88話 グツグツ…ワクワク♪
「さぁ、ここが私の家だよ」
「へぇ…」
暗い森の中に、家の灯りがユラユラと揺れています。
その森の中に、ポツンとある家は2階建てで…
外壁は沢山の蔦で覆われていました。
毛細血管の様に広がる蔦の隙間からは、焦げ茶色のレンガの壁が見える。
屋根にある煙突からは、呼吸をする様にモクモクと煙が出ています。
(フムフムフム…)
ん~、家と植物が良い感じに同化していますね。
それは…
この家が建ってから、それなりの長い時間が経過している事が伺えます。私的には…この家には魔女が住んでいて、そこで何か怪しい薬を作っているのではないかとイメージをしてしまいますね。
まるで、おとぎ話の絵本に入ったかの様ですね!!
私は、そんな家に見蕩れていますと…
「ポツポツポツポツポツポツ…」
(あっ、雨…?)
「ほら、雨が降ってきたよ」
「早くお入りなさいよ…」
お婆さんは、ドアを開けて私を手招きしています。
森を歩いている時は、暗くて分からなかったですが、家の灯りに照らされたお婆さんの手はとても細く、青白くて…生きている人間とは、程遠い血の気の無さでした。
お婆さんは、一体何歳なのでしょうか―
「…」(私)
「じゃあ、お邪魔しま~す!!」
私は、そんな一抹の考え事をしながら、家の中に入ります。
「ギィィィィィィィィ―」
「ガチャン―」
「「ガチャガチャガチャガチャっ!!」」
「「!!」」(私)
お婆さんは…
ドアに閉めると私の目の前で堂々と、大きな南京錠でガチャガチャとドアを施錠していました。きっと…こんな森の中で暮らしていると色々と物騒ですから、防犯はしっかりとしているのでしょうかね。
「おや、ビックリさせて…すまないねぇ」
「防犯には結構、気を付けているんだよ」
「そうなんですね」
「…と言うのもねぇ」
「この森には、行方不明者の亡霊がウヨウヨと彷徨っているからね。彼らが、この家の中に入って来ない様に…施錠は、しっかりとしているんだよ」
「は、はぁ…」
否定も肯定もせず、曖昧な感じで答える私。
本気で言っているのか、冗談で言っているのか分からない…
「その点…お嬢ちゃんは、大丈夫だね」
「しっかり、地に足がついているからね…」
「…」(私)
そんなお婆さんは、私の足元を見ながら言う。
いや、最初からお婆さんの視線は下の方を向いていました。
お婆さんは、腰も曲がっていますので…
「ギシィギシィギシィ―」
玄関から続く、薄暗い廊下を歩く私とお婆さん。
その廊下の壁には、大小様々な絵画が飾られていました。
お婆さんの趣味でしょうかね。
「でも、この森ってさ…」
「人は、住んでいなかったんじゃないかな~!?」
「空き家が、1軒あっただけだったとかじゃなかったの~!?」
ゼニィーは、言う。
「さぁ…?」
「普通に、見落としていただけなんじゃないの!?」
お婆さんの後ろで、私は堂々とゼニィーと話す。
お婆さんは少し耳が遠い様ですので、私とゼニィーの会話は聞こえてないみたいでした。
まぁ、ゼニィーの声は、元々聞こえませんけどね。
「ーさぁ、ここが居間だよ!!」
「おおお…」
私は、お婆さんに居間へと案内されます。
そこには、お洒落なテーブルや椅子やソファーなどなど…
お洒落な家具が置かれていました。とても、綺麗な部屋ですね!!
家の外観を見た時は、なんか魔女が住んでそうな…
部屋の中にも怪しい研究器具や薬品などが置いてあるイメージでしたが、そんな物はどこにも置いてありません。お洒落な家具達が、小さなシャンデリアの灯りに照らされて、ピカピカと輝いていました。
まるで、高級ホテルのロビーですね。
(まぁ、高級ホテルに行った事は、ありませんけどね!!)
何となく、そう感じていました。
「ふ~ん…」
私は、また見蕩れていますと―
「それじゃあ…」
「今から料理を用意するから、少し待っておくれよ」
お婆さんは、言う。
「…」(私)
「キャロットお婆さん!!」
「私も、何か手伝いますよ!!」
待っているだけですと、手持ち無沙汰を感じた私です。
しかし、料理と言いますと…地球では、カップ麺しか作った事が無い私でしたが、謎の勢いで自然とそう言ってしまった。
「フフフフ、有難うね」
「でも、お手伝いはいらないわよ。ホレ―!!」
「!!」(私)
「ガチャガチャガチャガチャ―」(調理器具達)
お婆さんが、そう掛け声を出すと―
キッチンに置いてある調理器具が、一斉に動き始めます。
冷蔵庫からフヨフヨと食材が出てきて、まな板の上に置かれると、包丁がトントンとリズム良く刻む。刻まれた食材は鍋の上で…本格中華を作っているかの様に、華麗に宙を舞っています!!
まるで、沢山の透明人間が料理を作っているみたいですね。
そして、お婆さんは料理をしているよりは…音楽の指揮者の様に、指をプイプイと動かして調理器具達を操っています。
これも、魔法なのでしょうか…
「へぇ、凄い(キラキラ)」
私がキラキラとした眼差しで、滑らかな調理器具達の動きに見蕩れていますと…
お婆さんは、提案します。
「お手伝いは大丈夫だから、それより…お風呂に入りなさいよ。身体を綺麗にして貰ってから、材料にする…じゃなくて、食事にする方が美味しく食べられるわよ」
「…」(私)
確かに、私は…
ここ1週間くらいお風呂に入っていませんでした。
最後にお風呂に入ったのは、パチ村でしたからね。
私の着ている服は、汚れにくい魔法が付与されている服ですが、流石に…ここまでお風呂に入っていませんと、汚れや臭いも気になる所です。何より…お婆さんの言う通り、綺麗サッパリしてから食事をする方が気持ち良く食べられますね。
「お婆さん、有難うございます!!」
「じゃあ、お風呂に入って来ますね!!」
私は、お婆さんの厚意に甘える事にします。
その…お婆さんと私のやりとりは、まるで…
田舎のお婆ちゃんの家に遊びに来た、孫娘の姿ですね。
「フフフフ…」
私的には、そう感じていました。
子供の頃のそんな記憶を思い浮かべながら―
そして、微笑みを浮かべながら、キャロットお婆さんの優しさと温もりを染々と感じる私…
「…」(私)
「グツグツグツグツ…」
「グツグツグツグツ…」
キッチンの鍋はー
グツグツと異様な程の大きな音を立てながら沸騰している。
あの鍋の中には、一体どんな料理が入っているでしょうかね。
きっと、美味しい料理があるのでしょう!!
私は、そんな期待を胸にお風呂場に向かいます。
(ワクワクワクワク♪)
「グツグツグツグツ…」
(ワクワクワクワク♪)
「グツグツグツグツ…」




