第68話 カスタム本番
カスタムのムービーが公開されチーム名云々からも数日が経ち、あっという間に大会は明日にまで迫っていた。
『いやぁ遂に明日だね楽しみー!』
『めっちゃ緊張するけど私も楽しみー!!』
「俺は不安と緊張の方がデカいっす」
タケさんは沢山の人に見られ慣れていたり、知り合いが開催するカスタムだから分からなくはない。
あきななはメンタル強くて凄いなと素直に尊敬する。
俺は楽しみな気持ちもあるにはあるが2割程度。さっきも言った通り不安と緊張とその他色々な負の感情が8割を占めている。
『あはは、そんな緊張しなくても大丈夫だってー。そんな状態でプレイしたらいい結果だせないぞー?』
『そうだよそうだよ! 今まで練習してきた事をやれば十分戦えるよね? タケさん?』
『うんうん大丈夫大丈夫。今から緊張してたら本番まで持たないよ?』
「そうですよね。頑張ります」
【ラギがちがちで草】
【まぁまだ学生だしそりゃ緊張するだろ】
【尚、同じ学生のあきななは……】
【カスタムはいつでも緊張する】
【明日かー! 頑張れー!】
見てくれている人に明日は応援よろしくねという挨拶を三人ですると、本番前最後の練習配信を終えた。
『ちょっと俺これからまた少し用事あるから先に落ちるねー』
『分かりましたー』
「分かりました」
『それじゃ、明日は楽しもう!』
『はーい!』
「はい」
『んじゃまた明日!』と元気に言って去っていくタケさんにやっぱり忙しいんだなという感想を抱きながら俺もそろそろ落ちる事にした。
大会は夏休みじゃない社会人も見られるように20時頃から始まるので別に早く寝なくてもいいのだが、今日は緊張で中々寝付けないのを見越してだ。
「俺も落ちるね。明日は頑張ろ」
『ん! 分かった! 明日は頑張ろー!楽しもー!!』
「うん、おやすみ」
『おやすみー!!』
あきななもテンションが不自然なくらいに高いのでやっぱり緊張しているんだろう。
大丈夫、沢山練習してきたし確実に今までよりも実力はついた。
連携もしっかり取れるようになってきたし、あっけなく無様に負ける心配はない。
弱すぎて炎上する可能性は消えた。
そう、勝てたら嬉しいけど別に勝たなくてもいい。タケさんやあきななが言ってた通り楽しめばいい。主催の人も楽しんでと言っていた。だから大丈夫。
そう自分に何度も何度も言い聞かせ心を落ち着かせる。
こんな機会は滅多にないから少しでも爪痕を残せたらいいな。誘ってくれたあきななやタケさんの為にも……。
結局中々寝付けず3時頃まで起きていたのは覚えている。
いよいよ今日カスタム本番。朝起きてからずっとそわそわしていて時間まで何も手につかなかった。
本配信が始まる少し前に配信をつけて、始まるのを三人で雑談やエイム調整などをしながら待つことに。
本配信は最初ツニッターで投稿されていたチーム紹介ムービーが流れたり、ルール説明などそういうのがあるらしい。
試合が始まる前までは本配信を自分達の配信で映していい、所謂ミラー配信の許可も出ていた。
本配信が始まりカウントダウンが表示され、0になった瞬間チーム紹介の動画が流れ始めた。
「お、始まった」
『おー何回見てもかっこいいなー』
『ほんとかっこいいー!』
エテの元プロや上手い配信者、名の知れたvtuberの名前が次々と流れていく。
勿論俺が知らない人もいるが、このカスタムに参加しているってことは人気な人なんだろう。
てか、なんで俺がここにいるんだ?
俺は完全なる場違い感を再び認識し肩身が狭くなる。
そして動画では俺達のチームが表示されるとあきななが『もぅ』と少し膨れているような声を出した。
俺も呆れに近い感情から微笑する中、タケさんは一人満足そうに大きい笑い声を上げていた。
訂正、タケさんだけじゃなくコメントでも【最高w】とかいいながら笑ってる人いっぱいいたわ。
紹介動画が終わると画面が切り替わり、主催のvtuber蒼海翔琉さんと実況の人が映し出され順番に挨拶をしていく。
実況の人は寺島さんと言うらしい。
翔琉さんは元プレデターということもあり解説的な立ち位置になるのだろうか。
「実況もあるんだ……」
『んね! ホントに本格的でドキドキしてきた!』
『ねぇ、凄いよね。これが事務所所属の力か……』
【すげー】
【本格的だ……】
【普通にプロの大会レベルなのでは?】
【ワクワク】
一通りの挨拶を終えると改めて翔琉さんがそれぞれ1チームずつチーム名とチームメンバーを紹介していき始める。
そのチームに対しての印象や誰が強くてこの人はこのキャラが上手いとかそういう紹介みたいな、抱いた感想みたいなのを話していた。
『翔琉さん、このチームはどうみますか?』
『いやぁこのチームはなんてったって元プロのジンがいるから間違いなく上位に入り込んでくるだろうね。優勝候補だね』
『いやぁそうですよね。やっぱり元プロと言ってもつい最近までプロシーンの第一線で活躍していたのですから実力は相当なものです。普通に1vs1を挑めば絶対に勝ち目はないのではないですか?』
『僕もそう思います。ですが心配無用、その為にランク毎にポイントを設定してチーム三人の合計が30ポイントを超えないように組まなければいけないようにしています。なのでジンさんのポイントは馬鹿みたいに高いから、ポイントが低いランクの人としか組めないですね』
『なるほど、でもやっぱりフィジカルとかエイム勝負ってなったら余裕でジンさんが破壊しそうですけどその辺は……?』
『いやぁまぁ確かに破壊しちゃうかもしれないですけどほら、これってバトルロイヤルですし絶対なんてことはないんですよ。それにそういう相手に皆どうやって勝ちに行くのか、チームプレイで倒しに行くのか、はたまた全力で逃げるのか、とかそういうのも見ていきたいですね』
『なるほど、このカスタムでジンは破壊を見せてくれるのかも注目です。では次のチームに行きましょうか、続いてのチームはこちらです』
まだ時間がありそうなので、本配信を流しながら俺達は射撃訓練場と言う場所でエイムの練習をしていた。
スポーツとかでいうアップみたいなものだ。
やっぱり最近までプロシーンで活躍していた人がいるとなると勝ち目無くねって自信が無くなってくる。
でもこっちにも強いタケさんがいるんだ。1vs1をしなければ勝ち目はある……と思いたい。
でも出来る事ならジンさんがいるチームと戦いたくないな。
てか、俺達の時は一体どんな風に紹介してもらえるんだろう。翔琉さんにどんな風に思われているのか気になってワクワクする。




