92話 黒ずむ顔
「「「「「ピシャアアアアアアアアア―ン!!」」」」」
「「「ドオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」
「あ~、美味しかった!!」
雷光が差し込む部屋で、ゼニィーは満足げに呟く。
窓の外は、どしゃ降りです。屋根を叩きつける強雨は、振動となって私の身体に伝わってきます。
「「「「「ピシヤアアアアアアアアア―ン!!」」」」」
「アンタ…」
「本当は、お婆さんの料理を食べたかっただけなんじゃないの?」
私は、喜ぶゼニィーに質問する。
「んっ、そんな事は無いよ!!」
「本当にそうなの?」
「うん、そうだよ~!!」
「じゃあ…早速、次の行動に移るよ~!!」
(ゴクリ―!!)
ゼニィーの真剣な言葉に、息をのむ私。
「じゃあ、食べた事だし逃げますか~!!」
「ギロギロ…!!」(私の視線)
「「冗談だよ、冗談~(汗)!!」」
「ハァ…」(私)
まぁ、ですが…
ゼニィーの機転と私のグダクダの演技のお陰で、ここまで来れたのですけどね。もし、私があそこで『何で、毒を入れたんですか!?』と直球でお婆さんに言っていたら…この場所には多分、来れなかったでしょう。
そう思いながら、私は今いる部屋を見渡します。
そして―
「「あああ~、疲れたアアアア!!」」
「「それええええー!!」」
「「バサアアアアアアアアアアアアアアア―ン!!」」
私は、フカフカのベッドにダイブします!!
そのベッドの弾力は申し分なく、ダイブした私をボヨン、ボヨンと弾き返します。そして…ベッドにうつ伏せに着地した私は、その匂いを存分に嗅ぎます。
(スンスンスンスン…)
「ん~、柔軟剤のとても良い匂い…」
私とゼニィーは、お婆さんの毒入り料理を平らげた後ー
2階にあります寝室へと案内されていました。
その寝室の真ん中には、大きなベッドが置かれています。
私1人で寝るには、大きすぎるベッドですね。
そして、大きさも申し分ないですが、ベッドには豪華な装飾が施されていまして、それはまるで…お姫様の気分が味わえる様な作りのベッドでした。
「あ~結局、ネムリ茸を食べなくてもさぁ…」
「このベッドで、グッスリと眠っちゃいそうね…」
私は、満足げに呟く。
こんな…まともな所で寝るのは、パチ村以来でしょうか。
しかし、パチ村の空き家のベッドとは、やはり格が違います。
なにより…私は今日、ゴツゴツした川原で寝るつもりでしたから、その違いは最早、涙が出る程の天と地の差でありました。
「う~ん、最高…」
(ゴロゴロゴロゴロゴロ…)
私は、今度はベッドの上でゴロゴロとします。
そんな私をゼニィーは、呆れた顔で見ています。
「寝てる暇なんて、無いでしょ~!!」
「うう、だって…」
現実に戻りたくない私は、嘆きます。
「ハァ~…」
「全く、下にはイブを殺そうとした殺人鬼がいるかもしれないのに、呑気なもんだね~!!」
ため息混じりで言う、ゼニィー。
「…」(私)
そう言われてみれば、そうですね…
私は、ふと考えます。
普通に考えれば…
下に私を毒殺しようとした殺人鬼がいるのに、私はハシャぎ回る子供の様に、ベッドの上で遊んでいました。まぁ、こんなに余裕なのも…ゼニィーのバリアが、あるからですけどね。
もし、バリアが無かったら今頃はー
恐怖で腰を抜かして、地面を這いながらでも森の中を逃げていた事でしょう。ヒィヒィと言いながら。いや…その前に、もう毒で殺されていますね。
そもそもー
見ず知らずのお婆さんに、ホイホイと付いて行ったのも『バリアがあるから、何かあっても大丈夫!!』という、心の余裕があったからでしょうか。
最近の私は、危機意識が低下していますね。
まぁ、バリアがあるので、そこまで気にする事は無いでしょうか…
私は…
ベッドに仰向けになりながら、天井をボーと眺める。
「…」(私)
「ゼニィー、そういえば…」
「あの時、どうやって大きな音を出したの!?」
私は、あの時…お婆さんに、席を外させた大きな音について聞きます。
「んっ、あれはね~!!」
「壁に掛かっていた額縁の紐を、噛って切りました~!!」
「そ、そうなんだ…」
どうやら、あの音は額縁が床に落ちた音だったみたいです。
そういえば、廊下には沢山の絵画が飾られていましたね。
「一番、大きな額縁を落としました~!!」
「へぇ…」
「一番大きな額縁って、もしかして…」
「あの2人の男女の絵が書いてあったヤツの事!?」
「うん、そうだよ~!!」
「ふ~ん…」
私は、あの絵の事が気になっていました。その絵は…正装をした男女が真っ正面にこちらを向いて、描かれていましたね。そして2人の指には、指輪がはめられていました。
地球的に言うと、結婚写真みたいな感じですかね。
まぁ、分かりませんけど。しかし、残念ながら…その2人の幸せそうな顔は、薄暗い廊下なので暗くて、見る事は出来ませんでした。
あの絵の女性は―
昔のお婆さんなのでしょうか。
お婆さんも、指輪をしていましたからね。
だけど、その指輪は真っ黒でしたが。
本当は…
食事の和やかな席で『あの絵の人って、お婆さんなんですか?』と聞こうと思っていました。ですが、こんな事になってしまったので聞けずじまいです。お婆さんは、とても優しいそうな顔をしていたので、とても悲しいです。
そして―
「でも、あの絵、気味が悪かったよね~!!」
「えっ、何でゼニィー!?」
急に、変な事を言うゼニィー。
(コラっ、ゼニィー!!)
(人の結婚写真?を気味が悪いと言ったら、ダメじゃ…)
「だって、顔の部分が真っ黒だったからね~!!」
「あっ、それは気味が悪いね!!」
「「「「「ピシャアアアアアアアアア―ン!!」」」」」
「…」(私)
そして、あのお婆さん―
こんなか弱い少女に毒を盛るなんて、許せませんね!!
「ゼニィー!!」
「あのお婆さんを成り行きに任せて、懲らしめるわよ!!」
「はいよ~!!」
「それじゃあ、参りますか!!」(2人)
私とゼニィーは、ハモります。
ベッドにゴロゴロとしながら…




