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第8話「火は、応える」


## ■第8話「火は、応える」


ギルドの掲示板の前で。


風太が選んだ依頼は、少しだけ異質だった。


「洞窟内の魔獣討伐……?」


セリスが読み上げる。


蒼真が眉をひそめる。


「地形が悪いな。空は使えねえぞ」


その言葉に、風太は頷いた。


「だから選んだ」


「は?」


「俺が使えない状況で勝てるか、試す」


沈黙。


そして蒼真が笑う。


「……いいな、それ」


セリスは少しだけ緊張した顔で言う。


「じゃあ……私、頑張らないと」


---


洞窟の入口。


ひんやりとした空気。湿った岩の匂い。


「視界悪いな……」


蒼真が盾を構える。


風太は小さく息を吐いた。


(風が読めない……)


閉鎖空間。


空の利点はほぼ消える。


「……任せるぞ、二人」


珍しく、風太が後ろに回った。


セリスが小さく頷く。


「うん」


---


奥へ進む。


やがて――


「来るぞ」


蒼真が低く言う。


影が揺れる。


現れたのは――


「……ゴブリンじゃない」


灰色の体。筋肉質。鋭い爪。


「洞窟種……!」


セリスの声が震える。


通常より硬く、速い。


「数は三!」


蒼真が前に出る。


「来い!!」


---


戦闘開始。


一体が蒼真に突っ込む。


ドガン!!


「ぐっ……!」


盾で受ける。


だが重い。


もう一体が横から回る。


「しまっ――」


「ファイアボルト!」


セリスの火球。


命中。


だが浅い。


「硬い……!」


三体目が、セリスへ向かう。


「っ!」


距離が詰まる。


(間に合わない!)


---


その瞬間。


「右、下がれ!」


風太の声。


セリスは反射的に動く。


爪が空を切る。


「……っ、助かった」


だが――


(火力が足りない)


明確だった。


---


蒼真が叫ぶ。


「セリス! 決定打出せるか!?」


「無理……! まだ初級しか……!」


押されている。


じわじわと。


確実に。


(このままじゃ……)


セリスの手が震える。


詠唱が乱れる。


「……やだ」


小さく呟く。


「また……守られてばっかりは……やだ」


記憶がよぎる。


前のパーティー。


守られるだけだった自分。


置いていかれた自分。


「私は……」


魔力が、揺れる。


---


風太が気づく。


(魔力が……変わった?)


空気が熱を帯びる。


セリスの周囲だけ、温度が上がる。


「セリス……?」


蒼真も感じていた。


「おい、それ……」


---


セリスは目を閉じる。


深く、息を吸う。


(怖い……でも)


(やるしかない)


頭の中に、言葉が浮かぶ。


知らないはずの詠唱。


だが、理解できる。


「……火よ」


声が変わる。


静かで、強い。


「集え」


魔力が一点に集束する。


炎が――“圧縮”される。


「え……?」


風太が目を見開く。


(これ……初級じゃない)


---


「焼き尽くせ」


セリスが目を開く。


「――フレイムランス」


放たれたのは、“槍”だった。


細く、鋭く、凝縮された炎。


一直線。


空気を裂き――


ズドンッ!!


一体の胸を貫く。


「グァァァッ!?」


爆発。


内部から焼き尽くす。


そのまま――崩れ落ちる。


---


「……っ!?」


蒼真が息を呑む。


「今の……」


「中級魔法……」


風太が呟く。


セリス自身も、信じられない顔をしていた。


「……出た……」


だが――


「まだ来るぞ!」


残り二体。


だが、状況は変わった。


---


風太が叫ぶ。


「蒼真! 固定!」


「任せろ!!」


盾で押し返す。


「セリス! さっきのもう一回いけるか!?」


「……やる!」


詠唱。


さっきより速い。


(いける……!)


「フレイムランス!」


二発目。


命中。


二体目、撃破。


---


最後の一体。


蒼真が押さえ込む。


「今だ!」


風太が短く言う。


セリスが頷く。


三発目。


「――フレイムランス!」


貫通。


沈黙。


戦闘終了。


---


しばらく、誰も動かなかった。


やがて。


「……はぁ……」


セリスがその場に座り込む。


「できた……」


蒼真が笑う。


「やべえな、お前」


風太も少しだけ笑った。


「完全に主砲だな」


セリスは少し照れながらも――


「……もう、守られるだけじゃない」


そう言った。


---


洞窟を出る。


外の光が眩しい。


風太が空を見上げる。


「空が使えなくても、勝てたな」


蒼真が頷く。


「戦い方が増えた」


セリスも続く。


「……私も、少しは役に立てたかな」


風太は即答する。


「いや、主役だった」


セリスは少しだけ笑った。


---


こうして。


パーティーに、新たな“牙”が加わった。


空の戦術。盾の防御。

そして――貫く炎。


三人は、確実に強くなっていた。


---



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