第51話 初めて同士
卓球を終えるとお昼を過ぎていたので、一旦外に出て近くのハンバーガー店で適当にご飯を食べつつ休憩をすることに。
「んにゃーやっぱモックは美味しいねー!」
「そうだね」
「あ、ラギっちってポテトしなしな派? それともカリカリ派?」
「んーどっちもいいけど強いて言うならカリカリ派かな。小野さんは?」
「うちもカリカリ派~!」
そんなどうでもいいような会話を続けながら俺達は食事を楽しんだ。
小野さんは小柄な見た目に反して結構食べる事が分かった。
小野さん曰く、元々は人並くらいの食事量だったらしいのだがチビ達が残したものを代わりに食べていたら普段から食べる量も増えていたらしい。
それでも全然太っていないのは日頃から運動したり下の子達と遊んでいるからだろう。
普段はあまり食べない俺は今日は朝から動きっぱなしだったからかいつもよりも食べれた。
まったりと食事を済ませ、そろそろ解散するかどうか聞くと食べたものを消化したいからもう少し遊ぼうと言われ元いた施設に戻る事に。
食べて直ぐの激しい運動は流石に吐きそうだったからゾンビを倒すゲームをしたり、レースゲームやバスケのゴールに入れるやつだったりエアホッケーなんかをして楽しんだ。
気が付けば外はオレンジ色に染まり始め、遊び疲れたので帰る事に。
「いやぁ久しぶりにこんなに疲れるまで遊んだぁー」
「俺もめっちゃ疲れた……」
満足そうに伸びをする小野さんを横目に俺は腰に手を当てる。
疲れたとか言いながらまだ全然余裕そうだな……。
「今日は付き合ってくれてありがとね!」
「ん、いや全然。俺も楽しかったし」
「……なんかさ、デート……みたいだった……ね…………」
ふと小野さんが目を逸らしながらそんな事を呟いた。
当初の目的はリベンジとかだったはずだが、後半は二人ともそんな事は忘れて純粋に楽しんでいたと思う。
周りから見れば男女二人きりで遊んでいる姿は本人達は違っても、デートしているようにしか見られないと思う。
「確かに?」
俺が冗談っぽく笑うと小野さんは照れくさそうな表情を浮かべた。
「うちこういうデートみたいなことしたことなかったから楽しかった。今日はありがとうねラギっち」
「初デートが俺でよかったの?」
「なーに? うちとデートできて内心嬉しいでしょー?」
「あはは、まぁ俺も初めてだったからね」
七月さんと二人でゲームをしてたからあれはゲームデートじゃないのか? と思う人もいるかもしれないが、そういうのじゃない。
こう面と向かって一緒に出掛けて遊んでってするのは俺も初めてだった。
「そ、そうなんだっ!?」
「うん」
「えへへ、じゃー初めて同士だね! ラギっちの初めてななっちから奪っちゃったなー」
言い方が少し卑猥で聞く人が聞いたら大分勘違いされそうな気がするがわざとか……?
海がこの会話を聞いていたら「エッチだ!!!!」と目をガンギマらせて言ってきそう。いや絶対言ってくるな。
「だから、七月さんとはそういう関係じゃないからね?」
「あぁごめんごめん。ついつい」
大げさに頭を掻く仕草をする小野さんに苦笑しながらも俺は思いを巡らす。
中学生の頃、デートすることなく振られた。好きな気持ちを弄ばれて、俺はそれから恋をするのが怖くなった。
でも今日みたいなのがデートと呼ぶことが出来るのなら、意外と大丈夫だった。何なら楽しむ事が出来た。
勿論デートだと思っていなかったから楽しめたというのもあるのかもしれない。
でも俺も少なからず成長していることを実感出来てほっとしていた。
〇小野こはる視点〇
今日は楽しかったな。
途中、普段のうちなら絶対言わないような本音を言っちゃうし……今日のうち少し変だった。
ボーリングの時隣のレーンで二人きりだとデートだよねみたいな変な会話を聞いちゃったからかな。
その後から少し意識することは合ったけど、普通に楽しめた。
うちに付き合ってくれて本当ラギっちって良い人だなー。
もしラギっちと付き合ったらああいう風に毎日楽しいのかな……。
リビングのソファーで今日の事を振り返りながら、ラギっちと付き合った時の事を想像してみる。
「こはる……可愛いね」「こはる凄いじゃん!」
「――こはる」
「うわぁぁぁ!!」
ラギっちが優しい笑みを浮かべながら下の名前を甘い声で囁いてくるのを想像してしまい、あまりの恥ずかしさに思わずクッションに顔を埋める。
「ママー! ねぇねがへん~!」
うぅ、これ以上想像したら明日学校で顔合わせる時気まずくなりそうだから止めとこう、そうしよう。
そういえば、ラギっち昔恋愛で嫌な事があったって言ってたな……。
この前ゆいちゃんとあやちゃんが話してた事ってこういう事だったのか。
ななっちに対してラギっちが一歩引いてるとか。ラギっちに少し壁を感じるとか。
確かに今日一日遊んでみたら言っている事が分かった気がする。
もしかしたらラギっちは昔恋愛で嫌な事があったから、それのせいで女の子と距離を置いているのかも……。
これを皆に教えて上げようとスマホを手にしたが、一瞬考えた後スマホを置いた。
嫌な事があったせいで壁を作るようになってしまった。言い換えれば、壁を作る程までに嫌な事があったということ。
――だとしたら他人であるうちがそう簡単に人に話していいものではないよね。
詳しくなんて何も知らない状況だし、そんなズケズケと聞いていいような内容じゃない。
それに嫌な事を思い出してた時の表情は凄く悲しそうで、見ていたこっちも辛い気持ちが湧いてきた程だった。
昔ラギっちに何があったのか気にはなるけど今はその時じゃないとうちは思った。
ラギっちともっと仲良くなりたいな……。




