皮しかないから筋肉が丸見えなだけで実際は人よりも筋力は無いという見かけ倒し。
でも最近は光や海と遊びに行ったり、小野さんとボーリングしたり七月さんに連れ出されたりしてそこそこ体力が付いてきた……と思う。
「あ、お金払う!」
「あーいやいいよ。面倒くさいし俺の奢りで」
「そ、そう? じゃあお言葉に甘えまーす!」
こういう潔く奢られる所とかは可愛らしく、先輩とかに好かれそうなタイプだよなとふと思った。
それに美味しそうに食べるし、幸せそうな顔をするし見ていて気持ちがいい。
俺もこういう後輩がいたら奢っちゃう気がする。
俺はふと七月さんの『デートしてよ』という言葉を思い出す。
「てかカフェとかじゃなくてよかった?」
デートなのにこんなフードコートで食事をしていいのだろうか。そういうデートは中学生までだったりしないかと不安になる。
如何せん、俺はデートもまともにしてこなかったから全く分からない。
でもどう考えたってデートの食事でフードコートは無いんじゃないか……?
そんな俺の不安を掻き消すかのように七月さんはへにゃりと気恥ずかしそうに笑いながら言う。
「あの落ち着いた雰囲気とか何か逆に緊張しちゃうから、私にはここが合ってるかな。えへへ……」
「まぁ確かに慣れないよね。行った事無いけど」
「行った事ないんかーい!!」
元気に突っ込むが、自分でも思いの外声が大きくなったのか周りの目を気にしながらうどんをすする七月さん。
「ただ想像してみただけだよ」
「な、なるほどね?」
そんな様子の七月さんに微笑しながら俺もうどんを口に運ぶ。
「もしかしてデートだからオシャレな所じゃないとダメだと思ってる?」
「え、うん」
「ないない。そんなルール。だって私絶対高級料理とかフレンチ? とか緊張して胃がギュッってなって逆に食欲落ちそうだし。そんな風になるくらいなら気楽なファミレスとかラーメンとかでいいかな」
「そんなものなの……?」
「そんなものなんですー」
言うと七月さんは箸をビシッとこちらに向けて付け足す。
「それにそんな所連れていかれたら私、その人と別れるか考えるレベルだよ」
「えぇ……?」
七月さんはそこまで嫌なんだな。
「ほら、サプライズとか特別感とか。君の為に頑張って高い予約したとかさ。そういう想いもあるかもしれないじゃん……?」
「いやいや、柊くん分かってないね。私の事をしっかり考えて、本当に想ってくれているのなら私が嫌がる事はしないでしょ? それにそんなお金があるならその分をまた次のデートとかに使って欲しいよね」
「な、なるほど……」
言っている事は分かる。分かるのだがそれってなんか……。
「その日を一生忘れない大切な思い出にしたいとか、そういうのってあるじゃん」
「むぅ、確かに……」
まぁ俺も全部想像で話しているだけなんだが。
七月さんは渋々納得した様子だったが、突然意地の悪い表情に変わる。
「柊くんってさ、意外とロマンチスト?」
「え、いやそんな事ないよ。全部俺の想像でしかないし」
「想像でそこまで考えれるなら十分ロマンチストだよ」
確かにそうなのかもしれない。何か急に恥ずかしくなってきたな。
「ま、私も色々言ったけどデートにルールなんて無いし、一生懸命考えたりちゃんと想いが伝わるのならそれが一番なんじゃないかなっ」
いい感じに話を締め括ると七月さんは食事を再開した。
いかにも沢山恋愛経験を積んできた人らしい口ぶりだったが――。
「…………でも七月さん彼氏出来た事ないんだよね?」
「うるふぁい!!」




