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第5話「欠けた前衛と、空の席」



---


## ■第5話「欠けた前衛と、空の席」


ギルドの空気が、いつもよりざわついていた。


「……マジで抜けたのか」

「借金返済だとよ。高報酬のとこに行ったらしい」


風太はカウンターで耳に入った噂に、ふと顔を上げた。


(パーティー崩壊か)


珍しくはない。

だが、その影響は大きい。


とくに――前衛が抜けた場合は。


---


壁際のテーブル。


そこに、二人が座っていた。


重い盾を背負った少年と、ローブ姿の少女。


盾士――蒼真。

魔法使い――セリス。


二人とも、明らかに焦っていた。


「……どうする、蒼真」

「どうするって言ってもな……」


蒼真は頭をかく。


「前衛がいねえと、依頼受けられねえ」

「私一人じゃ火力足りないし……」


沈黙。


そこに――


「困ってるなら、手伝うけど」


風太が立っていた。


二人の視線が一斉に向く。


「……誰だ?」

「新入り、だよね」


風太は軽く肩をすくめる。


「風太・ヴェイル。昨日登録した」


蒼真の目が細くなる。


「昨日? じゃあ無理だな」


即答だった。


「悪いが遊びじゃねえ。こっちは命かかってる」


当然の反応。


だが風太は、あっさり言う。


「ゴブリン、単独で7体処理してきたけど」


沈黙。


セリスが小さく声を上げる。


「……え?」


蒼真の表情が変わる。


「……証拠は?」


風太はギルドタグと報酬袋を軽く見せる。


「今日の分」


蒼真は受付を見る。


受付の女性は、静かに頷いた。


「事実です」


再び沈黙。


今度は重みが違う。


---


蒼真は椅子にもたれ、腕を組む。


「……どうやった」


「空から」


「は?」


セリスが首をかしげる。


「空……?」


風太は短く答える。


「飛べる」


数秒の沈黙。


「……は?」


蒼真の理解が追いつかない。


「いや、ちょっと待て」


「まあ、見せた方が早いか」


---


町の外。


人気のない草地。


風太は手をかざす。


光が集まり――機体が現れる。


「……っ!?」


セリスが息を呑む。


蒼真も言葉を失う。


「これで飛ぶ」


風太は乗り込み、軽く浮上する。


ふわり、と宙に浮く。


「……おい」


蒼真が思わず一歩前に出る。


「マジかよ……」


上空数メートルでホバリングし、ゆっくりと降りる。


「こんな感じ」


沈黙。


そして――


「スカウトさせてくれ」


蒼真が真顔で言った。


---


再び三人で向き合う。


蒼真が口を開く。


「俺は盾士。前に出て敵を受ける」


「セリスは魔法使いだが、まだ初級だ。火力は低い」


セリスが少しだけむくれる。


「その代わり、制御は得意だから」


「問題は前衛が抜けたことだ」


蒼真は続ける。


「本来、剣士が攻撃役だった」


風太は頷く。


「つまり、火力不足と前線維持の問題か」


「そうだ」


「じゃあ解決できる」


あっさりと言う。


「は?」


蒼真が眉をひそめる。


風太は指を立てる。


「俺が上から敵を削る」


「蒼真が引きつける」


「セリスが支援と追撃」


「これで成立する」


セリスの目が少しだけ輝く。


「……それ、いけるかも」


蒼真はまだ疑っている。


「理屈はな。だが連携は?」


風太は少し考え――


「試せばいい」


シンプルな答え。


---


蒼真はしばらく黙り――


やがて、ため息をついた。


「……いいだろう」


顔を上げる。


「仮加入だ」


セリスも頷く。


「まずは一回、依頼を一緒にやろう」


風太は軽く笑った。


「了解」


蒼真が手を差し出す。


「条件がある」


「なんだ?」


「死なないこと」


風太は、その手を握る。


「それはお互い様だな」


---


こうして。


欠けた前衛を抱えたパーティーに、

“空”が加わった。


盾、魔法、そして飛行。


まだ未完成の三人が――


最初の連携戦へと向かう。




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