第107話 自分の気持ちの確かめ方
〇小野こはる視点〇
ラギっちと卓球でペアを組もうって声を掛けた理由は一緒にやりたかったから。
でも他にも理由がある事はラギっちに内緒だ。
夏休み明け、あやちゃんとななっちが二人共夏祭りデートをしていた事を皆で話していた時。
キュンってしたとか、萌えたとかうちにはよくわからなかった。
うちはラギっちの事が好きなのか、未だによく分からない。
一緒に遊ぶのは楽しいし、あのちょっと抜けてる感じの顔が安心したり。でも勝負ごとになるとうちにも本気で向き合ってくれて、あの真剣な眼差しとかは好きだったりする。
前に少しドキドキすることはあったけど、今もたまにするくらいで。
ネットで調べても答えなんて載ってなくて。うちの感情は一体何なんだろうと悩んでいた。
ホームルームでクラスマッチの種目決めをしとけと言われた後、1時間目が始まる少し前の時間。
「こはる悩み事……?」
浮かない表情のうちに気付いたゆいちゃんが心配そうに覗き込んでくる。
「んー、まぁいやちょっとね……」
「どしたのーこはるー?」
「なんかあった?」
相談しようか迷いながら返答すると、その歯切れの悪さにななっちとあやちゃんも気にかけてくれた。
自分の胸の内をさらけ出すのは恥ずかしいけど、これ以上モヤモヤするのも嫌だ……。
うちは努めて明るく皆にさっき考えていたことを相談すると、皆難しい顔をした。
「あっ! じゃあさ、確かめてみたら?」
「確かめてみるって何を?」
うちが聞き返すとななっちはドヤ顔で「クラスマッチ、柊くんとペアで卓球出なよ」と提案する。
「柊くん卓球とバド出るみたいだし」
意図が分からず首を傾げているとゆいちゃんがななっちに確認する。
「一緒に練習したり、試合に出たり時間を共有してどう思うのか確かめてみる……みたいな感じ?」
「そそそ! どう? いい案でしょ」
親指を自分に向けて「私天才っ!」と自画自賛するいつのもななっちを無視しつつうちは考える。
確かにラギっちと過ごす時間が今よりも長ければうちの感情が何なのか見えて来るかもしれない。
「いいねいいねそれ! やってみようかな! でも何を確かめればいいの……?」
うちは助けを求めるようにななっち、ゆいちゃんの順に顔を見る。
するとななっちもゆいちゃんもあやちゃんの方に視線を向けた。それを追いかけるようにうちもあやちゃんを見る。
「え? あたし!? あたしに聞くの!?」
「だって一番恋愛経験豊富でしょ……? こういうのは一番詳しい人に聞くべきかなって」
ゆいちゃんのもっともな意見にあやちゃんは「そうだけど……」と気まずそうに目を逸らす。
「で、何確かめればいいの? 彩香先生っ!」
「教えてあやちゃん先生っ!!」
ななっちに続きうちも先生呼びのノリに乗る。それを微笑んで見てるゆいちゃん。
「あたしも正直よくわかってないんだけど……」
呟いた後あやちゃんは頭を掻きながら恥ずかしそうにボソボソと考えを述べる。
「手を繋いでみたくなったり、ハグとかキスとかしたくなるかならないか……とか?」
頬を少し赤く染めながら伏し目がちに言うあやちゃん。
「他には他には?」
それだけで分かる程恋愛は単純なものではないだろうと思ったうちは更に質問をする。
「んーと……え、エッチな事したくなったり……とか……?」
「え、エッチな事!? それってつまり――どういうこと?」
「はーいストップストップ~!」
エッチな事って具体的にどういう事なのかを聞こうとしたらななっちに止められ困惑する。
あやちゃんは顔を手で覆っていてこれ以上教えてくれそうもない。
「他には相手からの連絡を頻繁にチェックしてしまうとか……相手と話す時に平常心が保てない……とかだって」
ゆいちゃんが調べてくれたのかスマホを見ながら更に付け足す。
「話しかけられたらドキッとしたり、声が高くなる。思わず笑みが零れる。素っ気ない態度を取ってしまう……とかだって」
「「へ~」」
隣のななっちも感心したような呟きをする。
話しかけられても別にドキッとしないし、声が高くなってる自覚も特にない。素っ気ない態度なんて取るはずもないし……でも思わず笑みが零れちゃうのだけは当てはまるなー。
だってラギっち面白いから話すの楽しいし。
まだ今はよく分からないなという結論に至り、取り敢えずペアを組むことに。
その後ななっちの協力の元、うちはラギっちとペアを組むことに成功した。
ラギっちはななっちと組みたそうな感じだったけど、悪い事しちゃったかな……?
〇柊七緒視点〇
俺は小野さんと朝ランニングをした日から毎日走り始めた。朝起きれなくて走れなかった時は放課後、家に帰って来てから走ったりして徐々に体力をつけて行った。
体育の授業では小野さんと卓球の練習、たまにバドミントンもやるという日々が続いていた。
最初、ダブルスは初めてで交互に打たないといけない事にワタワタしていたのだが、最近ようやく様になってきていた。
バドミントンも体力が多少ついたことによりかなりいい感じだ。
最初は投げやりだったが、やればやるだけ本番が楽しみになっている自分がいた。
「よーし今日の配信はここまでにしようかな」
今日もエイムの調子が悪くならない様にヴァルのコンペを2試合程回すと、配信を閉じる事を見てくれている人に伝える。
最近はわりかしソロでやる事も多くなってきてコメント欄も落ち着いている。
【最近終わるの早くない?】
【なんかあるの?】
「あーそれがクラスマッチが近くて……」
リスナーの質問に、前話した活発系女子と卓球でペアを組むことになった話をした。
「それで今体力戻してるんだよね」
【ほへぇ、その子に気に入られてるんだ】
【えら】
【戻してる?】
「あれ、言ってなかったっけ? 俺中学の頃バスケしてたんだよ」
【えぇぇ!! 意外過ぎる】
【バスケ? あんなのイケメン陽キャがするやつじゃん】
【もしかしてラギってやっぱりイケメン説】
驚き盛り上がるコメント欄に「まぁ1年で辞めたけど」と苦笑する。
【なんやねんw】
【なんだよ】
【なんで辞めたん?】
何で辞めたか……か。
あまり配信で言うような事でもないし、今言うべき事でもないなと判断した俺は言葉を濁す。
「まぁちょっと……色々あってね」
自嘲気味に言うとそれが声だけでも十分に伝わったのか次々と慰めの言葉が届く。
【なんかごめん】
【色々あるよな……】
【まぁ元気だせって】
「あはは、ありがと」
心配させないように精一杯の愛想笑いをすると、脱線した話をレールに戻す。
「っとまぁ、体力つける為にクラスマッチ終わるまでは配信時間短いかも。あーてか、何か学校の行事とかで忙しくなる時は短くなるかも。まぁその時はまた言うわ」
【ほーい】
【りょーかい】
【ネットより現実優先だからな】
【お前は俺達みたいになるなよ】
【こっち側に来ちゃダメだからな】
【楽しんで】
皆いつも当たり強かったりするけど、根は優しいんだよな。
再びお礼を告げ、配信を終えると編集作業も程々に1時前にはベッドに入った。




