第70話 元プロの圧
〇一試合目 実況・解説・コメントの様子〇
想定を遥かに超える人数が残っており、ぐちゃぐちゃになっている実況泣かせの最終盤面。一試合目から混沌とした展開に実況、解説、コメント共に大盛り上がりを見せていた。
『さぁ最終リングが収縮し始め、各所で次々と戦闘が始まり辺りは銃撃の音しか響いていない! 派手なウルトやグレネードが飛び交い、あっという間に流れていくキルログ! 神視点の我々を持ってしてもどこで何が起こっているのか全く理解できないくらいのカオスな戦況っぷり!! おっとここで元プロのジンがダウンしたキルログが流れる! さぁどうなっているのでしょうか!! 10部隊残っていたはずが気が付けば残り3部隊まで減っている! なんと中盤で残り一人にまでなっていたが、どこで息を潜めていたのか、何故か生き延びているチーム【空気の逆襲】! 空気の様な存在感が今となっては助けとなったか!』
「よくあの包囲網から抜け出してここまで生き残ってますね。本当凄い。あっ気付かれたっ!?」
【まじでどうなってんのwww】
【ハイドのプロいるやん】
【流石に元プロでもこれはキツいか】
【えぐぅぅぅ!】
【回線弱者の俺だったらウルトとアビリティの不可に耐えられなくてPC落ちてるわ】
『あーっと! 流石にチーム【たけのこ派】に見つかってしまった!! 最後の抵抗を見せるも多人数の前には叶わずここで【空気の逆襲】が落ちました! あーっと! その少し削れた所を見逃さなかった【もちぷよ隊】がここで一気に勝負を仕掛けてくる!! HP差は歴然! 何故か温存出来ていたウルトを使い一気に距離を詰めそのまま見事な連携で全員倒し切りました!! 第一試合、まずチャンピオンになったのはチーム【もちぷよ隊】です!! おめでとうございます!』
「おめでとうございます」
最終リングが閉じ始めてから一切止まる事のなかった興奮した実況の寺島やリアクションをする翔琉もようやく落ち着くことが出来た。
その怒涛の手に汗握る、誰も予想できない展開が終わり思わず二人共感嘆のため息が出る。
【一試合目から面白過ぎる】
【それにしてもジンチームが5位か……】
【でも流石元プロ、あんな中でもダメージ数1位でキルポもしっかり取ってるのな】
【もちぷよ最強!!】
【俺はきのこ派】
【↑誰も聞いてない】
【俺らの希望のモブが……】
『いやぁ最終円が収縮し始めてから凄かったですね?』
「そうですね。やっぱり一試合目ということもあってお互い様子見だったり緊張して動きが慎重になり過ぎて、全体的にあまり戦闘を好んで仕掛けていなかったので余計に減りが遅くなったんでしょうね。まぁそのせいでエリアに対しておかしいくらいの部隊数が残ってしまい戦況がぐちゃぐちゃになってましたね」
『いやぁあれ、何が起こったか分からずに倒された人も多いんじゃないでしょうか!?』
「そうですね絶対いますよ。あれ!? なんかいつの間にかダウンしちゃったんだけど!? って誰かしらなったと思います。どのプレイヤー視点に切り替わってもずっと戦闘起きてましたからね。常に画面に敵が映ってたし、かなり運要素が強い試合展開になりましたね」
【ジン無双になる心配は無さそうだな】
【次がんばれー!!】
【まだあと三試合もあるのか】
【カロリー高w】
〇柊七緒視点〇
結果的に俺達は下位に沈んだもののキルポイントを上手く稼ぐことが出来たお陰でポイント的な順位では真ん中くらいに位置している。
それもどうやら、今回上位のチームが殆ど下位のチームをキルしていてキルポイントが偏った事が要因らしい。
同じ順位ポイントの下位のチームがキルを取っていないのが俺達が真ん中に位置できている理由。
ただまぁこれはまだ一試合目。残り三試合もあればこれが最終的にどうなっているかなんて誰も想像できない。
俺達が上位入賞できる可能性も下位に落ちて終わるというどっちの可能性もある。
『みんなエイム強過ぎて私の場違い感やばいっ!!』
「いやそんな事ないでしょ、しっかりキル取れたし俺達も惜しかったと思うよ」
『そうだね~ラギくんの言う通りあれ勝ち切れてればな~!』
俺達の実力でもあの後半のカオスな戦況っぷりならワンチャンあったと思うし、キルもあと少し稼げたかと想像すると悔しい気持ちがデカい。
たらればを想像してもしょうがないので、俺は次の試合に頭を切り替えることにした。
二試合目は参加者全員緊張が取れてきたのか、かなり序盤から戦闘が起きているようでキルログがそこそこ流れていく。
そんな中俺達は手堅く物資を集めたり、アーマーを育て安置移動を開始していた。
『こっちから安置入ろっか』
「はい」
『はーい』
「……ッ!」
タケさんの指示ピンの方から安置に入ろうという提案を受け、移動し始めた瞬間後ろから銃弾が飛んできて思わず身体が跳ね上がる。
「後ろ敵います!」
『おっけぇ、こっちのが位置的に有利だし無理しない程度に撃ち合うよ』
撃ってきた方向に視点を向け敵の位置を把握するとかなり離れていたので一旦心を落ち着かせる。
「いッッたッ!!?」
牽制するつもりで岩陰から頭を出し銃を撃とうとした瞬間、スナイパーでヘッドショットされたのか一気にローHPに。
『ラギくん回復していいよ!』
『私もカバーする!!』
二人の声を聞いて俺は急いでHPを回復し始めた瞬間のことだった。
『いや待って痛い痛いいった!? 当て感ヤバすぎん!? 待ってあれジンのチームじゃない? やばいな、絶対ジンだ。逃げろ逃げろ!』
俺よりもHPが削れていなかったタケさんは一足先にアーマーを回復させると俺達を置いて逃げ始めた。
「えっちょ!? タケさん!?」
『いや無理無理! 安置内入って取り敢えず逃げよう! まともにやり合っても勝てない!』
タケさんのあまりのジンさんへの恐怖心に逆に引く。そりゃ確かにさっき観戦画面で見てたし圧倒的に強いのは分かっている。
だけどまだ回復途中の仲間のカバーすらせずに一人で逃げ始めるのはどうなんだ。
「いや待ってあとちょっとで回復終わるから!」
『タケさん逃げ足はや! 私カバーしてるから大丈夫!』
「あきななまじありがと、あと4秒で終わるから先行って!」
『りょーかい!』
そういうとあきななは逃げながら置き土産のようにグレネードを投げて俺をカバーしてくれた。
そのお陰もあってか無事に回復し終えた俺はまた少し削られながらも難を逃れる事が出来た。
しかし、タケさんが逃げた方に俺達も向かい始めた瞬間に再びタケさんが大きな声を上げる。
『うわぁっ!? やばい、ごめん俺死んだ!!!!』
「え?」
タケさんのHPを見ると秒で溶け、ダウン状態になる。そして直ぐに確殺を入れられてしまった。
『えぇぇーっ!? ちょっとタケさん何やってるの!?!?』
どうやらタケさんの逃げた先にもう一部隊いて一人の所を狙われてしまったようだ。
俺はまじか……と呆れに近い感情を抱きながら取り敢えず近くの建物に身を隠す。
あきななも一人で先に逃げて勝手に死んだタケさんに思わず怒号を飛ばしていた。
その後直ぐに俺達はジンさんチームとタケさんを倒したチームに挟まれ二人で精一杯戦うも一人しかダウンさせる事が出来ずに負けた。




