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その美女は人間じゃない  作者: ナカジマ
第7章 見え始めた敵の輪郭
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第200話 一斉摘発

7章開始です。この章はホラー成分が、若干少なめです。

妖怪ネタはどんどん出しますけれども。

 様々な組織で、大騒ぎが起こっていた。ある日突然、妖異対策課が強制捜査にやって来たからだ。

 京都支部や大阪支部、兵庫支部や山口支部などが、関東圏の企業や団体、政治家や資本家の家へ。

 もちろん表向きは、警察庁からの捜査として。理由は脱税疑惑など、偽りの理由でだ。

 何の話かと思って対応すれば、妖異対策課である事が明かされる。そしてその反応で、全てが分かる。

 裏の顔がないのであれば、妖異対策課なんて知らない。反応した時点で、自白したようなものだ。


「ほおぉ、今自分、反応したなぁ?」


「あっ……いや、今のは……」


「何で知ってんのや? なあ?」

 

 大阪の妖異対策課が、とある企業の社長を詰めている。妖異対策課という名前に、しっかり反応してしまった。

 高そうなスーツを着た中年の男性が、冷や汗を流している。言い逃れの余地は残されていない。

 あちこちで、このような光景が繰り広げられている。特に関西の妖異対策課は、気合が入っている。

 どんどん攻めの捜査を進めて、証拠を集めていく。東京の妖異対策課と、怪しいやり取りをしていた者達を相手にして。

 西日本を代表する妖異、大江(おおえ)イブキの指示により、彼らは一斉に行動を開始した。


 ところ変わって、妖異対策課、京都支部。沢山のモニターがある指令所。50人以上のオペレーターが対応している。

 室長専用の席には、東坂香澄(とうさかかすみ)が座っている。少し高めの身長に、ビジネススーツが良く似合う。

 タイトスカートからは、細く長い脚が伸びている。肩まである長い髪は、良く手入れされている。

 ツリ気味の目と涼やかな表情からは、クールな印象を受ける。20代後半という若さで、トップに立つエリートだ。

 軍事基地の指令室に似た部屋では、大勢の若い女性オペレーターが居る。だが彼女達を含めても、一番美しいのは香澄だ。


「状況を報告して頂戴」


 香澄の冷静な声が、オペレーター達に届く。関東各地で行動中の、担当者がそれぞれ報告する。


「現在、千葉で10件の制圧に成功」


「埼玉では7件が終了しています」


「神奈川では現在、9件目に突入しました」


 普段は京都府の全体地図が表示されている、大モニターには関東全域の地図が表示されている。

 状況の進行に合わせて、表示内容が変化していく。様々な位置へ、赤いバツ印がつけられている。

 目標の制圧に成功した場所へ、次々と追加されていく。進行速度は順調と言えるだろう。

 今回の強制捜査を行う場所は、100件を超えている。どれも大物というには、少し微妙な相手ばかり。

 人工の妖異に関して、どれだけの情報が集まるかは分からない。ただ、情報がゼロという事はないだろう。


「今は順調でも、何があるか分からないわ。全隊に注意を促しておいて」


 西日本の全支部が、今回の件に参加している。妖異対策課の東京支部が、何やらきな臭い動きを見せている。

 自分達の名誉と誇りに賭けて、真実を明らかにする。その意思の下、全員が事に当たっている。

 人工の妖異を人間が作っている。その事に、不快感を示している妖異は多い。特に関西の支配者は、その傾向が強い。

 名の通った古参の妖異が多い為、舐められては困ると思っている。もちろんそれは、関西だけじゃない。

 四国や中国地方、九州でも同様だ。あまり気にしていないのは、広島と山口ぐらいだ。


 妖異対策課から見れば、自分達の所属組織が、支配者達の不興を買っている。非常によくない流れだと言える。

 ここで自分達は違うと示しつつ、成果を上げて存在価値を証明する。その為に彼等は必死だ。

 あまり支配者が気にしていない広島と山口でも、ちゃんと気合が入っている。むしろ高い方と言える。

 なぜなら彼等は、よくイブキの世話になっているからだ。ここで恩を返せないようでは、あまりに情けない。

 そう思って行動しているので、熱量はかなり高い。関西勢に次ぐ勢いで、調査を進めている。


「群馬にて、異界の発生を確認! 玉藻前様です!」


 緊急のアラートと共に、室内に緊張が走る。何かが起きた為に、那須草子(なすそうこ)が異界を発生させた。

 

「状況は?」


 あくまで冷静に、香澄は対応を続ける。今回の作戦には、草子の分身体が各地に同行している。

 何らかの抵抗がある可能性を考慮し、イブキと草子が相談して決めた。案の定、何かが起こっている。


「どうやら用心棒として、妖異を雇っていたようです。相手はひょうすべとの事」


「草子様ですから、大丈夫でしょう。隊員達に被害は?」


「軽傷が数名出ていますが、問題ありません」


 暫く戦闘になったようだが、数分で異界は解除された。真昼間だったので、周囲へ配慮したのだろう。

 街中で戦闘をすれば、何も知らない一般人へ被害が出かねない。だが異界の中であれば、どれだけ暴れても問題はない。

 時間が進むにつれて、何度か同様の事態が発生する。だがその全てで、草子が異界を生んで処理した。

 数分あれば、解決するような戦いばかりだ。10分以上の戦闘になる事は無かった。重傷者も出ていない。

 緊張感はあるものの、悲壮感は出ていない。どの支部の妖異対策課にも、大きな損害はない。そしてまた、アラートが鳴り響く。


「長野県にて寄生体出現! え? あ~えっと……」


「どうしたの? 報告は正確になさい」


「……すぐに碓氷(うすい)君が撃退したそうです」


 京都支部の捜査には、碓氷雅樹(うすいまさき)が同行している。本人の強い希望から、香澄が折れた形だ。

 知っているのに、何もしないなんて出来ない。東日本ゆえ、イブキが行けない代わりだと主張。

 今回の作戦は、支配者から察知され難い人間がメインで行っている。人選としては、そう悪い選択ではない。

 だが香澄は、最後まで渋った。もし雅樹に何かあれば、イブキに何と謝ればいいか分からないからだ。

 絶対に無茶な事はやらないと、固く約束をして送り出した。その結果がこれである。


「……はぁ。あの子の中で寄生体と戦うのは、無茶の範囲に入らないって事なの?」


 香澄は盛大なため息を吐いた。本来なら、寄生体だって十分な脅威だ。妖異対策課でも対処に苦労する。

 だが雅樹は、一度寄生体を斬ってから決心がついた。誰かを守る為なら、刃を向ける覚悟をした。

 今もまだ、元人間を斬るのは怖い。とても喜べる事ではない。だが今回は、街中で出現した。

 以前よりも、更に危険な状況だ。もし逃がせば、大勢が犠牲になる。しかも、幼稚園が近くにあった。

 少し離れて、姿を隠している草子が来るより早く、雅樹が寄生体を処理した形だ。


「いや、まあ……」


「あはは……」


 香澄のボヤキに、オペレーター達は答えられない。雅樹という存在は、ここじゃ有名過ぎる。

 事件と関わるごとに、成果が上昇していく少年。確実に成長しており、その速度も早い。

 今もずっと、草子の厳しい鍛錬を受け続けている。人間目線だと、驚異的な勢いがある。

 もっとも、乾英子(いぬいえいこ)や妖刀小鴉(こがらす)目線だと、まだまだ未熟者という評価だ。それについては、どちらも比較対象が悪い。

 大昔、まだ人が刀で戦っていた時代の、有名な猛将達と比べている。普通の高校生と、比べる相手ではない。


「失礼するよ。カスミ、今はどんな状況かな?」


 指令所に、イブキが入って来た。180センチの高い背丈、完璧すぎるプロポーション。

 いつものパンツスーツ姿に、腰まである黒髪のポニーテール。超がつく美女の登場に、一層緊張感が増す。

 この場には、イブキを知らない存在はいない。有名な鬼、酒吞童子であるイブキの姿を誰もが知っている。


「お疲れ様ですイブキ様。こちらへどうぞ」


「悪いね」


 この指令所には、香澄よりも上座が存在している。謂わば、総司令官用の席とでも言うべきか。

 イブキ専用として用意された席で、イブキがテーブルに乗っているモニターを確認する。


「現在は50%ほどが、制圧を完了しております。多少の戦闘は挟んでいますが、概ね予定通りです」


「そう、なら良いんだ。今わかっている情報で、有益なものは?」


 香澄の指示で、イブキの席にあるモニターへ、大きな資料の写真が表示される。そこには、人身売買の情報が載っていた。

 大阪で見つかった物以上に、詳細な取引相手が載っている。その内容を見て、イブキは満足している。


「なるほどね。引き続き頼むよ」


「はい、我々にお任せ下さい」


 イブキと草子が考案した、強襲作戦とでもいうべき強制捜査。妙なトラブルもなく、順調に進行して行った。

一端整理する意味も込めて、雅樹君の戦闘力的な立ち位置を。

一般人<妖異対策課<妖異対策課の特殊部隊員(素手雅樹)<寄生体(木刀有り雅樹)<雅樹(小鴉あり)<<<一般侍<<<<<<名将達

護符巻き木刀有りの雅樹は、寄生体に負ける事はないです。ただ勝てるかは、相手にもよります。

弱い妖異の寄生体(カナカナ等)→楽勝。平均的な妖異の寄生体→ギリ勝てる。

謎の人影クラスの寄生体→勝てない。善戦はする。


妖異対策課の特殊部隊なら、弱い寄生体の時点で負傷者が出ます。ベテラン隊員なら無傷で倒せます。

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