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リストラされたので底辺ダンジョンでひっそり配信してたら、なぜか世界中にバレた  作者: 凪乃


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20/32

おっさん、戻らない

 超深層の潜行が止まって五日目。


 真凛が管理局に提出した再調査提案書への回答が来た。「検討中」。実質的な保留だ。


 朝、吉田食堂で朝定食を食べながら、園田がスマホの画面を見せてくれた。掲示板だ。


『【速報】C-087超深層探索、管理局の指示で一時停止中』

『崩落リスクって本当か?』

『おっさんが潜れないならどうなるんだ』

『スフィアが裏で動いてるって噂もある。黒沢常務が管理局に圧をかけたとかかけてないとか』

『おっさんは黙って待ってるタイプじゃないだろ。何か考えてるはず』

『いや、おっさんは黙って飯食ってるタイプだぞ。それが良い』


 合ってる。黙って飯を食っている。


 焼き魚を箸でほぐした。今日は鯵の開き。身が薄くて、骨が多い。だが、脂がしっかりある。白飯に乗せて、醤油を一滴垂らして口に入れた。鯵の旨味と醤油の塩気。うまい。


 五階層までの通常配信は続けている。だが、視聴者が求めているのは超深層だ。十一階層の先に何があるのか。あの台座と棚に何が置いてあったのか。


 俺もそれが知りたい。


     *


 昼過ぎ。高梨部長から電話が来た。


 真凛が対応しようとしたが、俺が出た。


「篠塚か」


「お久しぶりです」


「久しぶりだな。……元気か」


「飯がうまいので元気です」


 高梨が短く笑った。乾いた笑い。


「管理局の件、聞いている。超深層の一時停止」


「ええ」


「あれは——管理局が自主的に判断した部分もあるが、うちの黒沢が管理局に情報を入れたのは事実だ」


 真凛が隣で目を閉じた。予想通り、という顔だ。


「崩落リスクのデータは管理局側が独自に出したものだが、データの解釈について黒沢がアドバイザリーの形で関与している。名目上は元管理企業としての技術協力だ」


「つまり、嘘じゃないが、純粋でもない」


「そういうことだ。篠塚、すまない。俺が止められればよかったが、黒沢は常務だ。俺の一存では——」


「分かってます。高梨さんが電話してくれただけで十分です」


「……篠塚。一つだけ言っておく」


「何ですか」


「黒沢は、C-087を取り戻そうとしているのではない。あの男が欲しいのは超深層の管理権だ。C-087の上層には興味がない。超深層の学術的価値と経済的価値を、スフィアの資産として確保したいと考えている」


「経済的価値」


「古代文明の遺構が出れば、研究利権が生まれる。データのライセンス収入。共同研究の特許。黒沢はそこを見ている」


 高梨の声が低かった。情報を渡すのは、この人なりの贖罪なのかもしれない。あるいは、ただの良心だ。どちらでもいい。情報は情報だ。


「ありがとうございます」


「気をつけろ。黒沢は、感情で動く男じゃない」


 電話が切れた。


 真凛が目を開けた。


「聞こえました。篠塚さん、これで黒沢常務の狙いが明確になりました。超深層の管理権。研究利権。経済的価値。法的に取り返せないなら、行政を使って自分たちの関与を既成事実化する」


「対策はあるか」


「管理局との関係を、スフィアより先に固めることです。篠塚さんが管理局にとって唯一の超深層データの供給源であり続ける限り、管理局がスフィアに全面的に乗ることはできません」


「園田のデータが鍵になるな」


「はい。園田さん」


 園田がカウンターの端でスマホを閉じた。電話の内容は聞こえていたようだ。


「十一階層のデータ、追加解析を進めます。管理局に出せる精度まで上げます」


「頼む」


 園田がスマホをポケットにしまおうとして、箸を落とした。拾い上げて、何事もなかったように味噌汁を啜った。データの話をしている時と、手元の扱いの温度差がすごい。


     *


 夕方。アパートに戻った。


 台所のテーブルに、真凛が対応方針のメモを広げた。園田がノートパソコンでデータ解析を進めている。俺はインスタントコーヒーを淹れた。三人分。


 マグカップが三つ並んだ。取っ手が欠けた俺のカップ。白い無地の真凛のカップ。園田が自分で持ってきた、小さい青いカップ。


「真凛」


「はい」


「管理局の回答、あとどのくらいで来ると思う」


「再調査提案を受理すれば、一週間から十日です。受理しなければ、また別のアプローチが必要です」


「待つのは苦手じゃない。でも、止まってる間に黒沢が先に動くのは嫌だな」


「同感です。ですから、待つだけでなく、管理局との直接対話の場を作ります。村瀬さん経由で、局内の深層調査部の担当者に会えないか打診します」


「それ、通るか」


「通します」


 真凛の声が断定だった。こういう時の真凛は、通す。


 コーヒーを啜った。苦い。砂糖は入れない。この苦さがちょうどいい。

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― 新着の感想 ―
小銭惜しんで押し付けたものに価値があるってわかったらしつこくちょっかい出してくる 企業利益のためみたいなことは前に書いてあったけど、個人の資産にちょっかい出してる時点でただの薄汚い盗人にしか見えんな …
とりま追いついたけど、とにかく句点が多すぎてちょっと読みづらい あとおっさんがリストラされた理由がどう考えてもただのコミュ障によるコミュニケーション不足なんだろうなって感じた
こう言う所も含めて全部公開してやれば良いだろう? なんの為の配信だよ
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