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第74話 最強の元プロvs平凡な底辺配信者


 残る相手がジンという事を認識してしまい、嫌でも身体に力が入ってしまう。


 先程ジンがいた方向に急いで視点を向けるがそこにジンの姿は無く、代わりに直ぐ近くで爆発音が響いた。


『い゛っだぁあぁっ!? ごめん!』


 そしてあきななの絶叫が響くとほぼ同時にあきなながダウンする音が聞こえる。


 俺は何が起こったか一瞬分からず戸惑い反射的にあきななの方を見てしまう。

 だがその刹那で画面の端に映ったジンの姿を俺は見逃さなかった。


 ラッキーな事に直ぐそばに人一人分くらいギリギリで隠れられる岩があり、俺はそこからジンに向かって弾を撃つ。


 ようやく弾を当てられたが、勿論ジンも撃ち返してきて俺の方が多くダメージを喰らってしまった。


 もうここまで来たら一か八かの勝負。このまま一方的にやられたくない。


 俺は敢えて詰めさせるためにフェイクで回復する音を出すと目論見通りジンが詰めてきた。


 マウスが手汗で滑りそうになりつつも、しっかりと握り直し軽く息を吸い、俺は壁から少し身体を出しジンにダメージを入れる。


 それでもジンの足は止まる事なく突っ込んで来る。


 俺は一度岩に身を隠すと、思い切って岩を蹴り飛び出した。するとジンが反射的にショットガンを撃ってきてアーマーが割れた。

 左下をチラッと見て自分の体力を確認すると、当たり所が良かったのかそこまでダメージ貰っていなかった。


 ジンは身体を反転させると、俺がさっき使っていた岩を同じように蹴る。瞬きする暇すら忘れ俺は画面を注視する。


 俺よりも高いジャンプに焦って弾を撃ちそうになるがグッと堪え、空中のジンにしっかりとエイムを合わせ下がりながら銃を撃つとヘッドショットが数発入りアーマーを割りローHPにさせる事が出来た。



 行けるッ!!



 ジンがショットガンを撃ってくるがその距離では大したダメージにならない。そして俺はそのまま射撃を続け倒――し切る直前、ほんのあと少しのダメージ入れたら倒せた所。あと一発でも当てたら勝てたという状況で弾が切れてリロードモーションに入ってしまった。


 やばいっ! 敵に夢中になり過ぎて弾管理が出来てなかった!


 俺は焦りながら急いでサブ武器を取り出すもその間にジンは別の物陰に隠れてしまった。


 回復しようとする音が聞こえる。


 自分のHPもロー。そしてジンもロー。だけど回復されれば絶対に俺が負ける。


 だがだからと行って突っ込んでいったら完全にショットガンの間合い。


 だが迷っている暇なんてない。回復しようとする音が聞えた時点で俺の答えは決まっていた。


 間に合えッ!!


 武器を持って移動するより仕舞って移動した方が早いので、ジンが撃ち合ってこない事に賭けて急いで岩陰に向かう。


 岩陰のどこにいるか正確には分からなかったので、岩を登り上から視認する事にした。


 ジンを視認したタイミングで、ジンも俺を視認して瞬時に回復をキャンセルする。


 あと一発でも!!!!!


 武器を取り出すタイミングはほぼ同じ。



 そして両者の発砲音が交わり――――



「ッしゃぁぁっぁあぁ!!!!」

『なあぁぁぁぁっぁぁぁぁいす!!!!!!』

『っっぅぅうッ!! すごい! ないすっないすないすっ!!!!』


 ジンを倒した瞬間に嬉し過ぎて雄叫びを上げると同時に二人も同じく叫ぶ。



【うぉぉぉぉ!!!!!】

【あつぅぅう!!】

【まじ!?】

【ガチか……】

【ラギお前やばすぎ】

【ないちゃん!!】

【GG】


 極度の緊張から解放され全身から力が抜けると椅子にもたれかかる。いつの間にか呼吸するのを忘れていたのか息切れした状態になっていた。


 俺は深く呼吸をしながら目を閉じ瞳を潤す。


 瞬きするのすら忘れ画面を注視していたからか目が乾燥していたのが分かった。


 全身がドクドクしている。心臓が脈打つ毎に身体もドクドクと跳ねる。

 心臓の音がみんなに聞こえているのではないかというくらいに。


 コメントの方を見ると物凄い勢いで称賛のコメントが流れていて俺は思わず笑い声が漏れた。


 こんな早く流れて行くコメント見た事ないや。すご……。


 コメントを見ると自分が本当にチャンピオンを取ったんだという実感がジワジワと湧いて来る。

 流れるコメントを読もうとしていると突然通知音が耳になり響き、配信管理の画面上にクリスタルと数字の様なものが表示された。


「えっ!? 1000ビッツ!? ありがとうございます!」


 チャンピオン取った事でお祝いの投げ銭をしてくれたらしい。


 ツニッチはニューチューブに比べると比較的収益化が簡単なので俺もしている。


 まぁ全然貰えないんだけどね。


 たまに10ビッツとか貰う事はあっても1000なんて数字投げて貰えたのは初めての事で驚いているとその人を歯切りに次々とビッツが送られてきた。


「えっ!? 待って、みんなそんな投げる!? え、いや嬉しいけどさ……ありがとうだけどさ!? 大丈夫!?」

『わ、私の方もいっぱいスパチャ飛んできてるんだけど!? なんで!? わわわわ、ありがとう!!?!?』


 どうやらあきななの方にも同じ感じで来ているらしく慌てふためいていてその声で逆に俺は少しだけ落ち着くことが出来た。

 あれだ、お化け屋敷怖いけど自分より怖がってる人がいたら何てことは無くなるみたいな現象。


『あーはは、俺の方にも来たわ。ありがとねー! でも今回頑張ったのはこの二人だから二人の方に投げに行けー!!』


 流石タケさん、こういうのは慣れているのだろう。


 収益を増やせるチャンスなのに俺達の方に誘導するとか懐デカすぎでは……?



 投げ銭の嵐が暫く続いた後、ようやく少し落ち着いてきたので後日改めてお礼だったりコメント読みの為の配信をする旨を伝え最終試合の振り返りを始めた。


 因みにサブスクという入ったら広告なしで配信を見れたりするものに入ってくれた人もいた。ニューチューブでいうメンバーシップと似たようなものだ。


 一体どれだけの投げ銭が来たのか想像もつかなくて、嬉しい気持ちと怖い気持ちが半々ではあるが。




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