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第29話 神様のいたずら?

 3時間目の授業が始まるや早々、先生が席替えをする宣言をした。その瞬間クラスはドっと盛り上がりザワザワと騒がしくなる。


「えー!さやちゃんと離れたくないよー!」と友達と離れるのを悲しむ者もいれば、「桃沢さんと隣になれますように」と桃沢さんに彼氏がいる事を知らない恋する男子が机の上で手を組み目を閉じ、小声でぶつぶつと祈っていたりと様々だった。


 俺は席がこの窓際から移動するのが少し心残りではあるが、別に離れたくない人が近くにいる訳でもなければ、隣になりたい好きな人がいる訳でもない。


 まぁ強いて言うなら七月さんと隣になってもっとゲームとかどんなアニメを見るとかそういう話をしてみたいなと思ったが、今朝の俺に対しての素っ気ない態度を思い出すと今は隣になりたくないなという感情が湧いてきた。


 みんながくじを引き終わり、黒板に書かれた数字の席に一斉に移動を始める。


 移動し始める前から誰が近くかとか、隣かとか離れたー! とか騒いでいる人はいたが、生憎友達が少ない俺は皆がどこの席に行くのか事前に把握することはできなかった。


 海は番号を見せてきて離れている事を確認したときには少しがっかりしていた。


 俺は海が近くじゃない事が分かると少しホッとした。本人には勿論言わないが、授業中もちょっかいかけてきたりとウザそうで不安だったからだ。


 まぁ完全な偏見なのだが。


 光は席替えとかあまり興味がないのか、というか光は基本的にみんなとそれなりに仲がいいから関係ないのか番号は教えてくれなかった。


 俺の席は窓際ではないが一番後ろでラッキーと思い、ルンルンで座ると七月さんが近づいてくるのが視界に入る。


 え、なんか嫌な予感が……。

 七月さんも俺の存在に気が付くと一瞬目を見開いて、口を開けて何か言おうとしたが思い留まり直ぐに目を逸らされた。

 七月さんは手に持っているくじの番号と黒板に書かれた番号を交互に確認すると、俺の隣の席に座った。


 ――神様はこの状況をどういう気持ちで作り出したのだろうか。きっと面白がっているに違いない。



「あの……なんか怒ってる?」


 隣になって話す機会が出来たので俺は恐る恐る尋ねると、七月さんはこっちを見向きもせず、頬杖をついたまま「怒ってないよ」と淡々と返事をした。


「本当に?」


「うん」


 言葉では怒ってないと言っているが態度は明らかに素っ気ないものだった。


「俺、何かした? したなら教えて欲しい、謝るからさ……」


 俺が気付かない内に七月さんに対して何か素っ気ない態度を取られるようなことをしてしまったのかもしれない。

 もし嫌な気持ちにさせてしまったのなら謝りたいし、改善したい。


 そういう思いを口にするも返ってきたのは「別に何も」という取り付く島もない言葉だった。


「えぇ……」



 もう、まじでこういう時どうすればいいんだ……。俺に大したコミュニケーション能力は無いし、ましてや女子相手ともなると更に分からない。


「ねぇ、じゃあなんでそんなに素っ気ないの?」


 俺は少しだけ七月さんの顔を覗き込むようにして尋ねると七月さんは顔を逸らし「べっつに~」と唇を尖らせる。


 まるで子供が拗ねている時のような態度だ。


 粘り強く声を掛け続けた事で反応が変わって来たので、俺は最後の一押しをする。


「どうしたらいつもみたいに接してくれる?」


「…………」


 七月さんは無言でこちらを向き、右上を見て一瞬考える素振りを見せると口を開いた。


「じゃあ…………いっ……ょに……ムしよ?」


 頬杖をついていた手で口元を隠しているのと教室の喧騒でなんて言ったかよく聞き取れなかった。


「え? ごめんなんて?」


「だ・か・ら! 今日一緒にゲームしてくれたらいいよ!」


「あぁ、うん全然いいよ」


「ほんと?」


「うん、特に予定無かったし」


「ならいいよ」


「う、うん……」


 聞こえなかった俺が悪いけどそんなに語気を強めなくてもいいじゃん……。それにしても今日一緒にゲームをすると約束しただけでいつも通りに戻ってくれるらしい。


「てか隣だね! 嬉しい! これからよろしくね!」


「え、あ、うん。俺も嬉しい……よろしく」


 突然いつもの七月さんに戻ったことに驚きながらも俺もつい反射的に嬉しいとバカ正直に言ってしまった。


 言ってから少し恥ずかしくなったのと七月さんに嬉しいと直球な思いを告げられた事を認識すると思わず目を逸らしてしまった。


 直球に感情を伝えられるって全然慣れないな。つい二日前に日和さんからも似たような感じで言われた時を思い出しながらそんなことを思っているとツンツンと左肩を七月さんに突かれた。


「ねぇ今他の人の事考えてた?」


「え? いや全然?」


「本当かなぁ? 目が厭らしかったよ?」


「え、まじ?」


「まじまじ。えっちな事考えてた?」


「いや考えてないよ?!」


「あははは、うそうそ全然普通の顔だったよ」


「だる」


 日和さんとエテコラボしていた時のことを思い出していたタイミングだったからびっくりしたが、たまたまだよな?




 その後席の移動が全員終わったタイミングを見計らって先生が授業を始めたので結局七月さんが素っ気なかった理由は分からなかった。



 因みに海は一番前の席で休み時間の度に「早く席替えしてぇぇ」と嘆いていた。




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