97話 盛大に…
【【な…何故、目が覚めるんだ!?】】
【【目が覚めるなんて、あり得ないぞ。貴様は、致死量を遥かに超える昏睡薬を摂取しているのだから!!】】
【【一体、どうしてなんだアアアア―!!】】
お婆さんは、アタフタしながら言う。
「フフフフ…」
「お婆さんのとても美味しいそうな料理の匂いにワクワクして、また目が覚めちゃいましたよ。それで…あの大きな鍋の中の料理は、何なんですかね!?」
「とても美味しそうな匂いがしますね!!」
「一体、何の料理ですか~!?」
「教えて下さいよ、お婆さ~ん!!」
「私も、若返りたいで~す!!」
【【なっ―!!】】
五右衛門風呂を指差しながら、私は澄ました顔で言う。
私は…孫娘みたいにお願いするつもりでしたが、勢いが良すぎてお婆さんの事を盛大に煽っていました。
(いけない、いけない、孫娘、孫娘…!!)
「お婆さん、こんな事はもう…(裏声)」
【【クソがアアアアアアアアアア―!!】】
【【もう、そのまま鍋にブチ込んでやるよオオオオ―!!】】
お婆さんは叫びながら―
私に向かって手を構える。
「んっ…」
「う、浮いてるうううう!!」
急に、私の身体がフヨフヨと宙に浮きます。
どうやら、狂気に満ちたお婆さんが、私に念力を発動させたのでしょうか。
そして―
私の身体は、そのまま五右衛門風呂に一直線に飛んで行く!!
「「ええええ―!!」」
「「うそオオオオ~!!」」
「「ギャアアアアアアアアアアアアア―!!」」
あああ、しまった、どうしよう!!
結局、私は五右衛門風呂に入浴してしまうのか―
あっ、そうだ!!
「「バアアアアアアアアア―ン!!」」
「「ぶへええええ―!!」」
私は、咄嗟に―
五右衛門風呂に蓋をする様にバリアを張り、ブチ込まれるのを回避します。ですが、念力の影響で…私の身体はバリアの蓋に張り付いて、身動きが出来ません。うううう~潰れる…
私の数センチ下には、グツグツと緑色に煮えたぎったドロドロの液体がある。それは…鼻が曲がりそうなドブみたいな臭いがします。
(…と言いますか)
「ゼ、ゼニィー!!」
「何でバリアは、お婆さんの攻撃を防いでくれないのー!!」
私の体表に張られた体表バリアは、お婆さんの幽世の魔法 “念力” を防いでくれないのでしょうか。パタパタと飛びながら、傍観しているゼニィーに聞きます。
「ん~とね…プカプカと浮かぶくらいの念力だったら、バリアが安全と判断して、透過しちゃうみたいだね。透過する基準を電話して、変えて貰う事も出来るよ~!!」
「そ、そうなのね…」
(てか、どこに電話するの…?)
(あっ、もしかして請求書に書いてあった電話番号ですか!?)
「今、電話して来ようか~!?」
「う、うん…」
「まぁ、良いけど…」
【何故だ…?】 【何故だ…?】
【何故だ…?】
【何故だ…?】 【何故だ…?】
【【【な…何故、鍋の中に入らないのだアアアア!?】】】
【【【ちくしょオオオオ、最大出力だアアアア―!!】】】
お婆さんは、更に手に力を込める。
すると実験室の中が、グニャリと歪み始めます。
そして、それと同時に…私の身体が軽くなりました。どうやら、体表バリアが危険と判断して…やっと、お婆さんの念力をブロックしてくれた様ですね。
これは-
どれ程の凄まじい圧力が、私の身体にかかっているのでしょうかね。
「ゼニィー!!」
「電話は、また後でで良いわよ」
「うん、承知~!!」
まだ…プカプカ浮かぶくらいの念力の方が、私を止める事が出来たと思いますけど。私は、ゆっくりと身体を起こして、グツグツと煮えたぎる鍋の上に腰をかけます。
「フフフフフフ…」
空間が歪んだ、薄暗い不気味な実験室の―
グツグツと沸騰した大鍋の上で―
-優雅に微笑み、足を組ながら座っている私ー
そんな私の姿は…
この実験室の中で一番、不気味な存在である事は間違い無いでしょう。
【バ、バカな…】
【巨大ゴブリンでさえ、一瞬でペチャンコにしてしまう程の圧力だぞ!!】
【なのに…】 【なのに…】
【なのに…】
【なのに…】 【なのに…】
【【【何故、貴様は平然と澄ました顔でいられるのだアアアア!!】】】
「お婆さん、お婆さん、ちょっと力が足りないんじゃ無いですか!?」
「もっと、頑張って下さ~い!!」
そんな私は…
お婆さんの事を、また盛大に煽っている事に気付きました。
(いけない、いけない…孫娘、孫娘!!)
私は、盛大にお願いする為に…
お婆さんに所にゆっくり、ゆっくりと近付こうとします。
【【ヒィィィィ―】】
【【く、来るなアアアア―!!】】
近付こうとする私に、盛大にビビるお婆さん。
その直後―
私の後ろの方で、何かがひび割れる音がしました。
「メリメリメリメリメリメリ…」




