第76話 コメント欄がてぇてぇで埋め尽くされました
〇柊七緒視点〇
ディストにカスタムの運営の人からここから本配信をまたミラーしていい事が伝えられたので、俺達は本配信を画面に映し音量を抑えつつ三人で興奮冷めやらぬまま会話を続ける。
本配信の音量を抑えるのは俺の配信を見ている人に、俺や二人の声がしっかり届くようにだ。
『てかてか、もしかしたら3位以内入ってるんじゃない?!』
「入ってるといいねー」
『全然ワンチャンありそうだね』
【全然あるぞ】
【入っててくれー!】
【まじである】
【前の点差的に1位は無さそう】
『えへ、本配信めっちゃラギくんの事褒めてるよ!』
あきななが突然笑いながらそんな事を言った。
『それにしても最後の駆け引き凄かったですね。元プロのジンと対等に渡り合えていたラギ凄すぎました。あはは、もう私興奮してて語彙が無くなってます』
『ははは、いやほんとにそうですね。全部解説しようとしたら時間が足りないのでしませんが、あの数秒の間にお互い滅茶苦茶細かい高度なテクニックやら心理戦とかの駆け引きがありましたからね。それにしてもラギは本当に最高ランクダイヤなんですか?』
『私も思いました。最後の戦いだけみればもうマスター、下手すればプレデターと言われてもおかしくないプレイングをしてたと思うんですが!』
『いやでも実際ランクはダイヤということで……ここぞという時に実力が爆発してましたね』
本配信の方に少し耳を傾けてみると確かに褒められていて思わず口元がニヤけそうになるが俺は大した事の無い様に反応する。
「え?まじ、ほんとだ」
勿論嬉しいがそんなに強くもなく、たまたま勝てたような感じなのに大勢の中で褒められるとか過大評価でしかない。
『え? なになに照れてるの~? 可愛いね~』
俺が照れ隠しをしたのを見抜いたのか、タケさんはニヤニヤとウザ絡みをしてきた。
『えー? ラギくん照れてるの~? かっわいい~?』
と何故かあきななもそれにノリ、図星の俺が何も言えず黙っているとリスナーにまで【可愛いね~】とコメントでからかわれ始めた。
「…………~~ッ! いや、そりゃ……嬉しいし照れるに決まってるじゃん……」
『『…………』』
そう言葉にするのも恥ずかしくてごにょごにょと小さな声で言うが、何故か二人の反応が無い。
もしかして聞こえなかったのか? ま、まぁ聞えてないなら別にそれでもいいんだけど。
『『……かわいい』』
「え……?」
【かわいい】
【ガチか】
【可愛い所もあるんだ】
【ふーん】
【ガチ照れぢゃん!!】
「なんで!? 意味わからん!」
『えっへへーラギくん照れるとそんな感じなんだ。可愛いねぇ~!』
なんで俺が少し照れただけでこんなに言われるのか訳が分からず、さっきまでの恥ずかしさよりも今は困惑の方が上回っていた。
いつの間にかタケさんの声は一切聞こえておらず、恐らくミュートにしている事が容易に想像出来た。
また前みたいに俺とあきななのやり取りを腕組みして頷きながら聞いているんだろう。
『んふふー可愛いねラギくん~ラギく~ん?』
何度も言ってくるあきなながいい加減ウザいし、こうすると皆の反応がいいだろうと考え仕返しをすることに。
「はいはい、あきななの方が可愛いですよー」
『ラギくんかわ…………かわッ!?』
正直あきななに対して可愛いという言葉を言うのは恥ずかしかったし躊躇いがあった。というか女子に可愛いとか全然言った事がなかったから緊張した。
噛まずに、なんとでもないように。普段から可愛いと言っている風な感じで言えるか少し不安だったが何とかなった。
あきななは突然可愛いと言われると想像以上に驚いて少しの間フリーズしていた。
普段から学校とかで友達に可愛いとか言われ慣れてるものだと思っていたのでこんな良い反応をするなんて少し意外だ。
【てぇてぇ】
【砂糖吐きそう】
【てぇてぇよ】
【これがてぇてぇか】
【チーム名回収きた】
【あきらぎてぇてぇ】
【はよ結婚しろ】
ツニッターで後方腕組みの動画がバズった影響とチーム名や本配信で紹介された事など全部相まってか、思わず苦笑してしまうくらいにコメント欄はてぇてぇの文字で埋め尽くされていた。
『て、てかてかー最後もうあれだったよね。皆集中し過ぎてシーンってなってて誰一人として喋ってなかったの面白かったよね、あははは……』
滅茶苦茶あからさまに話しを逸らしたあきななだったが、これ以上何か言ったらまた俺に返ってきそうなのでその話の流れに乗る事にした。
「あー最後の1vs1の時?」
『そうそう!』
あの1vs1の場面、思い出そうとしても鮮明に思い出せる。それくらい集中していたから、多分誰かが話していても何も聞こえていなかった気がする。
『私もう祈ってたもん、最後いつ投げられたか分かんないグレで死んだとき』
「あーあれね!? 俺もびっくりしたもん、爆発音したらあきなな死んでたからさ」
『あきななちゃんの断末魔おもろかったわー』
『ちょっと!!』
見守っていたであろうタケさんも会話に戻ってくるや早々にあきななをからかう。
断末魔を笑われたあきななが少し恥ずかしそうに怒るのがまた面白くて笑いが生まれる。
あの時は緊迫した状況だったから何も思わなかったが、今思い返すといい絶叫っぷりで頬が緩む。
「あはは、切り抜き確定!」
『うー最悪~。全然いい所無かったし~……』
【あきなな、グレで死んだあとめっちゃ小っちゃい声で「ラギくん頑張れッ!」って言ってたの可愛かった】
「って来てるけど、言ったの?」
『えぁっ!? ちょ、あれ入ってたの!? ちょっと待ってほんと恥ずかしい……』
顔を手で覆ったのか最後の方は少し声が籠っていた。
「言ってたんだ。後でアーカイブ見よ」
『うう゛ぅうー!』
本配信のアーカイブ見るのも楽しみだな。あと、俺達がキルした敵の人達のアーカイブもみたいな。どんな反応してるのか楽しみだ。
本配信で集計が終わり、もうすぐ順位を発表するらしい事が告げられた。
『いやぁ、何位だろうね~? 結構いい順位だと俺は思うよ!!』
『3位以内に入れたら嬉しいけど微妙だよねー』
「んね、二試合目タケさんが一人で逃げなければ……」
『その件はほんとにすんませんした』
「『あははは!』」
【ガチ草】
【あれは酷かったなw】
【情けなかったね】
「俺は正直入れなかったとしても一回チャンピオン取れたし、それだけで充分嬉しいや」
『いや分かる。まじで熱かった。この面子の中でのチャンピオンはまじで凄い』
『ね! 私も楽しかったし別に順位あんまり気にしてない! てかてか、最後元プロ? のジンさんとの1vs1でしょっ!? それで勝ったのほんと凄すぎた!!』
【あれは激熱だったな】
【最高の瞬間】
【見てるこっちも緊張した】
【瞬きする間もなかったよな】
【かっこよすぎた】
最終的に俺がチャンピオンを掴んだけど、タケさんやあきなながいなかったら絶対取れなかったと思っている。小さなカバーや気遣い、声出し、IGLなどどれか一つでもかけていたら無理だった。
最後のジンさんとの戦いは正直運もあるけど、それでも勝ったことは事実で。一生誇れそうでカスタムに出て良かったと心から思った。




