93話 しばし安息の時間
「じゃあ、おやすみなさ~い」
成り行きに任せて、私はベッドに横になります。
「えっ、寝ちゃうの~!?」
「…」(私)
「まぁ、寝たフリよ、寝たフリ!!」
「本当に、寝る訳じゃないわよ」
「ゼニィー、アンタの言った作戦をそのまま採用するわ」
「お婆さんが、次にどんな行動に出るか…お婆さんの思惑にのったフリをして、お婆さんの行動を観察しましょう。お婆さんが、私に毒を盛った目的も探りたいからね」
枕を抱えながら、寝言の様に言う私。
「ふ~ん、そうなんだ…」
「でも、本当はベッドに寝たいだけなんじゃないの~?」
「…」(私)
「それで、ゼニィー!!」
「アンタには、やって貰いたい事があるわ。お婆さんの行動の監視と…ついでに、この家の中に怪しい場所や物がないか、見てくれるかしら?」
「やっぱりですか~!!」
そう―
普通の人からは、姿が見えないゼニィーならば、お婆さんの近くで行動を監視したり、お婆さんに気にせず家の中を探索する事が出来るのです。
「分かったよ…」
「じゃあ、行ってくるよ~!!」
そう言って、ゼニィーは寝室から出ていきます。
手を振り、見送る私。
じゃあ、頑張ってね。
ゼニィーさん…
「ファアアア~ア…」
(私も頑張らないと、本当に寝ちゃいそうかも…)
~30分後~
「ガチャン―!!」
「ギィィィィィィィィィィ―」
「「「ハっ―!!」」」
突然-
寝室のドアが、開く音にビックリする私。
「お疲れ~!!」
「…なんだ、ゼニィーか」
ゼニィーは、一旦寝室に戻って来ました。
ウトウトしていた私は、ビックリとして起き上がります。
それで、ゼニィーから…何か報告がある様ですね。
「家の中は、大体探したけどね」
「怪しい場所とか物とかは、特に無かったよ~!!」
「ふ~ん、そうなんだ…」
「この家自体も、そんなに大きくないからね~!!」
「一応、隅々まで探したつもりで~す!!」
「はぁ、なるほど…」
「…」(私)
ゼニィーは、頑張って家の中を調べてくれたみたいですが…
何も怪しい場所や物が見つからないとは…私の料理に、混入させたネムリ茸のエキスくらいは、置いてあると思ったのですけど。
そして、肝心のお婆さんの方ですが…
「お婆さんは、居間でずっと本を読んでいるよ~!!」
「そうなのね…」
「…」(私)
「因みに、何の本を読んでいるの…?」
「只の料理の本だよ~!!」
「ソファーに座って、それはもう…くつろぎながら読んでいるよー!!」
「あっ、そうですか…」
お婆さんは居間のソファーでくつろぎながら、料理の本を読んでいるとの事です。なんか、もう普通のお婆ちゃんね…
「ファアアア~ア…」
(ウトウトウトウト…)
豪華そうなベッドの上で、大きな枕を抱えながら、染々と感じる私。
そして、私は眠そうに目をゴシゴシと擦る。その姿は、まるで寝起きのお姫様ですね。まぁ…中身は、30過ぎのオッサン間近の青年ですが。
「ファアアア~ア…」
「じゃあ、また行ってくるね~!!」
「うん、宜しくね…ゼニィー」
ゼニィーも、眠そうにアクビをしながら、またお婆さんの監視に戻ります。そして、私もまた眠そうに、ゼニィーを見送ります。
最早…
これは、お婆さんとの闘いでは無く、眠さとの闘いになっていますね。
「さてと…」
「カチっ」
私も、またベッドに横になり寝たフリを再開します。
部屋の明かりを落とし、静かに横になる私。
「…」(私)
「「「ドオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」
「「「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…」」」
窓の外は、相変わらずの雷雨が降り続いている。
窓から頻繁に差し込む雷光は、暗い寝室を不気味に照らします。
吹き荒れる強風は、窓を強く叩き-
まるで、私に『ここから、早く逃げろ!!』と言っている感じがする。
ですが、雷雨さん。
私には、バリアがあるので特に心配はいらないのです!!
「う~ん…」
私はベッドの上で、気持ち良く伸びをします。
夜は-
まだまだ始まったばかりです。
さあ、寝たフリ、寝たフリ…
○
「クンクン…」
「クンクンクン…」
「クンクンクンクン…」
(んっ、何だ、この臭いは…!?)
ツーンとした臭いが、私の鼻に突き刺さる。
「「ハっ―!!」」
私は、そこでハっと目を覚ます!!
ウトウトしていた私は、いつの間にか寝てしまっていたみたいですね…
今は一体、何時でしょうか。私は、腕時計を見ると夜中の2時を過ぎていました。
これは結構、寝てしまいましたね(汗)
―と言いますか、このツーンとした臭いは一体!?
「「「!!」」」
辺りを見渡した私は、驚愕する。
(いや…まだ、ここは夢の中なのでしょうか!?)
目を覚ますと―
私は、緑色の煙に包まれていた。




