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第13話「五つの議会」



## ■第13話「五つの議会」


王宮・大広間。


かつては王の命令だけが響いた場所に、

今は“人”が集まっていた。


貴族、商人、職人、農民、そして聖職者。


ざわめきは止まらない。


「……本当に全員呼んだのか」

「農民まで議場に入れるなど……」


蒼真が小さく呟く。


「……荒れるぞ」


セリスも不安げに言う。


「でも、やるんだよね」


風太は玉座に座り、静かに言った。


「ああ」


---


「これより、“五議会”を設置する」


一言で、空気が凍る。


「王族議会」

「貴族議会」

「商人議会」

「職人議会」

「農民議会」


「それぞれに発言権と決議権を与える」


ざわめきが爆発する。


「農民に決議権だと!?」

「秩序が崩壊する!」


風太は、手を上げた。


一瞬で静まる。


「安心しろ」


「急には変えない」


---


床に、簡単な図を描く。


「決定は段階制だ」


・各議会で議論

・代表が合同議会へ

・最終調整は王(暫定)


「つまり――全員の声を“通すが、暴走はさせない”」


蒼真が小さく笑う。


「……うまく挟んだな」


---


次。


風太は言う。


「教育を義務化する」


一部がざわつく。


「読み書き、そろばん」


「全員、必須だ」


商人が目を見開く。


「それは……市場が変わる」


職人も呟く。


「技術の継承が早くなる……」


農民が戸惑う。


「俺たちも……か?」


風太は頷く。


「そうだ」


「考える力を持て」


---


次の一言で、空気が変わる。


「教会税を見直す」


聖職者が一斉に顔を上げる。


「現在三割――」


「これを一割にする」


静寂。


そして。


「ありえん!!」


怒号。


「信仰への冒涜だ!」


---


風太は冷静だった。


「違う」


「信仰は守る」


「だが“独占”は崩す」


セリスが小さく呟く。


「……優しいけど、強い」


---


さらに続ける。


「地方統治」


貴族たちが身構える。


「公爵には――半分の裁量を与える」


ざわめき。


「領地貴族には――三割の裁量」


蒼真が目を細める。


「……中央集権と分権の中間か」


「そうだ」


風太は頷く。


「勝手にはさせない」


「だが、縛りすぎない」


---


そして。


最後の一手。


「資産制限を設ける」


空気が凍る。


商人が低く言う。


「……どういう意味だ」


風太ははっきり言った。


「上限を決める」


「経営に失敗する前の水準までしか、資産保持を認めない」


「期限は十年」


沈黙。


そして、怒り。


「ふざけるな!」

「努力の否定だ!」


---


風太は一歩も引かない。


「違う」


「暴走の抑制だ」


静かに続ける。


「富は必要だ」


「だが、独占は腐る」


セリスが息を呑む。


「……バランス……」


---


老司祭が前に出る。


「……あなたは、何を恐れている」


風太は少しだけ考え――


答えた。


「崩壊だ」


「この国は一度、空白になった」


「次は――完全に壊れる」


---


沈黙。


重い、長い沈黙。


---


やがて。


一人の商人が言う。


「……十年後は?」


風太は答える。


「見直す」


「成長したなら、緩める」


「腐ったなら、締める」


---


蒼真が小さく笑う。


「逃げ道、残したな」


「現実的だろ」


---


セリスが前に出る。


小さな声で、だがはっきりと。


「……私、文字、教える」


農民たちが驚く。


「本気か……?」


「うん」


---


少しずつ。


空気が変わる。


完全な賛成ではない。


だが――


完全な拒絶でもない。


---


老司祭が再び膝をつく。


「……暫定王の方針、承認します」


一人、また一人。


完全ではない。


だが――動き出した。


---


風太は静かに言った。


「これは革命じゃない」


「調整だ」


---


こうして。


リウイ旧教国は、


静かに――だが確実に変わり始めた。


---




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