第69話 第一試合
『このチームは練習配信をチラッと見た時連携の速さが凄かったし安置ムーブも上手かったから全然戦えると思います』
『全員ランクが同じダイヤとかも関係してそうですよね』
『確かに多少はあると思います。全員知識とかエイムとかは十分に持っているでしょうしね』
『さぁ続いてのチームはこちらです』
『チーム名【てぇてぇと厄介おじさん】です、あはは』
チーム名を読む時は笑いを堪えていたが我慢できずに翔琉さんが吹き出しそれに釣られ実況の寺島さんも笑う。
「また笑われてる……」
『タケさんー!!』
『まぁまぁ、過ぎた事を言ってもしょうがないじゃないかー!』
「開き直りやがった」
【来たー】
【笑われてて草】
『翔琉さん、これあれですよね? 私知ってますよ。ツニッターで話題になっていたチームですよね?』
『そうそう、カスタムの顔合わせか何かの配信であきななさんとラギさんの掛け合いを後方腕組みして頷いてたタケさんの切り抜きのやつ。あれは流れて来た時ほんと笑ったよ。コメント欄でもあったけどリアルであんな後方腕組みする人初めて見たもん』
『確かにアニメとか漫画とかだとよく見ますけどね。あれはほんとに中々どうして……それに二人の掛け合いもてぇてぇ感じでね、とても聞いてて微笑ましい気持ちに私もなれました。見てない人は是非見に行ってみてください。探せば直ぐ見つかると思います。
さて、そんな一見するとネタチームのようにも見えますが翔琉さん、このチームはどうですかね?』
俺達のチーム名の由来をわざわざ説明してくれてそこから宣伝までしてもらえた。
というかそりゃやっぱり見られてますよねぇ。あんなにバズってたから見てない方がおかしいか。
『そーですね……まずタケさんは面白いしネタ枠に見られがちですけど彼しっかり上手いですからね。ランクでもプレマスで、僕も一緒に回した事ありますし、やる時はやる男だと思います。他の二人も連携しっかり取れていて実力もランク以上のものを持っていると感じましたね。なのでタケさんがチョケ過ぎなければ十分に上位は狙える実力はあると思います』
『はい、ありがとうございます。やっぱりこの大会普通にレベル高いですねぇ』
『まぁ前情報だけなら何とでも言えますけどね。ランクだけじゃ強さは量れないですからね』
『確かにそうですね。というか私はこのチームはどういう会話をしているのかちょっと覗きにいきたいですね』
『きっとてぇてぇやり取りが繰り広げられているんじゃないですか~?』
『ことあるごとにてぇてぇと言って茶化してくるタケさんこと厄介おじさんもいるんでしょうか。私も気になりますが、気になる方は是非本人達の配信をご覧ください!』
俺達のチーム紹介は終わり、意外にも翔琉さんに色々と知って貰えていた事や全然戦えると褒められていて凄く嬉しかった。
モチベーションもふつふつと湧いてきて、緊張もするが楽しみになってきた。
本配信で宣伝されたことによってか俺達それぞれの配信の同接が増え、ありがたいことに登録者も増えていた。
その後俺達は新規さんから来たコメントやらを読み感謝を述べたり、色々と付き合っていないだとかを説明しているとどうやらチーム紹介が一通り終わったようだった。
『それにしても同接やばいね!20万!?』
「『『やばぁ』』」
そのレベルが違う数字に俺達三人は思わず声が揃い苦笑すると同時にコメント欄も少し引いている。
【えぐい】
【すっげぇ……】
【化け物だ】
『僕もこんな同接になるとは思ってなくてびっくりしてます。流石の僕でも緊張しますね。夏休みも相まってですよね。見てくれてる方々本当にありがとうございます。
元プロなどの数々の強者が集まったこの大会、バトルロイヤルだから安置運だったりポジション取りだったり様々な要素が絡み合い、余裕で下位に沈むこともあるこのゲーム。最後まで何が起こるか分かりません! そういうところを皆で一緒に楽しんでいけたらと思います。本配信を見るも良し、それぞれの推しのチームの視点を見て応援するのも良し、是非皆さん存分に楽しんでください!
それでは大会に出る方でまだミラー配信してる方いたらここで視聴を止めて準備をお願いします! 熱い闘いを待っています! よろしくお願いします!
準備が出来次第、第一試合を始めさせていただきます! それまで皆様少々お待ちください』
本配信の視聴をやめ、俺達はウォームアップを終えるとカスタムルームに入る。
続々と見た事のある名前が連なっていき、より一層緊張感が高まる。
『いやぁ! 緊張するー!!』
「俺もめっちゃ緊張する」
『あはは、まぁまぁ楽しんでいこう!』
流石のタケさん、やっぱりこういうのには慣れているのかあまり緊張していないように見える。
俺はというとさっきエイム練習をして手を温めていたのに緊張で震えているくらいだ。
いつのもパフォーマンスは出せそうにないかもしれない。
深呼吸をして心を落ち着かせていると、どうやらもう始まるらしい。
正直もうちょっと冷静になる時間が欲しかったけどそうも言っていられない。
まずキャラピックをミスらないようにして……目を瞑って大きく息を吸い吐く作業をしていると降下が始まり物資集めのターンになった。
早く良い物資を集めないともう他のチームが奇襲を仕掛けてくる可能性もあり、一瞬も気が抜けない状態になっていて気付けば口数は三人共減っていた。
それでもそれぞれが使いたい武器などがあれば位置を共有したりして確実に物資を集めた。
第一収縮が始まり安置移動を強いられるが、近くに敵が下りていたので十分に警戒しつつ俺達は安置内を目指す事に。
因みにまだ部隊数は20部隊と1つも減っておらず、キルされた人もゼロだ。
時折銃声が聞こえたりするが、遠距離での撃ち合いっぽい撃ち合い方。
タケさんのIGLの元なんとか安置内に滑り込むことができた。
次の安置の場所が表示されるがまたもや外れてしまった。そして運の悪い事に今の場所からかなり移動しないといけない場所。
『早めに移動したいけど、これどこ行っても敵とかち合うよなぁ……』
「早めに行かないとこの通路で当たりません?」
『確かにそうだな。どっちにしろキツイから行こう』
「おっけ」
『おっけー!』
どうやったって敵との戦闘は避けられないだろうから、それなら先に良いポジションを取ってから戦いたいよねという考えの元の行動。
『あ! 後ろから足音した! めっちゃ近い!』
「あきななそのままこっちこれる?」
『あ! 無理撃たれた! 無理無理!』
『おっけ、戦って戦って!』
あきななが着いて来れたらそのまま三人で逃げたかったがそう上手くは行かず、あきななが戦闘を開始。
俺とタケさんも直ぐに戻りアビリティやグレを入れてあきななが倒されないように全力でカバーする。
『回復するね』
「おけ」
遮蔽に上手く隠れたあきななはHPを回復するので、俺はそっちにヘイトが向かないように多少被ダメしてでも敵の注意を引き付ける。
回復が終わりそうな頃に俺も回復を始めタケさんにカバーを任せる。
その瞬間敵が好機だと思ったのか、はたまたじれったい戦況に我慢できなくなったのか距離を詰めてきた。
『一枚割った!』
『1ダウン! もう一人アーマー割った!』
「おっけ、肉肉! 一人めっちゃロー!」
あきななが詰めてきた二人にダウンを取られるも人数はイーブン。寧ろHP状況的には勝っている。
タケさんが前に出て二人のヘイトを買いながらローの敵を落としてくれた。
そしてラスト一人。
俺とタケさん二人のフォーカスで一瞬で片づけると、HPが多い俺が射線の通らない所に移動し急いで蘇生を通す。
『前から来たよ!』
「まじか、キッツ」
『起きたら速攻ウルト吐くね!』
あきななを起こし終えるとあきななのダメージを与えられるウルトが漁夫に来ていた敵に向かって発射される。
これで数秒だけでも足止めできるだろう。
そのうちに俺達は倒した敵のボックスからアイテムを回収したりアーマーをスワップして戦える状況に持ち直した。
一足先に漁り終えていたタケさんもグレを投げて足止めをしてくれていたみたいだった。
そして第二収縮も始まり安置が背中に迫りつつある。この敵を倒さないとどっちにしろ安置に行けない状態。
ウルトの効果が切れグレを避けると敵チームは上手く三つの射線を通していたようでタケさんがフォーカスを喰らい、一瞬でアーマーを割られた。
『やっべ』
急いで回復するタケさんだったが、そのタイミングを逃さないというように敵は一気に距離を詰めてくる。
俺とあきななは頑張ってアーマーを削ったりして一人ダウンさせる事が出来たがダメージを受け過ぎた。
アーマーだけ回復したタケさんが戦いに参戦するも、殆ど同時に俺とあきななはダウンしてしまい残るはタケさんただ一人。敵は二人。
安置の円が通り過ぎて行き、安置外の為持続的にダメージを喰らいながらの戦い。
視界も安全地帯よりも暗くなり、見にくい。
タケさんはショットガンを持ち、岩や箱でキャラコンを駆使してもう一人をダウンまで持っていき残り一人、となったところでHPが少なく安置ダメで死んでしまった。
「おっしぃぃ!」
『うわぁまじか、あと少し体力あったら勝ててたぁぁぁあ!』
『おしいぃぃぃ!!』
【おしぃぃいい!!!!!!】
【惜し過ぎる……】
【頑張った】
【よく一部隊倒した】
【漁夫相手にあそこまで対応できたの凄すぎる】
惜しい状況に一緒に悔やんでくれたり、励ましの声や称賛の声を送ってくれるコメントを横目に見ながら身体から一気に力が抜け背もたれにもたれ深く呼吸をする。
我ながらかなり緊張していたのにも関わらずあそこまで戦えた事実は自信に繫がった。声出しも出来てたし、連携も悪くなかった。
なんなら漁夫相手にももう少しで勝てそうだった。
惜しかったから少し悔しい思いを残しつつ、俺は乾いた喉を潤すように水を飲む。
『いやぁでも初戦にしては結構やれてたし、声も出てて咄嗟の連携も出来てたから充分だよ充分!』
「ですね、それにあれは安置運的な所もありましたしね」
『めっちゃ緊張してたのに意外と私も戦えてて自信ついた!!』
「俺も意外と戦えてて自信ついたわ」
『お、いいねいいねぇ。練習の時みたいな感じでやれば絶対いい順位いけるよ』
コメントの皆も落ち込んでないことや緊張が解けた事を自分の事のように喜んでくれて次々と応援コメントが飛んでくる。
【初戦でここまで戦えれば充分過ぎる】
【ないふぁい】
【あと3戦ファイトー!】
【声出てた偉い】
【今の何位だったの?】
戦闘に集中していて残りの部隊数を見ていなかったことにコメントで気づき、順位を確認すると15位だった。
どうやら俺達が戦闘を始めたと同じくらいに他の場所でも戦闘が起こって一気に減ったらしい。
「15位だったけど、まぁ一応キルポ取れたしいいね」
『そうだね、順位ポイントは渋いけどキルポでかいね!』
『意外と減ってたんだ……』
このカスタムは取った順位でポイントが振り分けられていて、キルをすると獲得出来るキルポイントというものも存在している。
4試合やった後の、4試合分の順位ポイントとキルポイントを合計した総合ポイントで最終的な順位が出る感じだ。
なのでキルしつつ高順位を取れば、チャンピオンを取らなくても優勝を目指すことができる。
因みに1、2、3試合目まではキルポ制限と言って1チームが獲得出来るキルポイントには一律の制限がされている。
その制限以上のキルもしてはいいが、ポイントはそれ以上加算されないみたいな感じだ。
最終試合はそれが無くなりキルしまくってポイントを稼ぐという方法も取れるようになるがあまり現実的ではないだろう。
元プロのジンさんのチームとか、強い人がいるチームはそこで稼ぎに来るとは思うけど。
とまぁキル前提でかなりリスクを負わないといけないよりも高順位を狙った方が確実に順位ポイントを稼げるし、少ないかもしれないがキルポイントも狙えるので絶対にそっちの方が理想的ではある。
キルポイントが狙えるっていうのは最終盤面まで残っていると敵と敵の距離が近く漁夫がしやすかったり、混戦状態になりおこぼれキルが取れたりするからだ。
普通のランクマッチではまず起こらない現象ではある。マスタープレデターとかになってくると結構よくあるっぽいけど。
俺達はその後自分の事を倒したパーティのプレイを見つつそれに反応しながら「やっぱり安置きついね」なんて雑談をしていた。
連携やエイムも皆上手くてずっとあきななはリアクションしっぱなしだった。リアクション芸人並みにずっと声を上げていた気がする。
そして、最終ラウンドまで10部隊という通常ならあり得ないような部隊数が残り最終円が収縮を始める。それと同時に戦闘が激化し一瞬で残り3部隊になり唯一、三人とも生き残っていたチーム【もちぷよ隊】がチャンピオンを取っていた。




