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Day Seven ep.1

私は目を覚ました、ハロルドはまだ眠っている


彼の左腕にすり寄ったまま、その肩に顔を寄せる


その温もりをもう一度だけたしかめた


窓の向こうが、薄く明るくなり始めている


夜中にも、何度か熱を確かめていた


私はそっと手を伸ばし、もう一度、彼の額に触れた


昨日みたいに熱くはない、もうすっかり熱は下がっていた


良かった、下がってる


ハロルドが小さく身じろぎをした


私は慌てて手を引っ込める


でも、彼は目を覚まさなかった


しばらく待ってから、毛布を持ち上げた


冷たい空気が足へ触れる


私はベッドの端へ座り、ゆっくりと立ち上がった


大丈夫、ハロルドが治してくれたから


私は寝室を出ようとして一度だけハロルドを振り返ってみる


熱は下がっちゃった……もんね……


椅子の背に掛けてあった服を手に取る


ハロルドが用意してくれた服だ


寝間着を脱ぎ、袖を通す


脱いだ寝間着は、きちんと畳んで椅子へ置いた


本当は、洗ってから返したかった


でも、洗濯を始めたら起こしてしまうかもしれない


私は店へ出て、作業机の前に立った


ここへ寝かされていた時のことを思い出した


寒くて、喉が渇いて、もう何も考えたくなかった


目を開けるたびに、ハロルドがいて


いつの間にか、目を覚ます度に彼を探すようになっていた


私は机の端に置かれた紙を一枚取った


ペンも借りる


何度か、書き始めようとして手が止まった


『ハロルドへ』


そこまで書いて、紙を見つめる


文字を書くのはあまり得意ではない


でも、どうしてもハロルドに手紙を残したかった


昨夜の声が、耳に残っていた


『俺がエルザにそうしてほしいんだ』


私が全てを忘れて、別の場所で生きることをハロルドは望んでいる


だったら私は……そうしないと


これ以上ここにいたら、私はきっとおかしくなる


抱きしめてもらえるまで、何度でもハロルドにすがってしまう


初めて……好きになった人


私はハロルドが好き……絶対に


それだけは……どうしても譲れない、変えられない


でも……ハロルドを……困らせたくない


『病気を治してくれて、ありがとう』

『仕事のことも教えてくれて、ありがとう』


ゆっくり、一文字ずつ書く


涙が紙へ落ちそうになって、私は顔を上げた


泣いたら、紙に跡が残る、ハロルドが目を覚ました時に分かってしまう


そしたら、ハロルドは私を探しちゃう


もっと休まないといけないのに


『もう大丈夫です』


私は、その一文を長く見つめた


まずは充電士の仕事をさがそう


前の仕事へ戻らなくても生きていけるはず


最後の手紙なんだから、嘘はつきたくない


私はペンを握り直した


『お世話になりました』

『ちゃんと食べて、ちゃんと休んでください』

『ハロルドの言う通りに生きてみます』

『私を探すのはやめてください』 

『どうかお元気で』


「愛してます……」


これは書かずに言葉にした


最後に自分の名前を書く


『エルザ』 


この名前で呼んでもらえて、嬉しかった


私は紙を畳まず、机の上へ置いた


飛ばないよう、小さな部品の箱で端を押さえる


それから、入口のそばに畳んで置いてあった灰色の服を取った


最初に、私が着ていた服だ


ハロルドは捨てずに置いてくれていた


乾いてはいるけれど、裾には泥が固まっている


私はそれを、借りた服の上から羽織った


外は寒い、こんな服でもないよりはましだ


フードをかぶろうとして、手を止めた


最後に見るこの家が暗くなってしまう


私は玄関扉の前で振り返った


作業机も、椅子も、壁に並ぶ魔道具も


掃除をしながら、少しずつ場所を覚えたものばかりだった


奥にはキッチンがある


その向こうの寝室で、ハロルドが眠っている


おはようって、言いたかった


今日は何を食べたいか、聞きたかった


「一度くらい、私が作った料理を食べてもらいたかったな……」


私は両手を前へ重ねた


深く、頭を下げる


「ありがとうございました」


小さな声で言って、しばらくそのままでいた


それから扉の取っ手を握り、そっと引いた


外に出ると、朝の冷たい空気が、顔に当たる


すると目の前に、人影が走り込んできた


「エルザ!」


「ひゃっ」


私は思わず、閉じたばかりの扉へ背中を付けた


それはリサだった、肩で息をして、両手を膝についている


「リサ……?」


「お、おはよう!」


彼女は顔を上げた、頬が赤い、息が白かった


「なんで、こんな時間に……」


リサは片手を上げた


「ちょっと、待って」


何度か大きく息をしてから、急に背筋を伸ばす


そして、両腕を左右へ大きく広げた


まるで、私の行く道を塞ぐようだった


「どこへ行く気?」



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