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明の章 使嗾の根源 ~生命~

雨上がりの早朝、津宮心(つのみや こころ)津宮依千姫(つのみや いちき)津宮多希流(つのみや たきる)の三姉妹は朝のトレーニングをしていた。


依千姫と多希流は波打ち際を足を取られることもなく一定の間隔を保ちながら宙を舞い、武術の形を止まることなく決めていく。


そんな二人の後を静かに心が追って行く。

心の腰から上は静止したままで、足の動きもゆっくりとしていて、まるで波に運ばれているように見えた。

心の動きが止まった。同時に先を走っていた多希流が何かに気づき振り返った。


後を追っていた依千姫とともに近づくと若い男が波打ち際に胎児の形で打ち上げられていた。


「死んでる?」


多希流が依千姫に尋ねながら首筋に触れようとした途端、その男は起き上がり多希流に襲い掛かった。

格闘技を網羅した依千姫と多希流だったが、その男は手強く、二人がかりでも組み伏せることができなかった。


少し離れて静観していた心が「セット」と短く叫んだ。


闘っていたふたりは瞬時に身を引き、その男から間合いを取り次の指示を待った。

男は目を閉じて今にも崩れ落ちそうな体勢で立っていた。


心が研ぎ澄ました視線を男に向けた。


「依千姫、ズボン右後ろポケット、行ける?」

依千姫は無言でうなずき、多希流に合図すると多希流の足を踏み台にして男に飛びかかり、あっという間にポケットから一枚の布きれを抜いていた。

途端男はひざを折り座り込んだ。


「わだつみ ゆうすけ」


依千姫から渡された布を見た心は、多希流に指示した。

「多希流、宗ちゃん連れてきて」



しばらくして宗ちゃんと呼ばれる弘原海の里の園長の津久見宗雄が駆けつけてきた。

津久見は座り込んでいる雄介の顔を覗き込み、一気に息を吐くと雄介を抱きかかえた。

一瞬心を見て構えを取った依千姫だったが、心が大丈夫というように首を横に振ると、肩の力を抜いた。


「心、宗ちゃん、どうしたん?」

多希流が年甲斐もなくオイオイと泣いている津久見を見て、不思議そうに聞いた。

「心、あいつ、宗ちゃんには攻撃せんな」

「うん、まるで安心してる赤ちゃん・・かな」

依千姫の問いに心は微笑んで応えた。

「宗ちゃん、そろそろ帰ろうか」

津久見は心を見てうなずき、多希流に尋ねた。

「多希流、車まで持てるか?」

「宗ちゃん、荷物じゃあるまいし、背負っていくよ」

多希流はそうこたえると雄介を背負い、砂に足を取られることなく、車へと歩き出した。

「いつ見ても、多希流は凄いな。彼氏は大変だ・・・」

言いかけた津久見に、依千姫が先に行く多希流を指差し止めた。

「宗ちゃん、あそこで多希流があいつを放り投げてもいいの?」

「そりゃ困る、急ごう」

3人は雄介を背負い先に行く多希流を追った。

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