第四十話 強くなったパーティ
最初の交戦相手はジャイアントスネーク五体だった。体長三メートルほどの蛇の形をした魔物だ。レベル一の頃は一、二体ならともかく、五体もいたら避けていた相手だ。
しかし、今はその頃とは強さが違う。四レベル上がったことで自信を付けた彼らは迷うことなく戦いを挑むことにした。
「よし、行こう」
ソフィアの合図で四人が突撃する。
戦士のガイスンが楯を構えて一体のスネークに体当たりする。激しく衝突し、スネークが動きを鈍らせた。その間に、他のメンバーはそれぞれ別の相手を狙って接近していく。
スネークが噛みつきでガイスンに反撃してきた。それをいつも通りラウンドシールドできれいに弾く。そしてできた隙に、ガイスンが剣を突き出し、口の中を狙う。剣が見事に口の中に突き刺さり、スネークの体から剣先がはみ出していた。剣を引き抜くと、ジャイアントスネークは地上に倒れ、魔石を残して霧状になって消えていった。
「よし、まずは一体」
ガイスンが戦っている間にも、仲間達もみな奮戦していた。
セラタスが持ち前の回避力を生かして、スネークの攻撃を避けていく。三度ほどかわしたところで反撃に出る。
噛みつきに来たスネークの側面にさっと回り込み、その頭上に勢い良く斬撃を加えた。
その一撃は見事にスネークの首を斬り落としていた。頭部を失って、スネークが魔石を残して霧状になって消えていった。
ソフィアも負けていない。
出会い頭にメイスで渾身の一撃をスネークの頭部に叩き込む。
ぐしゃりとスネークの頭部が見事に潰れていた。そこにソフィアがもう一撃を加える。その一撃でスネークの頭部は完全に潰れ、地に倒れた。
メアリーも自信をもって一体のスネークを相手にしていた。
スネークが突進してくると同時に魔法を発動する。
「ファイアボール!」
高熱の火球が宙を飛び、スネークの顔面を直撃する。高温に焼かれて、ほんの短い時間でスネークが頭部を失い、地に倒れる。それほど火球に威力があったのである。
「セラタス!」
「任せろ、ガイスン!」
残る一体は戦士とシーフの二人組が相手をした。いつも通りガイスンが楯で攻撃を防いでいる間に、できた隙にセラタスが斬撃を叩き込むのである。その斬撃はまたも一撃でスネークの頭部を斬り飛ばしていた。そしてスネークが魔石を残して霧状になって消えていく。これで五体。
「よし、全滅だ」
魔物がすべて倒されたところで、リーダーのソフィアがいつも通りみなの無事と異常の有無を確認する。全員に異常がないことを確認し、喜びの声を上げた。
「ジャイアントスネークを簡単に倒せるほど私達は強くなれたんだ。これは本当にうれしい」
パーティの三人も同様に喜んでいた。
「楯役だけでなく攻撃できるのはでかいな」
「斬撃がすっと決まるんだ。気分いいな」
「魔法もしっかり威力出ていて良かった」
そんな風に喜び合う四人を見ていて、セイジは修業時代を思い出していた。少年時代、強くなるごとに仲間と共に喜び合ったものだった。だから、彼らの気持ちが良く分かる。
アイリも同行している仲間が喜んでいる姿を見るのはうれしかった。彼らパーティメンバーも、彼女より四つほど年上の少年少女なのである。近い年代なので、彼らの喜びに素直に共感できるのだった。
「この調子でどんどん行きましょう」
ソフィアの言葉に、仲間達もみなうなずいていた。
次の相手はジャイアントホーネット十体だった。
体長六十センチほどと大きくはなく、攻撃も尻尾の針を刺してくる程度である。しかし、不規則な軌道で飛び回るので、攻撃を当てるのが難しい相手である。それが十体ともなると、かなり厄介になる。
「回避優先で、とにかく確実に攻撃を当てましょう。数さえ減ればどうということはない相手だから」
ソフィアの言葉に分かったと三人が返事をする。
「じゃあ、行くわよ」
四人が魔物の群れに突っ込んでいく。
ホーネット十体が反応し、四人を取り囲むように飛び回る。
「あせらず回避」
メイジのメアリーは魔法の楯を使える。しかし、動きが鈍るので、ここは楯を使わず回避に徹した。ガイスンも楯で防ぐより回避を優先している。
ソフィアがアタッカーの割に器用にホーネットの攻撃を避けていた。最初の一体を倒したのも彼女である。一体の攻撃をかわした直後、その背後から迫ってきた一体にメイスを振るい、見事に直撃させたのである。
「まずは一体!」
ソフィアが倒したホーネットが魔石を残して霧状になって消えていく。その間にも戦いは続いている。
二体目を倒したのはセラタスだった。回避直後に反撃を叩き込み、見事にホーネットを両断したのだった。
「二人ともさすがだな」
普段は楯役のガイスンは攻撃を受けることに慣れている。二人の活躍を見て、そんなことをつぶやく余裕があった。
そこへちょうど一体のホーネットが飛んできて、目の前で尻尾の針を振るってきた。ガイスンがそれに合わせて剣を振るう。眼前のホーネットが両断され、地上に落ちる。これで三体目である。
数が少し減って、攻撃の圧力が下がっていた。回避に余裕ができたことで、メアリーも相手の動きをしっかりと見切ることができた。そして一体のホーネットの隙を見つけて、魔法を放つ。
「ウィンドカッター!」
圧縮された空気の刃がホーネットの体を見事に真っ二つにした。これで四体目。
数が減って、パーティ四人に余裕が出てきた。
「最後まで油断せずいくわよ」
ソフィアの声が飛び、三人がうなずく。
ガイスンが、セラタスが、メアリーが、そしてソフィアが焦らず回避を繰り返し、そして反撃を放つ。それが繰り出される都度、ホーネットの数が減っていく。
そして最後はリーダーのソフィアがメイスの一撃でとどめを刺した。
「全滅を確認。みんな異常はない?」
大丈夫だと分かっていても確認作業は重要である。それを手を抜かずに行うソフィアはやはりリーダーに向いていた。
全員から無事と異常なしの返答を受け、ソフィアがふうと息をつく。
「数が多くても何とかなるものね」
「そうだな。レベル上がって回避に余裕ができた感じがする」
「確かに。メアリーも器用に避けてたもんな」
「そうなの。相手の動きに体がついてくる感じだったのよ」
これで二戦連続で余裕の勝利である。四人は自分達が強くなったことを実感していた。
「よし、じゃあ次に行きましょう」
四人の魔物討伐はまだ続いた。
その次の相手はレッサーコモドドラゴン三体だった。
レッサーと名がつくのは、同じ名前の魔物に上位種がいるからである。コモドトカゲは普通の爬虫類だが、その姿に似た魔物のことを、人はコモドドラゴンと呼んでいた。体長二メートル程度、硬く、威力のある噛みつきと尻尾の攻撃をしてくる魔物である。
「今度は一人一体という訳にはいかないわね」
頑丈な相手なので、連携して集中攻撃をする必要があった。
「ここままたガイスンの楯が頼みの綱ね。二体引き受けてもらって、その間に三人で一体を一気に倒しましょう。その後は順に一体ずつ片付けていけばいいわけだし」
「了解だ。二体相手はちときついが、何とかやってみる」
ガイスンがそう返答し、セラタスとメアリーも同意したところで戦闘開始である。
「いくわよ」
四人が魔物の元へと突っ込んでいく。
そしていつものようにガイスンが楯を構えて突進した。
レッサーコモドドラゴンが正面から噛みつきにくる。
ガイスンがラウンドシールドでそれを捌く。
その間に三人は一体のコモドドラゴンに狙いを定め、攻撃を開始した。
まずはセラタスが接近し、コモドドラゴンの攻撃を誘う。至近距離から斬撃を浴びせ、わずかだが顔面に傷をつける。当然、魔物の方も反撃に出て、口を大きく開いて噛みつきにきた。
「今だ、メアリー、頼む!」
セラタスがさっと横に避ける。コモドドラゴンの正面にはメアリーがいて、魔法の発動準備をしていた。
「ここがチャンス! ファイアボール!」
高熱の火球が宙を飛び、コモドドラゴンの口の中を直撃した。体内を焼かれてコモドドラゴンの動きが鈍る。頭部も焼け焦げて脆くなっていた。
「一気に片付けるわよ!」
ソフィアがメイスを構えて突進、痛烈な打撃をコモドドラゴンの頭部に与える。一撃でぐしゃりと頭部がひしゃげる。二発、三発と打撃を加え、原形を留めないほどに頭部を潰した。
そしてコモドドラゴンが地に倒れる。他の魔物と同じように魔石を残して霧状になって消えていく。
それを確認して、ソフィアが仲間に次の指示を出す。
「ガイスンの負担を軽くしないと。すぐにもう一体をやるわよ」
「了解!」
そして三人は次の一体へと向かう。
そこでは戦士のガイスンが楯を巧みに使い、二体の攻撃をうまく捌いていた。三人が即座にそのうちの一体に取り掛かる。
手順は先程と同じだ。噛みつきにきた口の中にファイアボールの魔法を撃ち込み、一気に頭部を焼く。脆くなった頭部をメイスの打撃で粉砕する。
三人はあっという間に攻撃を決めて、その一体を片付けていた。
「残り一体!」
「よし、ここからは俺も反撃だ」
ガイスンがコモドドラゴンの体当たりを楯で受け流し、反撃の斬撃を加える。高らかな金属音と共に頭部にわずかだが傷をつける。それに怒ったかのようにコモドドラゴンが噛みつきに来る。
「ファイアボール!」
メアリーはその隙を逃さない。火球の魔法を口の中に直撃させる。
そしてソフィアの打撃。メイスの痛烈な攻撃を三度加え、先程までと同じように頭部を完全に潰した。
コモドドラゴンが魔石を残して霧状になって消えていく。四人の完全勝利であった。
ソフィアが、仲間の無事と異常の無いことを確認し、息をつく。
「連携もしっかりできてたわね。もうこの辺では負ける気がしないわ」
その言葉に、仲間の三人も同感だとばかりうなずくのだった。




