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リストラされたので底辺ダンジョンでひっそり配信してたら、なぜか世界中にバレた  作者: 凪乃


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18/43

探索班、回り始める

 管理局との報告体制が動き始めた。真凛が交渉した結果、超深層への事前申請は三営業日に短縮された。月次報告は全データではなく要約のみ。管理局側の担当は村瀬で、やりとりは基本メールと書面。真凛がすべて処理している。


 園田が十一階層の壁面紋様を整理したデータを管理局に提出した。研究チームからの問い合わせは真凛が窓口を一本化して、直接の接触は断っている。データの提供は管理局経由に統一した。


 スフィアからの内容証明には、真凛が法的反論を添えて回答書を送った。ダンジョン管理法第十七条の二は、譲渡後の発見物には適用されない。過去の判例を三件引いて、条文解釈を正面から潰している。黒沢常務からの返事はまだない。


 朝。アパートの台所で、真凛がスプレッドシートを見せてくれた。


 問い合わせの一覧表。赤が三件に減っていた。二週間前は五件だった。黄色も八件に減った。


「赤が減ったな」


「管理局との報告体制ができたことで、メディアの緊急度が落ちました。大学からの依頼も管理局経由に回したので、こちらに直接来る件数が減っています」


「真凛がいなかったら、全部俺のところに来てたのか」


「はい」


「……怖い話だな」


 真凛が少しだけ笑った。口元だけの笑い。


「仕事です」


     *


 配信は週三回のペースで続けていた。月曜、水曜、金曜。超深層への潜行は水曜と金曜。月曜は五階層までの通常探索。


 園田が配信の機材を更新した。ヘルメットカメラの画質が上がった。音声もクリアになった。マイクを別に付けたから、剣を振った時の音が視聴者にも聞こえるようになった。


「園田、この音拾う必要あるか」


「ファンが求めています。切っ先が空気を切る音に、技術水準が出ると」


「そうか」


 掲示板で「おっさんの剣音ASMR」というスレッドが立っていた。見なかったことにした。


 水曜日。十一階層への潜行。事前申請は月曜に出してある。三営業日で許可が降りた。


 十一階層の台座のある空間を通り過ぎて、さらに奥へ進んだ。通路は続いていた。壁の結晶質の素材が、奥に行くほど透明度を増している。紫色の光が強くなって、ヘッドライトなしでも歩ける。


 通路の先に、新しい空間があった。


 狭い。八畳ほどの部屋。壁面すべてに文字が刻まれている。天井にも。床にも。部屋全体が一冊の書物のページのようだった。


 部屋の奥に、棚があった。石造りの棚。三段。棚板の上には何もないが、載っていた痕がある。円形の圧痕が三つ。台座と同じサイズだ。


「園田」


「見えてます。台座と同じ圧痕です。三つ。ここにも何か置いてあった」


「全部持ち去られてるのか」


「そうだと思います。棚板の摩耗パターンから見て、置かれていたのは長期間。取り除かれたのは、紋様が刻まれた後です」


 真凛がスマホで記録を取りながら言った。


「篠塚さん。この遺跡は、誰かが使っていたものを、別の誰かが回収した。つまり——」


「ここに二回以上来た存在がいる」


「はい」


 十一階層の奥には、まだ何かがある。だが今日は時間がない。装備の限界も近い。


「帰るぞ」


 帰り道、五階層を歩きながら考えた。


 台座、棚、圧痕。何が置いてあったのか分からない。だが、この空間に意図があるのは確かだ。誰かがここに何かを保管して、後に回収した。計画的に使われた空間。


 掲示板ではもう「古代文明の遺跡説」が定着している。研究者も同じ見解に傾いている。


 だが、俺が気になるのはもっと単純なことだ。


 持ち去ったやつは、どこに行ったんだ。


     *


 吉田食堂。


 引き戸を開けた。今日の取材組はいなかった。真凛が配信で「食堂への取材はご遠慮ください」と言ってから、めっきり減った。ファン層の自浄効果。真凛が読んだ通りだ。


 焼き鮭。味噌汁。白飯。漬物。


 いつもの定食だ。鮭の塩気が白飯に合う。味噌汁のわかめが柔らかい。


 真凛がスマホから顔を上げずに言った。


「広告収入の振込がありました。先月分で十八万円です。今の視聴者数の伸びが続けば、生活費は配信収入だけでも回ります」


「そうか、もらった収益は二人で半分に分けておいてくれ」


 これまでの二人の頑張りを見ていると、飯代しかおごっていないのは少し罪悪感があった。まだまだ正当な報酬とは言えないが、少しは彼らの足しになってくれるだろう。


「えっいいんですか?」


 園田がこちらを見上げる。


「いいんだよ、真凛頼む」


「わかりました」


 真凛がスマホの画面から一瞬だけ目を上げた。それから、いつもの口調で続けた。


「あとダンジョン素材の買取が月に三万ほど。五階層までの通常探索で出る分です。探索者協会の窓口で換金しています」


「知らなかった」


「園田さんが毎回持ち帰って処理しています」


 園田が焼き鮭の皮を箸でつまみながら頷いた。


「素材は捨てるものだと思っていたので。でも、換金できるなら経費の足しにはなります」


「ありがとうな、園田」


 園田が焼き鮭をほぐす。


「それに篠塚さん、配信のフォロワーが二十万を超えました!」


「そうか」


「リアルタイム視聴の最高は昨日の五万三千ですよ」


「そうか」


「……そこは興味なさそうですね」


「飯がうまいからいいよ」


 園田が苦笑した。真凛は味噌汁を啜りながら、スマホでメールを処理している。食事中でも手は止まらない。


 三人のルーティンが回っている。俺が潜る。園田が記録する。真凛が守る。吉田食堂で飯を食う。


 いつの間にか、そうなっていた。


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― 新着の感想 ―
見なかったことにした…w
吉田食堂の爺さん第4のメンバーじゃんw いや、繋がり的に最初期のメンバーか(笑)
コレだけしかお金にならないの?大手企業とかはsランクのチームとかで潜ってるんでしょ、4〜5人のチームとして、超深層とか言ってるから、トップ層が同じくらい潜ってるとしてどう考えても給料でなく無いかな?社…
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