第9話「空を落とす者たち」
## ■第9話「空を落とす者たち」
ギルドの空気が、少しだけ変わっていた。
ざわめきの中心は――
「……あいつらか」
蒼真が小さく呟く。
扉の前に立つ、三人組。
整った装備。無駄のない動き。
そして何より――“場慣れ”している。
先頭の男が視線を上げた。
鋭い目が、まっすぐ風太を捉える。
「……見つけた」
その一言で、空気が張り詰めた。
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三人はそのまま近づいてくる。
蒼真が一歩前に出る。
「何の用だ」
男は軽く笑った。
「挨拶だよ。“空を飛ぶ冒険者”さん」
風太は肩をすくめる。
「有名になったな」
「嫌でもな」
男は腕を組む。
「俺はカイル。パーティ“ハウンド”のリーダーだ」
後ろの二人も軽く会釈する。
弓使いの女。
そして――魔法使い。
「で?」
風太が短く言う。
カイルは、まっすぐ告げた。
「お前、強いな」
「どうも」
「だが――」
少しだけ、口角が上がる。
「対策すれば落とせる」
沈黙。
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蒼真が睨む。
「喧嘩売ってんのか」
「いや?」
カイルは軽く手を上げる。
「ただの確認だ」
そして、言い放つ。
「明日、同じ依頼を受ける」
「……は?」
セリスが困惑する。
カイルは続ける。
「どっちが上か、分かるだろ」
そう言って、三人は去っていった。
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翌日。
依頼は――
「群れ型魔獣討伐……」
蒼真が紙を握る。
「数が多いな」
セリスも頷く。
「空から削るのが一番効率いい……けど」
風太は静かに言った。
「多分、対策してくる」
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現場。
開けた草原。
だが――
「……いるな」
既に“ハウンド”がいた。
カイルが振り返る。
「来たか」
風太は空を見上げる。
(風はいい……問題は)
視線を落とす。
弓使い。
魔法使い。
「……なるほど」
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戦闘開始。
魔獣の群れが迫る。
蒼真が前に出る。
「来い!」
セリスが詠唱。
風太は――
「上に行く」
機体を生成。
浮上。
(まずはいつも通り――)
その瞬間。
「撃て」
カイルの声。
ヒュンッ!!
「っ!?」
矢。
一直線に飛んでくる。
「ちっ!」
回避。
だが続けて――
ヒュン、ヒュン、ヒュン!
連射。
「……!」
(読まれてる!)
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さらに。
「風圧散らせ」
魔法使いが詠唱。
空気が乱れる。
気流が崩れる。
「なっ……!」
機体が揺れる。
「くそ……!」
(安定しない!)
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地上。
蒼真が叫ぶ。
「風太!」
「大丈夫だ!」
だが明らかにいつもと違う。
セリスが焦る。
「援護が来ない……!」
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上空。
風太は歯を食いしばる。
(完全に“対空”だな)
弓で牽制。
魔法で気流妨害。
「やるじゃねえか……!」
だが――
「でも、まだ甘い」
高度を上げる。
矢の届きにくい位置へ。
「そこか」
カイルが呟く。
「魔法、上」
「了解」
魔法使いが杖を掲げる。
「エアバースト」
ドンッ!!
空中で爆発。
「ぐっ!?」
衝撃。
機体が大きく揺れる。
「……っ!」
(完全に封じられた……!)
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地上。
蒼真が押されている。
「数が多い!」
セリスが叫ぶ。
「間に合わない……!」
風太は決断する。
「降りる!」
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着地。
機体を消す。
「今回は――地上戦だ」
蒼真がニヤリとする。
「やっと同じ土俵か」
セリスも集中する。
「……いける」
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一方。
カイルはそれを見て、笑った。
「いい判断だ」
「だが遅い」
彼らはすでに、群れを半分削っていた。
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戦闘は混戦へ。
蒼真が受ける。
風太が近接で動く。
セリスが撃つ。
だが――
「効率が悪い……!」
風太が呟く。
(空を封じられると、こうなるか)
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その時。
セリスが叫ぶ。
「風太!」
「なんだ!」
「空、完全にダメ?」
一瞬、考える。
そして。
「……いや」
空を見る。
乱れているが――ゼロではない。
「“短時間”ならいける」
セリスの目が光る。
「じゃあ――合わせて」
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蒼真が叫ぶ。
「3秒、作る!!」
盾で押し返す。
限界まで踏ん張る。
「今!!」
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風太、再び浮上。
低空。
不安定。
だが――
「これでいい!」
滑空。
セリスが詠唱。
「フレイムランス!」
風太が風を乗せる。
「押す!」
炎が加速。
一直線に突き抜ける。
複数の魔獣を貫通。
「グァァァッ!!」
一気に数が減る。
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蒼真が笑う。
「これだ!」
セリスも続く。
「もう一回!」
短時間飛行→連携攻撃。
それを繰り返す。
徐々に、押し返す。
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やがて。
最後の一体が倒れる。
静寂。
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カイルたちも、戦闘を終えていた。
彼は風太たちを見る。
「……なるほどな」
風太も見返す。
「完全封殺じゃなかったな」
カイルは笑う。
「空は落とせる」
一拍おいて。
「だが、消せはしない」
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蒼真が肩を回す。
「引き分け……か?」
セリスが息を整えながら言う。
「……悔しい」
風太は静かに言った。
「いや、収穫ありだ」
空対策。
その突破口。
「次は――勝つ」
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カイルは去り際に言った。
「またやろうぜ」
風太は答える。
「ああ」
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こうして。
“空”は初めて対策され、
そして――進化を始めた。
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