第三十九話 もう一日パーティに同行
その日、グルトンの町の冒険者ギルドに戻り、稼いだ魔石を換金した。
セイジが稼いだのは銀貨三枚。ソフィア達パーティが稼いだのは銀貨四枚銅貨三十枚だった。それはパーティの最高記録だった。
「ありがとう。セイジさんのおかげでたくさん魔石を取れました」
「いや、俺は少し手伝いをしただけだ。ソフィア達みんなの実力で魔物を倒せているんだ。自信をもっていい」
「そう言ってもらえてうれしいです。確かに実力が高まった気がします」
ソフィアが初めて笑みを浮かべてそう答えた。それは十五才という年相応にかわいらしいものだった。パーティリーダーの彼女は、ダンジョンでは生真面目な表情ばかりだったのだ。
「本当に良かったです。これだけ戦えるなら、もう十分一人前の冒険者ですね。ソフィアさん達の頑張りが報われたんですよ」
ギルド職員のメリッサもソフィア達を褒めた。そして改めてセイジにも礼を言う。
「セイジさんのおかげで、このパーティも立派に成長できました。この四人の今後の活躍に期待できそうです。本当にありがとうございました」
そう言って報酬の銀貨二枚を手渡した。
「セイジさん達のギルドへの宿泊条件、残りは銀貨七枚分の魔石ということになりますが、明日もダンジョンに行かれますか?」
「もちろんだ。なるべく早く済ませたいしな」
「そうですか。なら、ソフィアさん達はどうしますか? 明日もセイジさんに同行してもらいますか?」
セイジの強さは目の当たりにして良く分かっている。中級クラスの魔物を一撃で倒していく強さは本物だ。できることなら、もう一日同行して、レベルを上げておきたい。
「セイジさんが良ければ、私達としてはぜひご一緒したいです」
ソフィアが即答した。それほどレベルアップの恩恵が大きかったのだと彼女達は思っていたのである。
「俺は構わない。アイリもいいよな?」
「うん、もちろん。人が増えてもセイジの強さは変わらないし。それに私としても、みなさんの戦いぶりは参考になりますから」
それを聞いてメリッサがほっとしていた。この新人達を強くしてくれるのが本当にありがたいことだったのだ。
「じゃあ決まりですね。新人育成の褒賞として、また銀貨二枚をお支払い致します。では、明日もよろしくお願いします」
話が決まったことで、これでまた一段階強くなれると、ソフィア達パーティ四人もみな喜んでいた。
「私達の面倒を見てもらって助かります。よろしくお願いします」
「ついでのことだから気にするな。それに同じ冒険者同士だ。明日も力を合わせて頑張ろうな」
セイジはそう答えると、右手を差し出した。セイジとアイリはソフィア達とそれぞれ握手を交わした。冒険者仲間というのもいいものだなと、セイジは改めて思ったのだった。
翌日。六人はダンジョンの地下十五階にまで足を延ばしていた。昨日よりさらに五階も下である。
「くれぐれも安全確保を優先に。アイリ、分かってるな」
「分かってる。いざとなったらシールド使うよ」
昨日より深い階層なので、出てくる魔物も当然強い。
「はい。私達もちゃんと距離を置きます」
ソフィア達も真剣に返事をした。下手な行動は命に関わる。
「よし、じゃあ、始めようか」
そしてセイジの魔物討伐が始まった。
最初の相手はレッサーデーモン三体だった。以前、元部下が討伐した赤暗色の悪魔型の魔物である。魔法を使ってくる上に、遠距離の魔法は無効化するという厄介な相手である。ソフィア達パーティ四人では一体を相手にするのも難しいだろう。
「しっかり離れてろ」
そう言うと、セイジがデーモンの元へと突進する。
デーモンの方でもそれに気付き、火球の魔法をそれぞれが放ってきた。セイジはいとも簡単にそれを避けていく。飛んできた火球に巻き込まれないよう、ソフィア達は十分に距離を取った。
すぐにセイジは一体のデーモンの足元へとたどり着いていた。
デーモンが拳で殴り掛かってくる。セイジはそれをさっと避けると、高々と跳躍し、剣を抜いて斬りかかった。
「斬!」
そのデーモンの脳天を見事に斬りつける。そのまま上半身まで一気に斬り下げ、その体を真っ二つにした。レッサーデーモンが地に倒れ、魔石を残して霧状になって消えていく。
「す、すごすぎる」
昨日も地下十階の魔物を一撃で倒してきたセイジだが、今回の相手はそれより格上である。そんな相手でさえ一撃で倒せる実力に、ソフィア達パーティのメンバーは度肝を抜かれていた。
一体倒して地上に降りてもセイジの動きは止まらない。
背後から殴り掛かってきた拳をかわして、次の一体に向き直る。
火球が飛んでくるが、やはりセイジには当たらない。そして火球をかわした次の瞬間、またセイジが高々と跳躍し、斬撃を放った。
「斬!」
またもデーモンの頭上に一撃を見舞い、その体を真っ二つにする。
その直後、セイジの背面に火球が迫った。セイジは焦らずにそれを避け、最後の一体の元へと接近する。デーモンが拳を飛ばし、蹴りを放ってくるが、それもセイジがあっさりと避けている。
そして跳躍。またもデーモンの頭上に強烈な一撃を見舞う。
「斬!」
最後のデーモンも体を真っ二つにされて倒れた。
セイジは三体のデーモンの魔石を回収すると、パーティメンバーの元へと戻った。
「お待たせ。無事と異常の有無を確認してくれ」
ソフィアがしたのと同じように、戦闘後の確認をセイジが行った。アイリも含めた五人が無事と異常なしの返答をする。
「了解だ。今日は銀貨七枚分稼ぐから、しばらく付き合ってくれ」
セイジが事も無げにそう言って、次の場所へと向かう。
パーティ四人が驚きのまま、その後に続いた。ここまで強くなるには、後どのくらいかかるのだろうと思いながら。
その後も討伐は順調に続いた。
地下十五階ともなると、出てくる魔物はやはり強かった。キメラ、ハイガーゴイル、ヘヴィサーペント、ファイアージャイアントなど、パーティのレベルがいわゆるマスターレベル、つまり十三以上はないと厳しい魔物ばかりだった。セイジはそれらを全て一撃で倒していく。恐るべき強さだった。
全部で十体倒したところで、魔石がノルマの銀貨七枚を超えた。
「よし、これで俺の方の用事は終わりだ」
稼ぎ終わったところで、まずは一気に地下二階にまで戻った。長い時間、深い階層にいるのは五人にとって危険だからだ。
そこでまずは昼食休憩を取った。みな町で買って持参したパンを取り出し、かじり始めた。
そこでソフィアが改めて礼を言った。
「セイジさんに同行できたおかげで、またレベルが上がりました。一昨日までレベル一だったのに、もうレベル五ですよ。とても調子がいい感じで、昨日より強い相手でも戦えそうです。ありがとうございました」
魔物との戦闘時にセイジと一緒にいたことで、彼らも経験を得ていたのだった。それはアイリも同様で、彼女もレベル七になっていた。
「私もレベルが上がって良かったんだけど、何か苦労して強くなっている人達に申し訳ない気がするなあ」
というのがアイリの言葉だった。
ともあれ、ソフィア達が強くなったのは、今後の生活のことを考えればとても重要な変化である。
「それは良かった。一昨日、みんなの稼ぎが少ないことをメリッサさんが心配してたんだ。それだけ強くなれたんなら、この先は安定して魔物を倒せそうだな。午後はその確認をして、ギルドに引き上げよう」
セイジがパーティが強くなれたことを良かったと改めて伝えた。ソフィア達四人がセイジにありがたいことだと感謝し、それぞれ頭を下げた。
「はい。分かりました。午後は私達が頑張ります」
「せっかくセイジさんが骨を折ってくれたんだ。俺達も頑張るよ」
「もちろん俺もしっかり戦うぜ」
「私も魔法の種類と回数が増えましたから、役に立って見せます」
そんな風に、四人がそれぞれやる気のある所を見せていた。彼らも自ら選んで冒険者になったのである。魔物討伐にやりがいを感じている。
そして昨日より二つ下の階、ここ地下二階でソフィア達が魔物の討伐をすることとなった。とは言え、地上一階に比べてそれほど魔物の強さに大きな変化はない。多少数が増えたり、強い種類がいたりする程度だ。
「さあ、私達の出番ね」
ソフィアの言葉に三人が力強くうなずいた。




