明の章 使嗾の根源~生命~
雄介は竹山を下りたその足で大山製薬の事務所に大山狭霧を尋ねた。
事務所で待つように言われ、応接室に通されるとニュース番組が流れていた。
久しぶりに見るテレビを昨夜のことも気になって観ていたが、興味のあることは流れなかった。だが、続いて流れた地元のCMに雄介は驚いた。
コスメのCMに出ている顔に見覚えがあった。
「白峰・・・鈴音だ」
ちょうどその時ドアをノックして大山狭霧が入ってきた。
「良かった。宇佐野さん、来てくださって良かった」
大山狭霧は立ち上がった雄介の手を取り喜んだかと思ったが、すぐに神妙な面持ちで雄介に座るように勧めた。
「今日は、すみません、お忙しいところお邪魔し・・」
挨拶をする雄介の言葉を切って、大山狭霧が話し始めた。
「宇佐野さん待っていました。市子さまがまた襲われました。大事には至りませんでしたが重ねてのショックは大きくて、また入院されています」
「いつのことですか?」
「3日前です。市子さまはあの後、立ち直られて退院されました。その後、用心して外出もなさらず、過ごされていました。大学も卒業を控え、東京に帰られる予定を立てておられたとき、大学のお友達がお見舞いに見え、外でお食事をされたのです。そして白峰さまのお車で帰宅される途中襲われました」
「どうして警備の方を付けられなかったのですか?送り迎えくらいは・・・」
「市子さまが嫌がられて、私もあの後何も起こらなかったので安心してしまいました。今回は白峰さまもご一緒でしたので、大丈夫かと」
「白峰さんはどうされたのですか?」
「ご無事でした。食事の帰りに、車の後部座席からフードを被りお面をつけた男がナイフを突きつけ、まず白峰さまを気絶させ、手を縛り、市子さまも同じように縛られました。その後、薬を香がされ気を失った状態で発見されました」
「2人とも無事だったんですね。よかった」
「ただ市子さまは白峰さまの襲われるご様子を一部始終覚えていらして、意識を取り戻されても恐怖におびえていらっしゃいます。そして今回は日中の出来事で、白峰さまもご一緒だったので大きくなるかもしれません」
「そうでしたか」
雄介は巡り合わせに驚いていた。
市子が落ち着いていれば警備の仕事もないと思っていたからだ。
オロチとの接点が残っていることにほっとした自分に、雄介は息苦しさを感じた。
その悪縁の繋がりの代償が市子の恐怖なのだ。
「病院へ一緒に行ってもらえますか?宇佐野さんの顔を見ると安心されるかもしれません。しかし、どんな反応を起こされるか分からないので、先ずは声をかけないでください。」
雄介と大山狭霧は、以前市子が入院していた病院に向かった。
そこには感情の消えた市子がいた。
ぼんやりと点滴の落ちる様を見ていた。
雄介が入っていっても市子は反応しなかった。
雄介はソファーに座った。
それでも市子は気付かなかった。
しばらくして点滴の量が少なくなってきた。
ポトリポトリと落ちる点滴が、市子が恐怖の底へ落ちていくへのカウントダウンのように思えた。
市子の目が落ち着かなく動き始めた。
それは芽唯と同じでめまい起こし、気を失う兆候だった。
雄介はベッドに近づき声をかけながら、手を握った。
「もう大丈夫だよ、これを外せば楽になるから」
市子は雄介の手を握ったまま、目を閉じた。その表情から徐々に緊張が取れていった。
1ヶ月後、雄介は市子とともに東京行きの新幹線に乗っていた。
市子が退院した後、雄介は必要な限り市子と一緒に過ごし、今では雄介、市子と呼び合うようになっていた。
雄介は駅で見出しが気になった週刊誌を手に取った。
パラパラとめくると、女子大生の恐怖の見出しにオロチの文字。
実名こそないが、明らかに市子と白峰鈴音の記事だった。
「無責任なことばかり書きやがって」
テラを思い出し、購入した。
この手のことは、あることないこと騒ぎ立てられ、噂は膨れあがり、ネットに流れ、誹謗中傷の的になってズタズタにされるのが落ち。
大丈夫かな、市子は。白峰も被害者だがあまり触れていない。
漠然とした内容だったが、ダメージが大きくて入院したと書いてあり、市子を特定できるような書き方だった。・・・これは誰がリークしたんだ?
疑問とともに雄介は師走の東京に降り立った。
長い物語を読んでくださっている方々に感謝します。ありがとうごさいます。
島根での雄介物語はオロチが斐伊川の氾濫との言い伝えもあり、天ヶ淵で市子(神太市ひめ)を助ける形にしました。
同じ恐怖に怯える芽唯(櫛名田ひめ)を守るため、上京した雄介は、残りのオロチや八神会と対決します。
また生命は月の姫となったルナ(月読命)の物語はエピソードは限られているのでオリジナルです。




