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離ればなれになってしまったあなたともう一度魔法を魅る  作者: 霧城 結露
ひとり、知らない土地
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1-01. 回想は快走する

まだ構成なども完全にまとまっている訳ではなく、1話1話が短いです。

お付き合い頂けるとありがたいです。

 長い廊下を、彼女は歩いていた。

ーーその髪は全ての光を受け止め、その光が運ぶ景色の全てを鏡のように反射しているかのように艶やかで、落ち着きのある整った顔立ちの中で、透き通るような青い瞳はどこか憂いがあるようにも見える。



 間もなく彼女は、突き当たりの部屋までたどり着く。 

 "政務官執務室"と書かれた表が下がる部屋へと入った彼女を迎えたのは書類以外には必要最低限のペンと印鑑の置かれた無機質な机。それと、その脇でさも廊下を歩いて来た彼女が部屋に着くタイミングを見計らっていた、とでも言わんばかりの完璧なタイミングで紅茶を淹れ終えたトープだった。


「セラフィスタ様、中央高官会議への御出席、お疲れ様でした。」


 彼女に労いの言葉をかけながら、用意した紅茶をセレナの前に置いたトープは、流れるように部屋の側面に設置された戸棚を開け、砂糖とミルク、茶菓子を取って来た。――――ん?待てよ。そのセットを載せるためにさもトレーのように使われている書類の束は何だ?思わず顔が引き攣る。嫌な予感だ。

 そのままトープはさも事も無げに束ごと机に置く。


「トープ、この書類は?」


 今にも細やかに痙攣を起こしてしまいそうな、頬の筋肉をすんでのところで抑え込み、至って冷静を粧って尋ねる。


「はい。そちらは、セラフィスタ様が会議に出席なされている間に、地検省の役人が例の魔壁(レガシー・ウォール)についての調査書と兼ね、セレナ様に現地調査をお願いしたいと。」


 そう淡々と説明されても……正直辛い。

 既に、文官として紙だけは山ほどあるこの部屋に、目を通さなければならない紙が増えただけでもげんなり、と言ったところなのに、加えて現地調査?これでも私"施政総理省"の政務官なんだけど!?ーーそう思いながら溜息をつく。


「あいつら、私がいるとどうにも提出できる雰囲気じゃないと思って、会議に出ている間を狙った訳か。」

 

 ずる賢いッ…!本来あなた達(地検省)が調べることでしょう?充分な能力を持った人材だって持っていように……

 

 してやられたッ!ーーーそう思っていると、


「セラフィスタ様、感情が言葉と顔にもはや隠しようがないくらいに溢れ出ております。」

 とトープから注意された。


 わかってるよう!分かってるけど……!! 

 ………公邸に戻るのは、まだ後になりそうだと思うと、セラフィスタはガックリと肩を落とし、トープの用意した紅茶を一気に飲み干すのだった。

 まぁ、分かりますよ。魔壁(レガシー・ウォール)については、各国が一丸となって破壊に向けて取り組んでいるのですから。このクレア王国は幸いにも、環境、人材、技術の各方面が安定し、先の()()()()()()においても、甚大な被害を出しませんでしたし。しかし、友好国である隣国ルーン公国との国交も早く復帰させたいのです。

 それに、ルーン公国は、軍事力ではイスカル帝国その国と肩を並べてはいたものの、やはり血の気の多い国民性のイスカル帝国相手には、ジリジリと撤退に追いやられていたらしい。


「資料、確認書類は分類分けしてご用意致しました。他に何か手伝えることはありますか?」

 

 と、トープが尋ねて来るが、紙類の仕分けだって本来私がやらなければならないことだ。実際には、出向かなければならない用件が多すぎて無理だった訳だが。

 しかも明日は非番のトープを、私の仕事の都合で遅くまで残しておきたくない。侍女であるトープが、ここまでやってくれただけでも十分すぎる。今日はもう帰してあげようと思った。


「いいよ、今日はもう戻りなさい。」

「……はい、かしこまりました。今日はこれにて下がらせていただきます。」


 少し不安げな表情を目元にチラつかせたトープだったが、それ以上は何も言わずに退室して行った。

 恐らくトープは、感情を表に出さないなりにも私のことをかなり心配してくれている。

 朝は、国王である父上と共に各大臣の面々から伝えられる重要事項を聞き、昼は各省からの予算請求等の紙仕事を振り分け、承認し、夕方からは、複数の会議に出る。そんな生活をしている私が気がかりなのだろう。実際、朝食を食べてから、公邸に戻って食べる夕食まで、まともに休みの時間はない。昼食は無いのが当たり前だ。

 どうして大公爵ともあろうセラフィスタ様が、ここまで忙しない生活を送っているのだろう?ーーと、日頃のセラフィスタを見て思う有力貴族は多いようだ。これは、彼女が他人を身の回りに置かないためだった。それは世話役の侍女にしても、仕事の補佐官にしてもである。そのため、彼女は数多い仕事をこなさなければならないにも関わらず、秘書を1人も持っていなかった。ーーー 一応、セラフィスタの直属の部下としてユリアヌスという、彼女よりも歳も上の青年がいるのだが、そちらはそちらで私が承認する必要はない程度の事案を扱っていたりと彼女に負けず劣らずの仕事を抱えているために、自分の下で同じ仕事を手伝わせることはできないと、セラフィスタ自身が声をかけていないのである。

 そのため、侍女として仕えている身ではあるものの、秘書と同等な仕事をこなすことの出来るトープが、いつの間にやらセルフィスタの仕事の大きな助けとなっていた。

 そんなトープもさっき帰してしまったので、ーー勿論、ゆっくり休んで欲しいという気持ちは本当なので、後悔はしていないーーこの後は、1人でただひたすらにこの書類の山に印を押していかなければいけない訳で………


「これは、いつになれば公邸に帰れるのやら……」


 と小声で呟き、そこからは終始無言で作業を進めるその背中の影は、やがて同じくらいに暗くなった外の景色に溶け込んでゆくのだった……



≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣≣



「セラフィスタ、何か弁明はあるのか?」

「いえ、ございません。申し訳ございませんでした。」

「貴様は何度遅刻をすれば気が済むのだ!!」

「はいッ…!父上!申し訳ございません!!!」


 久しぶりに怒鳴られた……しかも大臣達の前で…ッ!

 そりゃ、大幅遅刻は申し訳なかったけれども!!だけど!あんまりだ!みんなが見てる中父上の前に正座で座らされて、ものすごい大説教だったじゃん!

 もう、今日一日大臣達にどんな顔して会えばいいか分からないよ……!ーー大臣から周囲の高官にまで話しが広がってなければいいんだけど………。


「昨晩ちゃんと、休めばよかったぁ゛ーー!!!」


 と、私はかなり後悔した。

だんだんと、1話当たりの文字量増やしていきたいですが、まだ少し先になりそうです。何卒。。

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