87話 馬の好物
「「ザアアアアアアアアアアアア―!!」」
私の時間は一瞬、止まっていました。
私の目の前には…
黒いローブを着ているお婆さんがいた。
その漆黒の黒いローブは、とても良く闇に溶け込んでいます。
私は…闇夜にシワクチャの顔が現れた時は一瞬、顔だけがフヨフヨと浮いているのかと思ってしまいました。
ハァ、少しビックリしましたね。
「どうしたんだい…」
「こんな所だと、寝にくいだろ…?」
お婆さんは、川原で寝にくそうにしている私に言う。
「良かったら、今日は私の家に泊まりなさいよ」
「えっ、良いんですか?」
「あ、有難うございます!!」
私は、即答して言います。
そして、お婆さんはニッコリとして言う。
「フフフフ…」
「じゃあ、私についてきなさい」
「ヤッタアアアアー!!」
「有難うございます!!」
私は、お婆さんの後をついていく事に。
◯
「「ザアアアアアアアアアアアアアアア―!!」」
「リィィィィィィンー」 「リィィィィィィンー」
「リィィィィィィンー」 「リィィィィィィンー」
お婆さんは…
川原から再び森の中に入ると、慣れた様子で闇の中を進んで行きます。
私もランタンを灯りを頼りに、足元に気を付けながら進む。
でないと…木の根っこに躓いて、すぐに転んでしまいますからね。
森の中からは
風に揺れて木々の葉や枝が擦れる音と、虫の声が絶え間なく聞こえる。
そして、気付けば―
森の上の方では、ゴロゴロと雷鳴も聞こえます。
「これから、ひと雨きそうだねぇ…」
「あのまま…あそこに寝ていたら、増水した川に流されてしまう可能性があったわよ」
お婆さんは、言う。
「そ、そうなんですか!!」
ならば、お婆さんは命の恩人ですね。
とても、助かります。あっ、そうです!!
「あのお婆さん、名前は…?」
私は、お婆さんに名前を聞きます。
ですが…
「んっ…ごめんね、上手く聞き取れなかったわ」
「ワタシャ、耳が少し遠くてね」
「もっと、大きな声で言ってくれるかい…」
「…」(私)
「そ、そうなんですね。失礼しました」
「お婆さんの名前は、なんて言うのですか?」
私は少し声量をあげて、改めて言います。
「あ~そうかい、そうかい…」
「ワタシャの名前かい…」
「ワタシャねぇ…」
「キャロットと言う」
「へぇ…」
「キャロットさんですか…」
(んっ、キャロット…?)
キャロットと言えば、何か思い当たる様な気がしますけど。
ん~、何か思い出しそう。でも、思い出せない…
―まだだ―
「!!」(私)
突然、頭の中で声が聞こえる。
一体…まだとは、何の事でしょうか…?
あ~、と言いますか…
「何か、お馬さんが好きそう名前ね…」
私は、ゼニィーに言うが…
(シーン…)
ゼニィーからの返答は無い。
ゼニィーは、私のフードの中で寝ていました。
「私の名前は、イブと言います」
「宜しくお願いします!!」
それで今度は、私がお婆さんに名乗ります。
ですが…
(シーン…)
お婆さんは、無言であった。
耳が遠くて、聞こえてないのでしょうか。
「「お婆さん!!」」
「「私の名前はイブよ、イブ!!」
私は、お婆さんの耳元で大きく言う。
「そうかい、そうかい…」
「イブヨちゃんね、宜しくねぇ」
「…」(私)
何か、とても懐かしい名前が聞こえます。
いや、違いますよ!!
「「お婆さん!!」」
「「私の名前は…イブヨじゃなくてイブよ、イブ!!」」
「そうかい、そうかい…」
「分かったよ、宜しくねぇ…」
「…」(私)
本当に、お婆さんは分かっているのでしょうか?
しかし…こうして『イブ』という名前を連呼していますと、なんか変な感じがしますね。だって『イブ』という名前は、あくまでも借りた名前であって、私の本当の名前は地球の…
「それより、夕食は食べたのかい!?」
「もし、良かったらご馳走するよ」
お婆さんは、話題を切り替えて言う。
「「えっ、良いんですか!?」」
「「是非、食べたいです!!」」
私は…
まともな夕食を食べていなかったので、これは嬉しい限りです!!
お婆さんは、あんな所で野宿をする私を心配して、家に泊めてくれるのでしょう。更に夕食付きで…
本当に感謝しか、ありません!!
私は…お婆さんの温かい気持ちを染々と感じていました。
そして―
「さぁ、着いたよ」
しばらくして…
私達は、森の中にある1軒の家に辿り着いていた。




