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第22話 初めてのカラオケ

 

「ごめん遅くなった」


「やっと来たか」


「遅いんですけど七緒、お詫びに奢ってね?」


「やだ無理」


 昼に体育祭の後に遊ぶという約束をしたのだが、汗をかいたままなのも気持ち悪いし臭いので一回それぞれ帰ってシャワーを浴びてから再び集合した。


「で、どこ行くんだ?」


「決めてなかったね。どうする?」


「はいはい! ならカラオケ行きたい!」


 光と俺は特に案が無かったので海が言うようにカラオケに行くことになった。


「これどうやってやるの?」


「え、分かんないの?」


「だって俺初めてなんだよ? 分かる訳なくない? 馬鹿なの七緒?」


「いやそんなマジトーンで言われても、俺も初めてだし」


 カラオケ行きたいと海が言ったんだからてっきり何回か行っているものだと思っていた。


「「…………」」


 海と俺のやり取りを半歩後ろから見ていた光がしょうがないなと言う風にため息を漏らすとパネルを操作し始める。


「「…………」」


 海と顔を見合わせると俺達は急いでタッチパネルの画面をのぞき込む。


 もし次来る事があったらちゃんと分かるようにしないと。こんなのも分かんないと少し恥ずかしいよな。



「はい、行くぞ」


「お金は後から?」


「うん、そうだよ」


「七緒、流石にそれは俺でも分かるぞー?」


「うっせぇ黙れ」


 慣れた手つきで手続きは終わったのか、部屋番号と人数などが書かれた紙が出てきてそれを受け取ると光はさっさと歩いて行く。


 俺達も置いて行かれないように言い合いをやめ静かに付いていく。


「飲み物ついで行くぞ」


「これ何回でも飲んでいいやつなの?」


「そう、ソフトクリームもいいよ」


「「最高か」」


 海とハモると三人同時に吹き出して笑い、他にお客さんもいるから静かにしないとと笑いを我慢しようとすればするほどおかしくて笑ってしまう。


 なんとか飲み物とソフトクリームを持って部屋に入る事が出来た。


「ねぇ光ってカラオケ何回目くらいなの?」


 俺も気になっていた事を海が聞いてくれたので「めっちゃ受付スムーズにしてたよね」と相槌を打つ。


「ゆーてそんなにだぞ? 10は超えてるだろうけど」


「え、そんなに行ってるんだ?」


「もしかして彼女か!! 絶対そうだ!」


「いや違う、妹とか家族と」


 なんで毎回海は彼女かどうか疑うんだよ。いないって何回も言ってんのに。


 それにしても光は家族仲がいいみたいだ。今日も遊びに行く確認を妹に取っていたし、シスコンなのか?


「お前シスコンじゃね?」


「いや違うが?」


 俺が思ったことを瞬時に海は口にする。


 こいつデリカシーとかないんかと思ったが、そういう気遣い無しで言い合えるような仲だと思えばまぁいいか。

 親しき中にも礼儀ありとは言うけども、流石に海もそこら辺は弁えてるだろう。


 俺は二人が言い争っているのを微笑ましく見守りながらソフトクリームを口に運ぶ。


「んーうま」


 さっきアイス食べたけど、アイスとソフトクリームは別物だからな。


「いやいや何かある度に妹が出てくるのは流石にシスコンでしょ~」


「いやだから何でそれでシスコンになるんだよ」


「じゃあやっぱり妹を隠れ蓑にして本当は彼女となんでしょ?」


「だから彼女いないっての」




「ソフトクリーム溶けるよ」


 ともう既に少し溶けているのを見ながら声を掛けると、二人は無駄な言い合いをやめ大人しく食べ始めた。


 俺より遅く食べ始めたはずなのに海が先に食べ終わると「よっし、歌おう!」といいパネルを操作し始める。


 操作に苦戦しながらもなんとか歌を入れる事が出来たのか海はマイクを持つと立ち上がった。


 有名なアニメの曲でカラオケでも定番のやつだ。


「あの、人前で歌うの初めてで恥ずかしいから一緒に歌ってくれない?」


 もう始まるというところでそんな事をお願いしてきた海に光は呆れながらもマイクを手に取る。


 俺も海と同じ気持ちだったのでここで歌って慣れさせようとマイクを持ち、三人で歌い始めた。


 光は家族と来たことがあるだけあって、歌い慣れてリズムも取れていたが海と俺は歌詞すら間違えるという中々に酷いものだった。


 でもそれすらも楽しく、笑って途中歌えなかったりもしたが何とか歌い終わった。


「ぶはは! 二人ともへったくそだな!」

「うるせぇぇぇ!」


 光が煽るとそれに反応して海がムキになり次の曲を入れる。


「高得点取ってやる!」


 ――という意気込みは虚しく点数は65点という無慈悲な数字がモニターに映し出された。


 AIのアドバイスには感情“は”籠っていてよかったと書いてあり、AIにすら煽られていた。



 ゲラゲラと二人で笑うと「そんな笑うなら次は七緒が歌ってみてよ!」と不機嫌そうに指を差してきた。


 あ、こいつ光には勝てないからって俺に吹っ掛けてきやがった。


 俺は家で何回か口ずさんで慣れた恋愛ソングを選曲し、歌い始めると海が裏切ったな! というような表情をしていた。


「おい七緒、お前普通に上手いじゃん!」


 間奏の合間に海が文句を言ってくるが自分では思うように歌う事が出来なくて結構悔しい。


 歌い終わると海が「っくそ、仲間だと思ってたのに」と恨めげに睨みつけてきた。


「いやでも、歌詞も曖昧なとこ多かったしやっぱむずいな」


「でもまぁリズムはある程度合ってたからあとは回数こなすだけだと思うぞ?」


「まじ? ちょ頑張るわ」


 光からお褒めの言葉をいただき、少しだけ自信がついた。けれど一番歌える自信があった曲で74点は中々に悔しかった。


 俺ももっと家で歌練習しよ。もっと上手くなって次来た時驚かせてやろう。


 というか他の人と来る前に自分の下手さに気付けてよかったとも思った。



 その後俺達は下手くそながらも歌いたい曲を順番に、時には皆一緒に歌って最高に楽しい時間を過ごした。




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