第12話「空席の王座」
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## ■第12話「空席の王座」
風は、異変を運んできた。
丘の上。
風太は一人、空を見上げていた。
「……変だな」
流れが乱れている。
自然の風ではない。
(情報が乗ってる……?)
意識を集中する。
風に混じる、断片的な言葉。
“勇者”
“クーデター”
“王都制圧”
“消失”
「……なんだそれ」
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ギルドに戻ると、噂はすでに広がっていた。
「リウイ旧教国でクーデターだとよ」
「勇者がやったらしいが……」
蒼真が眉をひそめる。
「その勇者、消えたって話だ」
セリスが言う。
「帰還……した、って」
風太は静かに言った。
「元の世界に戻ったな」
二人が驚く。
「分かるのか?」
「なんとなくな」
だが問題はそこではない。
「王がいない」
「は?」
蒼真が聞き返す。
「クーデターで崩壊して、勇者が消えた」
「つまり――権力が空白だ」
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沈黙。
セリスが小さく言う。
「……危なくない?」
「めちゃくちゃ危ない」
蒼真が即答する。
「内乱、分裂、外敵侵入……全部来る」
風太は、少し考え――
「行く」
「は!?」
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数日後。
リウイ旧教国。
そこはすでに“国”ではなかった。
燃えた跡。壊れた門。
武装した民兵。崩れた秩序。
「……ひでえな」
蒼真が呟く。
セリスは顔をしかめる。
「……怖い」
風太は静かに言った。
「これが“空白”だ」
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王都中心部。
旧王宮。
そこには――
誰もいなかった。
「……本当に、空だな」
蒼真が言う。
風太は玉座を見る。
誰も座っていない椅子。
だが――
「いや」
風太は一歩進む。
「空じゃない」
振り返る。
「“誰も決めてない”だけだ」
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その時。
兵士たちがなだれ込んでくる。
「止まれ!!」
「何者だ!」
剣が向けられる。
緊張。
だが風太は――
一歩も引かない。
「この国、誰がまとめる?」
沈黙。
誰も答えない。
「王は?」
「……いない」
「なら――」
風太は言った。
「暫定で俺がやる」
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一斉にざわめく。
「ふざけるな!」
「部外者だぞ!」
当然の反応。
蒼真が小さく言う。
「……無茶だろ」
だが風太は、空を見上げた。
そして。
「証明する」
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次の瞬間。
光。
王宮の上空に、巨大な影が現れる。
「なっ……!?」
ライトプレーン――
だが、通常とは違う。
複数。
編隊。
「創造……量産!?」
セリスが息を呑む。
風太の声が響く。
「これが、俺の力だ」
さらに。
風が渦巻く。
空が鳴る。
「……風を読むだけじゃない」
「操ることもできる」
突風。
兵士たちがよろめく。
だが――傷つけない。
制御されている。
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静寂。
誰も動けない。
風太はゆっくりと言った。
「奪うつもりはない」
「守るだけだ」
蒼真が小さく笑う。
「……説得じゃなくて、制圧だな」
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やがて。
一人の老司祭が前に出る。
「……あなたは、何をする気だ」
風太は答える。
「変える」
「どうやって」
「急激にはやらない」
短く言う。
「壊さない」
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セリスが小さく呟く。
「……優しい改革」
風太は頷く。
「人がついてこれる速度でやる」
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・信仰の自由を徐々に広げる
・教育を整備する
・身分の固定を緩める
・暴力ではなく制度で変える
「……それが、“温和な啓蒙”だ」
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長い沈黙のあと。
老司祭が膝をつく。
「……暫定統治者として、認めましょう」
一人、また一人と続く。
蒼真が息を吐く。
「……決まりか」
セリスが小さく笑う。
「王様だね」
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風太は玉座に座る。
だがその顔に、驕りはない。
ただ静かに言った。
「これは――始まりだ」
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こうして。
空を駆けた冒険者は、
空席の王座に座った。
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