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底辺配信者の俺がクラスの一軍女子に身バレしてコラボした結果【てぇてぇ】と言われてバズったし、学校での距離も近くなった  作者: 絶対人生負け組


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第118話 馬鹿な自分


「小野さんはさ、誰かに助けを求められたら迷惑って思う?」


「……うちは思わない。思わないけど、他の人がそうとは限らないじゃん」


「確かにそうかも。でもさ、小野さんは今まで皆の事を助けてきたわけで……そんな小野さんに頼られたら皆快く助けてくれることはあっても、迷惑だなんて思ったりなんか絶対しないよ。俺が保証する」


 そう言う俺に疑問の目を向けて来る小野さん。


 俺はその目をしっかりと見つめて、優しく笑う。


「だって俺がそうだからさ」


 昇降口につくと、靴を履き替えながら俺は説明を続ける。


「小野さんは助けた覚えなんてないかもしれないけどさ、俺中学の事があってから本当は運動するのが嫌になってたんだ」


 小野さんは靴を履きながら静かに俺の話に耳を傾けていた。


「でもさ、小野さんがさ。ボーリングのリベンジ! って誘ってきた時あったじゃん? あれ、本当は本気でやるつもりは無かったんだよね。正直面倒くさいなって感情もあった」


「それは……ごめん」


 謝る必要なんてない。だってあの頃の小野さんは俺の過去なんて知ってるはずなくて。知ってたらそんな誘い絶対してこないのが小野さんだ。


 そもそも誰かに話すつもりなんて無かったから、色んな人が知っている今の状態が不思議なくらいだ。


「いや、今では感謝してるんだ」

「感謝……?」


「うん」


 あの日、ボーリングでリベンジさせろと言われ小野さんと勝負をすることになった時の感情を思い出しながらゆっくりと口を開く。


「全力で楽しんでボーリングをやってる小野さんを近くで見てたら、あぁ手を抜いたら失礼だな、ちゃんとその気持ちに応えないとなって気持ちになってて。気付いたら夢中になってた。その後の卓球とかやってる時もこの前のクラスマッチだって小野さんが誘ってくれたから身体を動かす楽しみを思い出せたんだ」


 周りにも帰る人がチラホラいて、こんな所でする話じゃないのは分かってる。


 こんなに本音を人に語るというのは恥ずかしいものなのかとつくづく思わされる。


 中々こういう話をする機会なんてないし、逃したら一生言わないかもしれない。


 だから、今小野さんに言うべきで。今だからこそ伝えたい。


「だから凄い感謝してる。小野さんのお陰でまた一歩、過去から歩き出す事が出来て」


 話終わると小野さんはゆっくり地面を向き、つま先を上げては落としてを繰り返し背中を丸くさせながらボソリと呟いた。


「でもうち、そんなの意図してやってない……」


 なら、逆にそれは凄い事じゃないか。なのになんでそんなに落ち込む必要があるのか。

 意図して人の力になったり誰かを助ける事は出来たとしても、意図せず人の力になっているなんてとても凄い事だ。


「それでも俺はそれで小野さんに救われた。その事実は変わらないよ」


「……うん」


「救われた俺が言うんだ。小野さんに頼られるのは迷惑じゃないって。寧ろもっと頼って欲しい、小野さんが困ってたら今度は俺が小野さんの力になりたい」


 目が合うと小野さんは瞳を揺らして再び下を向き、自分の身体を抱き寄せる。


「でもそれじゃあうち、恩着せがましいやつみたいにならない……?」


「ならないよ。小野さんはそんな気持ちで困ってる人を助ける人じゃないってみんな分かってるから」


「そっか、そっか……」


 自分の中で俺の言葉を咀嚼し納得したのか、ゆっくりと頷く小野さん。


「……ありがとねっ」


 小野さんは顔を上げると、少し潤んだ瞳でいつもの明るい笑顔を向けてきた。


 その笑顔を見れてどこかホッとすると同時に、照れ臭さが込み上げてきて俺は目を逸らし手を差し述べる。


 小野さんが手を取った事を確認すると、力を込め立ち上がらせる。


 いやこれ片手じゃ無理だな。


 それに今小野さんは体調が悪いし、危ないから両手に切り替えて小野さんを立ち上がらせる。


 少しよろめく小野さんの肩を優しく掴んで支えると


「ラギっち」

「ん?」


 手を胸の前で握り、俺を見上げてくる小野さん。


「早速一個甘えてもいい……かな?」


 熱のせいだろうけが、とろけるような目にほのかに赤い頬のせいで変な事が頭に過る。


 ま、まさかキス!?


「な、なに……?」


 そんなまさか付き合っても無い男女がするようなものでもないし。……いやでも陽キャは間接キス普通にやる人多いし、もしかして俺が知らないだけでキスも普通にやるものなのか!?


「やっぱりちょっとまだキツイから家までおんぶして……?」


「あ、あぁ! おんぶねおんぶ!」


「うん」


 思わず声が裏返る俺なんて気にもせず両手を伸ばしてくる小野さん。


 だよねだよねだよね! よかったキスじゃなくて。小野さんの事は嫌いじゃないし寧ろ好きだが恋愛的な好きでもないし、そう言われたらどう断ればいいのかテンパってたと思う。


 傷つけないように受け入れたとしても、そんないい加減な気持ちで向き合うのは失礼だと思うし。


 一人で勝手に早とちりしたのが恥ずかしい!!


 必死に心の中で言い訳をしながら小野さんに背中を向けしゃがもうとした瞬間、新たな問題点に気が付いた。


「あ、あのさ……校門出てからでもいい……?」


 頬をかきながら周囲を見渡して小野さんに向き直る。


 ここはまだ昇降口で学校内。ということは同じ学生が沢山いると言う訳で……。


「あー……ん、分かった。そこまで頑張って歩くー」


 この前クラスマッチで倒れて、一人で帰れない時に七月さんに支えられながら出た時の注目度も半端なくて視線が怖かった。


 おんぶとなればまた注目されるだろうことが容易に想像できる。


 察してくれた小野さんは俺の袖をがっしりと掴むと、ゆっくりと歩き出す。


 倒れられても困るので、俺は小野さんの様子を適宜見ながらペースを合わせて歩いて行く。


 ほぼゼロのこの距離感。息が少し荒くなる小野さん。


「あは! カップルかなー」

「ねー、身長差かわい~」

「それな、めっちゃ推せるー」


 そこそこ大きな声で隣を通過して行く上級生の陽キャ女子達。


 やっぱそう見えますよね。俺もそう思います。でも違うんです。ただの病人と介護してる人です。


 小野さんの様子を確認すると「へへ」とふにゃりと笑っているだけでそれ以上何も言ってこなかった。


 それだけキツいんだろうか。


 さっきよりも呼吸の速度が速くなっている気がする。




 ……俺馬鹿じゃん。



 俺の都合だけでここまで歩かせてしまったけど、間違いだったと今更気付いた。


 昇降口の時からおんぶしておけば、小野さんがこんなにキツイ思いしなくて済んだのにという後悔の念を抱く。


 周りから変な目で見られるのが嫌という理由だけで病人の小野さんの気持ちを考えなかった。

 何が今度は俺が小野さんの力になりたいだ。折角小野さんが頼ってくれたのに、その頼みをこんな形で無下にして小野さんを傷つけてしまった。


 小野さんの気持ちを裏切ってしまった。


 こんなのあの頃の阿久津と聖(あいつら)と同じじゃないか。


 さっき自分が言った事が全く出来ていない事に、自分自身に腹が立つ。


 結局俺は誰かの力になったり助けたり、そういうのは向いてないんだなとヒシヒシと実感させられた。



 自分の気持ちを優先して、最低だ俺。



 吐いた息の中に後悔が滲む。


 そんな後悔を反省して俺は一度深呼吸をすると、小野さんの前にしゃがみ込み乗るよう促した。


「おわっっ」


 急だったからか、小野さんは直ぐに止まる事が出来ずに俺の背中に手をついた。


「ごめん、大丈夫? ほら乗って」


「う、うん大丈夫。でも、まだ校門出てないよ……?」


 不思議そうな声で尋ねて来る小野さんに俺は「いいから乗って」と急かす。


 この態勢でずっといる方が恥ずかしい。


 それにここまでしたら乗って貰わないと、周りから見たら「あの人おんぶしようとして断られてて草」みたいな感じに思われるし。それは中々に嫌だ。


「分かった、ありがと」


 小野さんがそう短く告げると、背中に体重がかかり首に腕が巻き付いてくる。


 体重が全部預けられる感覚が伝わった次の瞬間、視界の端に小野さんの顔が映り込んだかと思うと、


「ふぅ……」


 耳元で聞こえる吐息に身体が跳ねそうになった。


 が、今はそんな事で一々反応している暇は無い。


 しっかりと足を持ち、倒れないようにゆっくりと立ち上がる。


「んしょ」


 正直おんぶ出来るか不安だったが、なんとかなった。


 というか意外と余裕だ。


 これもクラスマッチに向けてランニングやら筋トレやらをやった成果かと涙ぐむ。


 小野さんが軽いのもあるのかもしれないが。


 やはり筋肉は正義とか、筋肉は全てを解決するという言葉は実際ほんとにそうだと思う。


 まぁ流石に全てを解決することは誇張だが、何事も筋肉はあった方がいいなと体感した。



 首に回された小野さんの腕、細いな。


 いつも明るく元気でエネルギーが溢れていて、体の小ささなんて感じさせない程の運動神経をしていて。実は長女で弟達の世話をしているしっかり者の一面もある小野さん。


 だが弱ってる姿を見たら、小野さんもただの小さな一人の女の子なんだなという事を改めて認識させられた。


 どこか小野さんなら熱を出してても昇降口から校門までは歩けるだろうという謎の信頼があった。

 いや、信頼という言葉で綺麗に片付けるのは気持ち悪い。


 それはただの無神経な押し付けで、小野さんの事を分かった気で決めつけていただけ。


「……俺、変われるかな」


 自然と漏れ出た言葉に小野さんは「ふふっ」と優しく耳元で微笑む。


「大丈夫、変われるよ」




「――それにもう変わってきてるとうちは思うよ」


「……そうかな」


 確かに不登校だった時期から見れば変わっているとは思う。だけど、だけどそれでもまだ足りない。

 もっともっと変わらないと。


 普通の人みたいに、もっと強くならないと。



「焦らなくて大丈夫、大丈夫」


 そんな俺の焦りを知ってか知らずか、小野さんは頭を優しく撫でてくれた。


 その手はまるで俺を肯定してくれているみたいで。優しさに包まれている感覚に襲われる。


 頭を撫でられる。ただそれだけの事で、俺は落ち着くことが出来た。


 我ながらチョロいなぁ……。




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