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第34話 違和感


「話終わった?」


 いつの間にか教室に帰ってきて友達と談笑していた七月さんが隣に座りながら声を掛けてきた。


「あぁごめん、あいつら邪魔だったよね」


「うぅん別に全然大丈夫だよ。 照れた後で恥ずかしかったし……」


「ん? 最後なんて言った?」


「んっ!? 別に何でもないよ! てかてか、なんか真剣な話してたね?」


 ごにょごにょと呟くような感じだったので聞き取る事が出来ず聞き返したのだが、お茶を濁す様に話題を変えられた。


 別に大したことじゃなかったのだろうと頭を切り替え、さっき話していた事を七月さんに簡単に説明する。


「海、あー……中村がコミュ障って自分で言うけど本当にそうなのかーっていう話してた」


「なるほどね? でも男子とはそれなりに話してるイメージあるなー」


 俺もそれは思った。意外と俺や光意外の男子とも話してる姿を見かける。それは七月さんから見ても同じようだった。

 すると何か思い出したのか七月さんが「あっ」と小さく声を上げた。


「そういえば、女子とってなると全然見かけないね。なんか授業で隣の人と話してくださーい的な時とか、事務的なほんとに最低限なやり取りくらいしか見た事ないかも。私もちゃんと話したのはこの前の体育祭の後サイデで一緒にご飯食べた時くらいだし」


「そうだよね、ありがと」


「いえいえどういたしまして?」


 やっぱり女子とは極端に話していないらしい。まぁ思春期のこの時期、女子と話すのは中々緊張したりするのは分かるが、どうもそれだけじゃない気がする。ただの俺の勘でしかないんだけども。






「さぁさっきの続きを話そう」


 休み時間になり海の席の近くに行き声を掛ける。


「えぇ、別にどうでもよくない?」


「海、お前女の子と仲良くなりたいんじゃないのか?」


 海本人はそんなに乗り気ではないらしいが、光の問いかけに「なりたいです」と直ぐ掌を返していた。


「んで、海が自分の事をコミュ障って思い込んでる話に戻るんだけど、光が言ってたように俺もそう思うんだよね」


 光は静かに腕を組み頷いて同意を示し、海はいつにも増して真剣に待っているので言葉を続ける。


「まず思い出して欲しい、俺達と友達になる前の事を」


 海が俺に話しかけてきた時の事、そしてコミュ障とは思えないくらいのボケとツッコミの会話のキャッチボールを三人でしたことを語る。


「逆に変人過ぎてちょっと引いたよな」


「うん」


「え、ちょっとさり気なく刺してくるのやめて?」


 その時点で人見知りではないし、普通のコミュ障というのも違うのではということを話すと海は目を右上に向け考える素振りを見せ「確かに……?」と呟いた。


「でもコミュ障でもあるんだよ。言ってる意味分かる?」


「えぇ、ここで謎に考えさせようとするのやめてよ。早く教えて」


「ちょっとは自分で考えろよ」


 という心の声を漏らしながら勿体ぶっても仕方ないのでちゃっちゃと言うことに。


「まぁ海のコミュ障は女子にだけ適用されているって事」


「そゆことだ」


「…………確かに」


「そんなに女子と話すのが怖いのか? 緊張するとか?」


「あー……はは、そうだね。滅茶苦茶緊張して全然話せないんだよね」


 光の問いかけに海は一瞬考える仕草をして自分の事を嘲笑した。


 本当にそれだけか……?


 俺は海のその姿に違和感を覚えた。


 確かに異性と上手く話せないという人は他にもいるだろう。かくいう俺も配信をする前はそうだったし、今でも上手く話せている自信はない。


 でも何故だろう。何かハッキリとした理由はないが、日頃の海の言動で何かそれだけじゃないと確信が持てる。


 俺と似た感じがする。


 光と目を合わせ、海を一瞥してアイコンタクトすると同じ気持ちだったのかコクリと頷き光はわざとらしく背伸びをしながら口を開いた。


「あー今日金曜だし久しぶりにカラオケ行かね?」


「おー! いいじゃん、行こ行こ!」


「え? いいけど、光が誘うって珍しいね。妹ちゃんにはもう連絡したのカナ?」


 いつも通りのウザさに戻った海は早速シスコンの光をおじさん構文特有のイントネーションで煽り始めた。


「うるせぇ今からすんだよ」


 あぁ、するんだ。何だかんだ言いながらも妹の事大好きじゃんと心の中で笑う。俺は妹がいないからどんな気持ちなのか分からないが家族の事を大切に思っている光は素直に尊敬出来た。






「あぁぁぁぁやっと終わった……よしカラオケ行こー」


「分かってるからそう急かすなって」


 授業が終わりホームルームも終わると物凄い速さで海は光の席に向かっていた。


「お前帰る準備したのか?」


「うん、もう準備万端」


「はっや」


 いやまじで早いな。カラオケ楽しみにし過ぎだろ。


 かくいう俺も何気にカラオケが楽しみだったりする。人の目を気にせずにあんなに気持ちよく歌えるなんて知っていたらもっと早くから行っていたのにと後悔するほどでもある。

 それに自分の歌が下手なのを自覚してもっと上手くなりたいという気持ちも多少あったりする。


 二人の会話に聞き耳を立てながら、待たせないようになるべく急いで帰り支度をしていると七月さんが話しかけてきた。


「柊くん今日カラオケ行くの?」


「あぁうん、そうなんだよね」


「えーいいね! そういえば柊くんって歌上手いの?」


「いや全然下手くそ。まじで音痴過ぎてやばいよ」


「えーそうなの? 今度一緒行こうよ」


「え?」


 突然の誘いに俺は思わず手を止めて七月さんの顔を見ると「え、やだ?」と少し悲し気な目をしながら小さく首を傾げた。


 その子犬のような表情を向けられた俺は顔を合わせるのが耐えられなくなり再び手を動かしながら返事をする。


「俺がもうちょっと上手くなったらいいよ」


 下を向きながらなんとか言葉を紡ぐと七月さんは声をワントーン上げながら「ほんと?! やったー」と大げさに喜んでみせた。


「私も練習しとくね!」


「うん」


 いつぞやの配信でコメントで歌ってみたは出さないのかと質問されたことを思い出し、いつか七月さんと一緒に歌みたを出すのもいいかもしれないなと想像を膨らませていると光も準備が終わったのかこっちにやって来た。


「俺らはもう行けるけど、まだかかりそう?」


「いや、もう行ける。ちょい待ち」


 準備を終えた俺は「よし、おっけー行ける」と呟くと「ひゃっほー!」とテンションが高い海は一人先に教室の外に出て行く。


「柊くん、またね。楽しんで! 松山くんも、またね」


「あ、あぁうん、楽しむ。またね」


「おう」


 俺達二人に手を振って挨拶をしてくれた七月さんに返事をし、背を向けると俺達は先に行った海を追いかけるのだった。


「おうってなんだよ、おうって」


「いや別に何もおかしくないだろ、てかお前さっきもイチャイチャしてたな」


「イチャイチャしてねぇーよ!」


「お前ら早く付き合えよ」


「何でだよ、そういう関係じゃねぇって」



「おーい、二人とも何してるんだよ。早く行くぞ、置いてくぞ!」


「海、カラオケの受付のやり方覚えてるのか?」


「ギクッ」


「あははは! だろうと思った」


「ん? 七緒は分かるのか?」


「え、ま、まぁ? 多分大丈夫だと思いマスヨ……」


「絶対大丈夫じゃないやつだな」




 結局俺と海は受付の方法が分からず手間取り、最終的に光が教えながらやってくれた。


 次からは一人で来たとしてもきっと大丈夫だろう。まぁ分からなかったら店員さんに聞けばいいしね!



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