↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/105

第81話 マネキン買いは正義です

 〇中村海視点〇


「あ、中村くんおはー」


「あ、おはようございます」


 次の日、光からアドバイスを貰った服を着てバスに乗って動物園に向かっている途中で桃沢さんと遭遇した。


 昨日の帰りも途中までバスが一緒だったから、時間が合えば同じバスになるかもしれないなんて考えていたら本当にそうなってしまった。


「隣いい?」


「あ、はい」


 バスの隣って意外と狭いから肩が当たってドキドキする。それに何か昨日とはまた違う良い匂いするし。


 あまり嗅ぐのもキモいと思って自然に呼吸をしようとするが、今までどうやって呼吸していたかが分からなくなり息が苦しくなった。


「今日晴れてよかったよね」


「ッあ、はい。ですね」


「てかてか、夏休みの宿題どんだけ進んでる? あたしやっと昨日一個終わったんだよねー」


「お、俺もあんまり進んでないです」


 毎日アニメ見たり漫画とかラノベ読んで過ごしているからそんなに進んでいない。


 いざという時答えを見て写せばいいのだから。ふっふん。


「そうなんだ。なんかさ、宿題残ってるって考えると純粋に楽しめないよね」


「あー分かります」


「あれ? そういえば中村くんって頭いいの?」


「いやそこそこ? 普通くらいです」




 その後も桃沢さんがずっと話しかけてくるので俺はそれに答えるのに必死になっていると、いつの間にか目的の場所に着いていた。


 女子と隣合わせでこんなに話した事が無かったので既に少し疲れ気味ではあるのだが、ここからだと思うと不安になる。


 動物を見て疲れ吹き飛ぶといいな……。


「んぅぅ~ッ」


 桃沢さんが腕を上に上げ伸びをしているのを見ると、おっぱいでっかと邪な感情を抱いて反射的に自分の頬を叩いた。


「ん?」


 音に反応した桃沢さんが振り返ってくるが俺も首を傾げて誤魔化す。


 デニムのパンツに紺色の肩出しニット。首元にはネックレスをつけていて流石おしゃれだなという感想を抱く。


 本来服を着たら隠れているはずの肩が出ているのって凄くこう……いいな。


 言葉を選ばずに言うならエッチだと俺は思います。


 そんなキモイ事を脳内で一人呟いていると桃沢さんが俺をじっと見つめてくる。


 口に出てた!? と不安になっていると桃沢さんは上から下まで視線を向けた後意外そうな顔をした。


「昨日も思ったけど、中村くん意外とちゃんとした服持ってるよね。似合ってる」


「そ、そうかな。ありがとう」


 高校入ってからマネキン買いしててよかったぁあぁあ。


 自分で分からないなら店頭のマネキンのセットをひとしきり買えば間違いはないと教えてくれたあのラノベありがとう……。


「あたしの服装、どう?」


 自分の服装を褒められた事に安堵していると桃沢さんが自分の服をつまみながら尋ねてきた。


「す、凄い可愛いです」


 さっきエッチとか思ってたからそのまま言葉にしたらまずいと咄嗟に変換して感想を伝えると、桃沢さんは何故か目を見開いて少しの間固まっていた。


 え、可愛いってダメだった……? もしかして可愛いって言われるのそんなに好きじゃないとか!?


「…………そっか? ありがと」


 俺の心配を吹き飛ばすように桃沢さんはそう言って笑うと「んじゃ行こっか」と背を向け歩き出した。


 さっきの間は何だったんだろうと気になりつつも、置いて行かれないように後を追いかけ、入場券を買い園内に入る。



 外からも微かに匂っていた動物園特有の匂いがより濃くなる。


 動物園最後に来たのいつだっけと振り返っていると桃沢さんも同じ事を思ったらしく「動物園いつぶりだろ~」と辺りを見渡して楽しそうな表情をしていた。


「小学生以来かも。中村くんは?」


 振り返り問うてくる桃沢さんに「俺も小学生以来ですかね……」と微笑しながら返す。


 やっぱり女の子と二人きりで出掛けるなんて俺にはまだハードルが高かったかもしれない。

 まだ目を見て話す事すら出来ないし、会話のキャッチボールも全然出来ていないのだから絶対そうだ。


 高跳び30センチも飛べないのに、いきなり1メートルに挑んでいるのと同じような感じなのでは?


 いや、でも折角桃沢さんが俺の為に貴重な夏休みの一日を使って付き合ってくれているんだ。ここで折れたら申し訳が立たない。



「てかさ、昨日から思ってたんだけど敬語やめない?」


「え?」


「なんか同級生なのに敬語使われるの何か違和感っていうか、距離感じるからさ? あ、名前呼びとかもしてみる? か・い・く・ん?」


「えっいやっあっと……」


 ニヤニヤと口元を抑えながら名前を呼ばれ、からかわれているのが分かるもきょどってしまって俺は何も返す事が出来ない。


「あはは! ちょっと意地悪だったかな? じゃ、取り敢えず敬語をやめるのから始めよっか」


「わ、わかりま……わかった」


 また直ぐに敬語になりそうになるも、俺は頑張ってタメ口に直す。


「ふふ、慣れだよ慣れ~」


「は……うん」


 これは意識してないと直ぐに敬語に戻りそうな気がして動物なんてそっちのけになりそうな予感がした。



「ッッすぅぅぅー。この匂いも懐かし~」


「粘土もこんな匂いしませ……しない?」


「あ~! 分かるかも! 粘土というか粘土板? 分かんないけど確かにこんな匂いしたかも!」


「だ、だよね。図工でね!」


「あはは! 図工なつ! 図画工作だっけ。懐かし~」


 ついこの間カラオケで七緒達と昔の話をしていたお陰で思い出す事ができ、桃沢さんを笑顔に出来た。


 その事で少しだが自信が付いた俺はその後動物園を回る時、今までは受け身の会話ばかりだったのだが自分が思った事をちょっとだけ口に出せるようになっていった。




 猿やライオン、キリンや象。タヌキやキツネなんかを可愛いと言いながら一通り見て回るとお昼時になったので園内のレストランでご飯を食べたりしたのだが、桃沢さんは甘いのが好きらしくご飯はそこそこにデザート系を3個も頼んでいたのが印象に残った。


「な、なに?」


「いや甘いの好きなんだなって……」


「い、いいでしょ別に」


 思った事を言ったら何故か恥ずかしそうにそっぽを向いて食べ始めた時は怒らせたかと思ってちょっと怖かった。


 食べ終わる頃にはそんな事すっかり忘れたのか幸せそうな表情をしていた。



 その後、触れ合いコーナー的な所でウサギやモルモットなんかをもふったり餌やり体験なんかをして癒された。


 記念のツーショットや、動物と一緒に写真撮ったりする時も俺は終始ドキドキしていて心臓の音が聞えないか不安だった。



 緊張で楽しめるか不安だったけど、しっかり動物たちに癒されて楽しむことが出来た。


 動物は偉大だ……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。