第6話「噛み合わない歯車」
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## ■第6話「噛み合わない歯車」
「対象は――森奥のオーク一体」
依頼書を見ながら、蒼真が言う。
「ゴブリンより上位種。単体だが、油断すると死ぬ」
セリスが小さく頷く。
「……硬いし、力も強い」
風太は軽く空を見上げた。
「じゃあ、俺が削って――」
「待て」
蒼真が遮る。
「ちゃんと役割決めるぞ」
盾士らしい慎重さだった。
「俺が前に出て固定する。セリスが後ろから魔法」
「風太は――遊撃だ」
「了解」
短い作戦。
だが、問題は――
“初連携”だということ。
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森の奥。
重い足音が響く。
ズシン、ズシン――
「来た」
蒼真が盾を構える。
現れたのは、二メートルを超える巨体。
灰色の肌。太い腕。鈍器のような棍棒。
オーク。
「グォォォ……!」
唸り声とともに、突進してくる。
「来い!」
蒼真が踏み込む。
盾で受ける。
ドゴン!!
「ぐっ……!」
衝撃。
地面がえぐれる。
「重っ……!」
だが、耐える。
「今だ、セリス!」
「ファイアボルト!」
火球が飛ぶ。
直撃。
――だが。
「グルァ!」
煙の中から、オークが突っ込んでくる。
「効いてない!?」
「浅い!」
蒼真が叫ぶ。
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その時。
上空から、風太が滑空する。
(ここだ)
槍を生成。
「当たれ!」
投擲。
ズドッ!
オークの肩に突き刺さる。
「グオォッ!」
初めて、明確に怯んだ。
「よし!」
だが――
それが、ミスの始まりだった。
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オークの注意が、上へ向く。
「グルァァ!!」
蒼真ではなく、風太に向かって棍棒を振り上げる。
「……やべ」
(タゲが外れた)
蒼真が叫ぶ。
「戻せ!!」
だが遅い。
オークは跳ねるように踏み込み、風太の着地地点へ突進。
「くそっ!」
着地が乱れる。
その隙に――
ブンッ!!
棍棒が迫る。
「っ!」
回避。
だが完全ではない。
かすった衝撃で吹き飛ばされる。
「風太!」
セリスの声。
(まずい……)
体勢が崩れる。
その瞬間。
オークがセリスの方へ向きを変えた。
「……!」
「来るなっ!」
蒼真が割り込む。
盾で受ける。
ドガン!!
「ぐっ……!!」
今度は耐えきれない。
膝が沈む。
「蒼真!」
セリスの詠唱が乱れる。
完全に――崩れた。
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(……ダメだ、このままじゃ)
風太は地面に手をつきながら考える。
(バラバラに動いてる)
各自は強い。
だが、繋がっていない。
(じゃあ――繋げる)
風太は叫んだ。
「蒼真!!」
「なんだ!」
「3秒だけ耐えろ!!」
「は!?」
意味は分からない。
だが――
「分かった!!」
蒼真は踏みとどまる。
盾を構え直す。
「来い、化け物!!」
オークの攻撃を、真正面から受ける。
ドン! ドン! ドン!
「ぐっ……!!」
限界が近い。
だが――3秒。
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その間に。
風太は上昇する。
「セリス!」
「えっ!?」
「詠唱、合わせろ! 合図出す!」
セリスの目が見開く。
(合わせる……?)
だが――
「……分かった!」
詠唱開始。
火の魔力が集まる。
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上空。
風太は位置を取る。
(風、流れ、角度……)
オークの動き。
蒼真の位置。
セリスの魔力。
すべてを“読む”。
「今だ!!」
叫ぶ。
同時に、急降下。
槍を構える。
セリスが放つ。
「ファイアボルト!!」
火球が一直線に飛ぶ。
その軌道に――
風太が飛び込む。
「なっ!?」
蒼真が目を見開く。
火球と槍が重なる。
「――貫け!!」
ドゴォン!!
爆発。
炎と衝撃が一点に集中する。
オークの胸部に直撃。
「グ……ォ……」
巨体が揺れる。
一歩、二歩。
そして――
ドォン……
倒れた。
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静寂。
「……はぁ……はぁ……」
蒼真が膝をつく。
セリスも息を切らしている。
風太はゆっくりと降りた。
「……やったな」
沈黙。
そして。
「……おい」
蒼真が顔を上げる。
「最後の、なんだ」
風太は軽く言う。
「合わせただけだ」
セリスがぽつりと呟く。
「……魔法、加速してた」
「風で押した」
「……そんなことできるの?」
「できた」
シンプルな答え。
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しばらくして。
蒼真が立ち上がる。
「……認める」
真っ直ぐに風太を見る。
「お前、必要だ」
セリスも頷く。
「うん。三人で戦えた」
風太は少しだけ笑う。
「やっとパーティーっぽくなったな」
蒼真が手を差し出す。
今度は、迷いはない。
「正式に組もう」
風太はその手を握る。
「いいぞ」
セリスも手を重ねる。
小さな円ができる。
未熟だが――確かな連携。
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こうして三人は、
ただの寄せ集めから
“チーム”へと変わった。
空・盾・魔法。
異なる力が、初めて一つになった瞬間だった。




