78話 揺り籠に揺られて(後編)
「ワイワイワイ…」 「ワイワイワイ…」
「ワイワイワイ…」 「ワイワイワイ…」
「ガヤガヤガヤ…」 「ガヤガヤガヤ…」
「ガヤガヤガヤ…」 「ガヤガヤガヤ…」
―遠くから、沢山の人達の声が聞こえる。
そして次第に、その声が近付いてくる。
【イブざん…だずげて…アアア】
「「「!!」」」(私)
((あれっ―!!))
気付くと私は、また集会所の席に座っていた。
「では、依頼の説明は以上になります」
「明日は宜しくお願いしますね、イブさん」
モッチ村長は、言う。
あ~そうそう、私は明日のスライム討伐の説明を聞いていた所でしたね。というか…カマンヴェールさんとカリーナさんの姿が見えません。
2人とも、トイレでしょうかね…?
「でも、凄いですね!!」
「村人達で、巨大スライムを討伐するなんて!!」
私は、意気揚々に言う―!!
そう巨大スライムは、騎士団での討伐が推奨されるC2に分類される危険な害獣ですからね。近付くと貫通力が高い水弾を放ってきます。それを村人達(5人いますが、四天王)で、討伐するとは中々…凄い事なのです。
「…」(モッチ村長)
しかし…モッチ村長は、しばらく黙り込んでいた。
「本当は、ですね…」
「害獣討伐のプロである騎士団に依頼するのが一番良いのですけど、私達にはそれが出来ないのです。四天王と言っても、実力は素人に毛が生えた程度ですからね。騎士と比べれば…その実力は、大きく劣ります」
「…巨大スライムは、騎士団での討伐が推奨されるC2に分類される危険な害獣ですからね。それを私達…村人で倒すのは、とても危険で命懸けの事なのです」
そして、肩を落としながら言う。
「えっ、そうなんですか…」
「な、何でお願い出来ないんですか…!?」
「この村の近くには、騎士団はありません」
「もし、依頼するとなりますと…高額な出張料を払う必要があります。村にはロクな収入も無いので、その代金を支払うのが、とても大変なのです。なので…害獣が出現したら、出来る限り自分達で討伐しているのですよ…」
「…」(私)
「「も、もし、あの時、あの場所に…」」
「「騎士がいたならば、私の娘は死んでいなかったかもしれない…」」
モッチ村長は、拳を強く握りながら言う。
集会所の中は、身を切り裂く様な重く暗い雰囲気に包まれる。
「…」(モッチ村長)
「ハァ、取り乱してしまって、申し訳ありません」
「そして…何故か知りませんが、以前より更にその出張料が値上がりしていまして、今日一応…騎士団に電話して聞いてみたら、その額に驚きました。最早、高過ぎて払える額では無いと」
「もとより…この王国はこんな辺境の地にある村なんて、どうなろうが気にしていないのです」
モッチ村長は、頭を抱えながら言う。
「ふ~ん、そんなんですね…」
「…」(思考)
この世界、電話があったんだ…いやいや、モッチ村長にはカリーナさんの他にもう1人娘さんがいたんですね。何があったのかは分かりませんが、可哀想に…
ん~ですが、私の朧気な記憶によると、少なくとも『前世の私』が騎士だった頃は、出張料なんてお金は取らなかったと思いますけどね。害獣が出たと知らせを受ければ、すぐに討伐に向かって倒していましたけどね。
もとより…騎士は、この王国の人々を守る事が使命ですからね!!
今の騎士は、一体何をやっているのでしょうか。
(プンプンプンプンっ!!)
「「「ガタアアアアアア~ン!!」」」
私は、沸き上がる怒りと共に椅子から立ち上がる。
そして―
「「このパチ村の事は、お任せ下さい!!」」
「「私は(元)騎士ですから―」」
私は、肩を落として頭を抱えるモッチ村長に言います。
「イ、イブさん…」
―もう、心配は要らないですよ―
私はピースサインをしながら、キメ顔で応えた。
【イブざん…だずげて…アアア】
「!!」(私)
んっ…後ろから、誰かの声が聞こえる?
潰れた女性みたいな声ですが…
その声はどこか、カリーナさんの声と似ていました。
私は、後ろを振り向いた!!
しかし、そこには誰もいません―
【イブざん…だずげて…アアア】
「…」(私)
どうやら丁度…私の真下から、声が聞こえるんですかね。
私は、下を見てみますと―
○
「「「ガタアアアアアア~ン!!」」」
「「ウギャアアアアア―!!」」
「ちょっとイブ、大丈夫~!?」
「ふぇっ、あれ…!?」
気付くと私は…ロッキングチェアからずり落ちていた。私の落ちた衝撃で、天井から吊り下げられた電球はユラユラと揺れて、埃がパラパラと舞い降りてくる。
(キョロキョロキョロ…)
「…」(私)
何だ、夢を見ていたのか―
私は…ロッキングチェアが心地良さ過ぎて、うたた寝をしていたみたいです。辺りをキョロキョロと見渡しながら、そう思う私。
そこには、相変わらずの殺風景な部屋の景色が広がっています。
「話しの途中で、寝ないでよね~!!」
「そんな人、初めて見たよ~!!」
「あ~ごめん、ごめん」
そうそう…
私は今、ゼニィーと明日のスライム討伐の事を話している途中でした。
「ファアアア~ア…」
「明日は、今日よりも沢山のスライムを討伐する事になるかもしれないから、疲れるわね~!!」
「あっ、そうだ…!!」
「ゼニィー、アンタ…今からスライムを倒してきてよ」
夜中の内にスライムを倒して、数を減らしてしまえば、明日が楽ですよね。私は、閃いた感じでゼニィーに言う。
「えっ、ブラックな主ですね…」
ゼニィーは、言う。
「冗談よ…」
(でも、小銭を探すくらいならば、スライムを倒して来なさいよね!!)
(プンプンプンプンっ!!)
「果ての魔法で倒しちゃえば!?」
「それなら、簡単に倒せるでしょ~!!」
そう思う私に、ゼニィーが提案する。
「いや、スライム相手にオーバーキルすぎるわよ。下手をすれば、辺り一帯が吹き飛んでクレーターが出来てしまうかも(多分)」
「それに、反動も大きいからね…」
私は、ゼニィーの提案をすぐに却下した。
「まぁ、バリアがあるから、それで何とかなるでしょう」
「うん、そうだね~!!」
「それに相手は、只のスライムだからね!!」(私達)
私とゼニィーは、ハモります。
そして、明日の8時に村の広場に集合との事です。私的には…明日、時間通りに起きれるかどうかの方が一番の心配事でした。遅刻したら、大変ですからね。部屋には、目覚まし時計もあるので…しっかりと、セットしときましょう!!
(明日は、絶対に寝坊しないぞ~!!)
「…というか、どうしたのコレ~!?」
「んっ!?」
話題は変わり、ゼニィーは小さな机に置いてあるものに興味を示す。
その机の上に置いてあったものは…食材でした。パンとベーコンと卵とリンゴが数個ずつ、バスケットに入って置いてあります。
そうそう…私は、村人達から『今日の夕食に、是非どうぞ!!』との事で、食材を少し貰ったのでした。特にパンですが、パーシャの町では食べられませんでしたので、嬉しい限りですね。
「じゃあ、早速食べますか~!!」
ゼニィーは、言いますが…
「いや、その前にやる事があるわ!!」
「ちょっと、待っていてくれるかしら…?」
私は、先走るゼニィーに言う。
それは、久しぶりの…




