Day Six ep.2
目を覚ますと、エルザはまだ横にいた
窓から差す光が、朝とは違う角度になっている、昼過ぎ頃だろうか
「起きた?」
「ああ、少し楽になった気がするよ」
彼女は俺の額へ触れた
「まだ熱いね」
「エルザ、食事は?」
「あとで食べる」
俺は身体を起こそうとしたが、エルザがすぐに肩を押さえる
「どこへ行くつもりなの?」
「君に、何か……」
「私が用意するから、ハロルドは、ここにいて」
「でも……」
「私、もうそれくらいならできるから」
俺はエルザの顔を見た
彼女は怒っているように見えた、だが、目には不安があった
俺を心配してくれている
「お願いだから、今は私にやらせて」
俺は枕へ頭を戻した
「分かった」
「ハロルドも食べられる? つらいようならスープだけでも飲んだら?」
「ああ、それじゃスープを少しだけ」
エルザは頷くとキッチンへ行き、しばらくして盆を持って戻ってくる
温めたポトフだった
俺は彼女の手を借りて起きてスプーンをとり、汁を少し飲んだ
エルザも椅子へ座り、自分のぶんを食べる
俺はそれを見て、少し安心した
「ハロルドのことだから、目の前で食べて見せないと心配になるでしょ?」
エルザが少しだけむすっとしてそう言った
俺はスプーンを止めて、からかうように笑う
「よくご存じで」
「私も同じですからね。 元気になるまで全部私に見せて、トイレも」
「いや……トイレはさすがに……」
「私のは見たじゃん」
俺は返事ができなかった
エルザはそれ以上言わず、また野菜を口へ運んだ
食べ終わると、俺は再び横になった
汗で服が湿っている
それにエルザが気づいて、着替えを探してくれた
「少し、身体を拭いてもいい?」
俺は彼女を見た
「いや、それくらいは自分で……」
「答えは『はい』よ、じたばたしないの」
「は、はい……悪いね」
「いいって」
彼女は湯を用意し、タオルを温めて持ってきた
俺が上着を脱ぐと、すぐに首筋に温かいタオルが当たった
エルザが優しく汗を拭ってくれる
「痛くない?」
「大丈夫だよ、ただの風邪だから」
エルザは頷いた
俺の右胸にある傷も、そっと拭いた
その手つきは、俺が彼女にしていたのとよく似ていた
「上手だね」
「ハロルドが、やってくれたから、覚えてたの」
エルザはタオルをすすいだ
俺は目を閉じる、誰かに身体を拭いてもらうのは、いつ以来だろう
湯の温かさも、布が肌に触れる感触も、自分の手でするのとは違った
「さっぱりした?」
「答えは『はい』だよ」
エルザは小さく笑った
着替えを手伝ってもらい、俺はまた眠った
眠っては目を覚まし、水を飲む
そのたびに、エルザがそばにいてくれた
俺が休むように言えば、休んでいると答える
でも、額のタオルはいつも冷たかった
夕方になり、部屋の光が薄くなってきた
目を開けると、エルザが立ち上がるところだった
桶を持とうとして、動きが止まる
彼女はベッドへ手をついた
「エルザ?」
エルザの顔色が変わっていた、俺は慌てて起き上がる
「大丈夫か?」
「ちょっと……」
俺は腕を伸ばしてエルザを支える
その軽い体を、そのままベッドへ座らせた
「無理しないでって言っただろ」
エルザは息を整えながら、俺を見る
「それ、ハロルドに言われたくない」
俺は黙った
「ごめん……でも、もう横になって」
俺はベッドから立ち上がり、エルザをそっと横にさせた
「エルザのおかげで、もうずいぶんよくなった。 次はエルザがしっかりと休む番だ」
エルザの目が俺を見る
俺はソファーで寝ようとした、だが服をつかまれた
エルザを見ると、彼女は自分に掛けられた毛布を持ち上げた
身体を奥へずらし、俺の方を見る
「ここに寝て」
「いや、俺はソファーで…… それにエルザに風邪が移ったら大変だ」
「いいから、ここに寝て」
彼女は毛布を上げたまま、動かなかった
「ベッドは広いんだから。 二人で寝ればいい、ハロルドを見ていないと心配なの」
エルザの目は真剣だった
俺がベッドに寝なければ、きっとまた起きようとするだろう
「分かったよ……」
俺はゆっくり身体を横たえた
同じベッドに二人で並ぶ
エルザが毛布を掛け直してくれた
「最初から、そうすればいいの。 聞きわけがないんだから」
「エルザも人のこと言えないだろ」
「私はわりと素直に聞いてます」
「わりとね」
俺とエルザは小さく笑い合った




