プロローグ
夢を、見た………いや夢を見ているんだ。
何度目だろうか。あの日から、もう数えられない程だ。
――きみはまだ、私の隣にいる…?
朧げな意識の中で、しかし確かに己に問いかけるように浮かんだ疑問の答えを、私は知っている。
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夢を見た。―またこの夢。
ーー私はこの意識が夢の中にあることを知りながら、形どころか、行方も分からないあなたを必死で掴もうと藻掻く。
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夢ならば、よかったのに……
―――目が覚めると、頬には涙の痕があった。
いつ乾いたのかも分からない涙が描いた、道のような痕に残る――瞬きをする度に嫌でも意識に入ってくる皮膚の違和感を早く取り除こうと、私は顔を洗うついでに身支度も始める。
侍女のトープが、いつの間にやら部屋の隅で私の身支度の準備をしている。見たところ、寝起き早々に感傷に浸っていた私に気を遣ってくれていたようだ。
今になって思えば、トープはいつも私の心情を何も言わずとも察して、必要な準備も言うまでもなく済ませてくれていた。
口数は少なく、初めは不思議なイメージを持っていたけど、この世界での生活を意識するようになった私には、この物静かなトープが侍女としていてくれることで、精神的な安寧がもたらされている気がする。
人の感傷と言うのは、いつまでも長引くものではないらしく、今日一日の計画が頭の中に渦巻く悲痛な気持ちを押し出すように流れて来る。いや、人間の気持ちの切り替えの能力が良いのではなくて、単純に私が精神的に削られてしまっているだけかもしれないーーとも思う。
過去を引きずらないと決めた私の意識の変化もあるのだろうか…
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そして今日もまた、きみの居ない世界で、私ではない私は、官庁へと歩いていた。
更新、時間かかると思いますが、何卒よろしくお願いします。




