63話 今日ヲ生キル
キョウさんと光の壁の前で話し込む事、小一時間くらいだろうか、リンが里の皆を連れて戻ってきた。
と言っても、全員ではなく、里の外へ出ようと考えた人だけ連れて来た。
ハッキリとした人数は分からないけど、老若男女合わせて大体30人くらいは来ただろうか…。
よくもまぁ、リンも引率出来たものだと内心思うところはあるけど、黙っておこう。
…
「皆、急な話なのに、ここまで集まってくれてありがとう!」
総勢28人(リンが数えた)
キョウさんの声に耳を傾ける。
「色々と、困惑してることもあると思う!けど、ゆっくりと考えてる時間が無いの、、お願いアタシを信じて付いて来てくれる??」
勿論、里の皆の反応なんて決まってる。
キョウさんの言うことを疑う奴なんて居るはずが無い。
『当たり前です!貴女が示す路ならば、何処までも!!』
『キョウコ様!貴女の言葉を信じて我等付いて行きます!』
『私達の為に動いて下さった事を心より感謝致します!』
崇拝…
それも分かる、キョウさんという存在無くして俺達は、ここまでやってこれなかった。そんな事、俺じゃなくたって分かる。
故に皆のこの反応は当たり前だ。
「ありがとう皆!それじゃぁ時間も無いし、そろそろ向こうへと渡りたいと思うの、、、」
そう言いながら、先ほど開いた結界の裂け目に向かって歩き出すキョウさん。
その後ろ姿を追うように、ゾロゾロと皆キョウさんの後を付いて行く…。
…
不思議と、触れてはいけない感じの光を放ち続ける壁。
その壁と壁の間に開かれた脱出口。
絶対に光に触れない事を何度も説明し、皆歩き出す。
前の人にぶつからない程度に等間隔を保ちながらも、1人、また1人と、光の壁に空いた裂け目をくぐり抜ける。
「よし、これで全員だな。」
「ねぇ、ライデン…」
「ん?どうした?リン。」
キョウさんの後を付いていった皆を見送った後に、ボソリとリンが俺を呼ぶ。
「この先、里で過ごして行くんだがら、最後に外も見たいかなー。。なんて、思ったりもした訳で、、、」
「それもそうだな、、、んじゃここは任せて行ってきて良いぜ!」
「ありがと、ライデン。」
パーッと笑顔になりながら、皆の後を付いていくリン。
もう、外の世界を見ることも無くなるのか…
そう考えると、何故だか寂しい気もする。
里に残る人達も、外の世界へ行った人達も、ひとりひとりが様々な想いで決めた事だ…
寂しいの一言じゃ済まないよな、、
さっき少し触れた、そのトラウマもあってか、なかなかあの亀裂に足を踏み出すのを躊躇ってしまう。
まぁ、触れさえしなければ問題ないし、俺も慎重に進むかね。
最後の外界を目に焼き付けておきますか。
ゆっくりと、亀裂に足を踏み出す、一歩、ゆっくりと触れないように、慎重に、また一歩。
里に突如出現した光の壁。
その壁を抜けると、俺がちょくちょく里を抜け出し、眺めていた景色があった。
「ははっ、何も変わらねぇな。」
思わず当たり前の言葉が口から漏れる。
先ほどまでの混乱を考えれば当然か…
目の前には里から離れると決めた人達がリンやキョウさんと別れを惜しんでいる姿が見える。
これからの不安、同胞との別れ、新天地に旅立つってのも簡単じゃねぇ。皆それでも里を離れるんだ、、、並大抵の覚悟じゃないのは端から見ている俺にも伝わる。
「しかし…」
振り返り里を覆っている光の壁を見る。
里の内側から見るのとは違い、里の外苑であろう部分を光がぐるりと囲う。
本当に、里は…
どうしようもない現実を目の当たりにしながら、呆然と光の壁を見つめる。
…ズズゥン…
「なっ!?」
突如鈍い音が辺りに響き渡る。
紛れもなく、目の前の光の壁からその鈍い音は発生している。
なんだってんだ!また何か…
「ライデン!少し離れて!」
俺にそう言い放つのはキョウさん…
「キョウさん!コレは!何が起こってるんだ?」
直ぐさま俺の近くに駆け寄り、光の壁へ目を向けるキョウさん…
「まいったなぁ、思ってたよりも早いみたい…」
「キョウさん…何を…」
「見て…」
そう言いながら地面を指差す。
その指差す方を見ると、誰が見ても分かる確かな変化があった。
先ほどまで、壁があったであろう場所…そこから大地に裂け目が出現していた。
「なんっ!だよ、これ。」
「範囲が狭まっているの…」
「範囲?って、まさか!?」
「私達の里は、ゆっくりと閉じ込められてるわ。」
そんな、、、いや、でも目の前の光景が全てを物語ってる。この大地の裂け目は、光の壁によって消滅させられた里の外周の一部、じゃぁこのまま時間が来ると最後には里ごと飲み込むって事なのか!?
まじまじと大地の裂け目に視線を落とす…
ほんの数センチの裂け目はどこまでも続く漆黒の隙間だ。今はまだほんの少しの隙間だが、コレがどんどん広がって行くって事か、、そして最終的に長寿の森はこの光に包まれたまま…
「コレが現実…なのか…。」
「アタシに出来る限りの事は全部やるつもり、このまま里を消滅なんてさせない。」
俺の横に立ちながら力強く言い放つキョウさん。ボロボロの両腕…その有様を見るだけで、この光の壁の強固さを物語る。しかし眼前を見つめるキョウさんの眼は、そんなことすら払拭してくれる希望の光に満ちている。
「里の中心に展開させた術、それに今から外側にも仕掛けをすれば、まだ間に合う!中に残る子達も、外で暮らす子達も、アタシが守ってみせるよ…」
「相変わらず頼もしいぜ、、、ホント頭が上がらねぇ。」
「…ふふ…ありがと。でも…ライデン…」
「ん?」
「ライデン…あなたは…」
なんだか引っかかる言い方をするキョウさんを見る。何か俺に言いたい事でもあるのか?
…ズズゥン…
「…ッまたかよっ!?早過ぎねぇか!!」
先ほどと同じように地響きと共に目の前の裂け目が広がる…厳密に言えば里の範囲が縮まってるって事なんだが、、、、
「安心してライデン…アタシの予想ではまだ大丈夫のはずよ、」
「でもよ、キョウさん、この勢いで里が…」
「時間が無いのは事実だけど、悲観するよりも出来る事をやらなきゃだよ?まずは外の皆が無事離れる事、そして中に残った皆にもしっかり状況を伝えるの…」
「分かった…。そうだよな、こんなところで眺めてても仕方ねぇ、直ぐに皆の避難を優先させるぜ。」
パッと振り返り皆の元へ走る。
さっきキョウさんが言いかけた俺への話の続きも気になったが、それは今じゃなくても良い…今は出来る事をやる。
皆、里の末路を見ている。
ただ立ち尽くしながら、何も出来ず、今まで育った里を見ている事しか出来ない皆の表情は複雑そのもの…
俺も皆と同じ気持ちだ。
なにもかも全てキョウさんに任せたまま、俺は皆を安全な位置まで誘導する。
キョウさんを気にしながら、、そして、今まで暮らしてきた里の異変を、その目に焼き付けながら…
大切な思い出も、暮らしてきた何もかも、それを置いて外の世界で暮らす同族…責める人もいるだろう。許さない人もいるだろう。けど、故郷を離れてでも『長寿人種』を途切れさせない想いもある事を、残った里の皆も分かってる。そして、託された皆も分かってる。だからこそ、今見える里の現状は残酷で、やるせない想いが募る。
…
…ズズゥン…
と、何度も地響きと共に光の壁が縮小を続ける。
さっきまで、俺達が脱出した裂け目付近に立っていたはずのキョウさんは、いつの間にか姿を消していた。
多分里の外から仕掛けるとか言っていたから、何かしらの準備をしているんだろう。
「リン…そろそろ俺達は中に行くか…」
「そう…ね、出口も遠ざかるまで時間無さそうだし、、、」
里の外…か。
もう2度と見られる事は無い、そう思うと寂しさも感じる。隣で立つリンも同じ考えだろう。
「後はキョウさんに任せよう…俺達は里の中から皆のこれからを応援しようぜ。」
「これから、どうなるのかしら…」
か細い声で呟くリン。その手が少し震えていたのを見逃さなかった。
コイツの不安も分かる、けど、俺達くらいしっかりしてなきゃ皆やキョウさんに向ける顔がねぇ。
「変わらねぇよ、里は今まで通りで、外は外、俺達は俺達だ。ちょっと旅に出るのが厳しくなっちまった、ただそれだけだ。」
「ライデン…」
「それに、お前を始め、里からほとんど出ない人達ばかりだ。何も変わらない、楽しい事、辛い事、里の中や外と何も変わらない、俺達が気にしなきゃ良いだけだ。」
楽天的な考えかもしれない。
けど、それでも俺はこの先を絶望的に考えたりしない。
未来は平等だ。受け入れるか抗うか、それも自由。
俺は…
…
…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スズゥ…ン。
毎日のように地鳴りが響く。
あれから3日…か。
里の中は何も変わらない。
流れる小川も、どこ吹く風も、大樹も、それに宿る鳥も、そして、いつも通り生活を再開した里の面々も。
変わらない。
空に目を向ければ、相変わらず忌々しいくらいに輝いている、光の檻も…
変わらない。
1日、2日、と過ごして見たが、境界線や里の広場、何一つ変化は無い。
不思議なもんだ、外から見た感じでは確実に里の範囲は狭まっているように見えたのに…。
まるで外と内側からでは見てる世界が違うような、そんな感覚だ。
キョウさんは里の外から仕掛けると言っていた。
あれから何度か、広場の小さな石に、キョウさんからの連絡があった。
仕組みはさっぱり分からないが、キョウさんの声が届き、俺達の声もキョウさんに届いてるみたいだ。
キョウさん曰く、中からの仕掛けと外からの仕掛けが上手く作用しているらしい、、広場での連絡が取れてる事が証拠だと、言っていたが、此方からは何が何だか分からない。
時偶里の外れ、キョウさんが作った裂け目、唯一外との繋がりの出口へと足を運ぶ…
外の世界はまだ俺の視界に映る、何も変わらない。
遠くにキョウさんらしき人影を見かける事もあった、あの人はあれからずっと外で何かを頑張っているのだろうか…。
俺も外で出来ることがあるなら…。
いや、よそう。
俺が、リンが、キョウさんが、皆が決めた事。
今更俺が外に出るなんて…。
俺はこの先も里の中で暮らして行く。
ソレを外からキョウさんが守ってくれる。
何も出来ない歯痒さなんて、何度味わっただろうか、俺1人が外に出て出来ることなんて何もない、ただただキョウさんに頼るしか無いのは何度も痛感している曲げられない事実。
ならば、キョウさんがあそこまで頑張って俺達の里を何とかしようとしているなら、俺達はこの里でキョウさんの望む未来を作る、それに専念しよう。それが、キョウさんに対しての俺達が出来ること。
グッと拳を握り締め、外界との裂け目を背に里へと戻る。
鳴り響く地鳴りが不安を煽るが、いつかそれすらも聞こえなくなるのだろう…。
皆が心から安心できる日がいずれ訪れる。し信じて、俺は俺の出来ることを…。
…
…
『おっ、ライデン、久しぶりだねー、元気してる??』
広場の石に、キョウさんの声が響く。
偶然広場に立ち寄った俺が返事をすると、相変わらずの調子で俺に話しかけてくれるキョウさん。
「あぁ、元気だぜ、里の中も全くもって平和そのものだ。まるであの日あったことが嘘みたいにな。」
『そっか、皆元気なら安心だよ。こっちはこっちで色々やってるから心配せずに!だよ。』
「全く、俺の考えお見通しってところは変わらねぇなキョウさん。」
『アタシに隠し事なんて出来ないよー。』
ふふふと笑い声を上げながら、いつもの調子で話を続けるキョウさん。今も里の外から何かしら頑張っているはずなのに、その事をおくびにも出さないところは相変わらずだ。
『ちょっと落ち着いてきたし、後でそっちに戻ろうと思うんだけど、そっちは今お昼くらいかな?』
「ん?こっちは…ってか、普通に昼間だぜ?」
何か引っかかる言い方だな、まるで外と時間が違うような、言い方だ。
『あぁ、そうだよね、ゴメンゴメン、とりあえず近い内に1度戻るから宜しくねー。』
「あ、あぁ、分かった。」
そう言って、目の前の石は光を失い、キョウさんの声も聞こえなくなった。
さっきまで聞こえていたキョウさんの声、それが無くなり、急に訪れる静けさ、俺の中で妙な喪失感を覚える。
変な感じだな、、それにさっきのキョウさんの言葉…何か引っかかる。
しかし、考えても仕方ない、とりあえず今やることは、後で来ると言っていたキョウさんを迎える準備でもしておくか、皆にも教えてやろう、外でずっと頑張っていたキョウさんだ、腹も減っているだろうし、今日は広場で宴だな。
そうと決まれば俺の行動は早い、近くの家に声をかけ、里の皆に伝える。
広場での宴の準備を任せ、各家庭に伝言、そして、家に戻りアイツにも教えてやらなきゃ。
…
「おい!リン!キョウさんが帰ってくる、広場で宴だ!」
バンッと扉を開けながら開口一番で捲し立てる。
眼を丸くしながら、お菓子を咥えていたリンが驚きの顔で俺を見る。
「ごっ…ング。っぶぁ!」
俺の突然の帰宅か、はたまたキョウさんの来訪に驚いたのか、咥えていたお菓子を一飲みしてリンが口を開く。
「ちょっ!いきなり驚かさないでよねっ!」
「悪ぃ、でもちょっくら急ぎの案件だったからよ。」
「もう、仕方ないなぁ、で?キョウコ様が帰ってくるのは本当なの?」
「あぁ、さっき広場で話したばかりだ、ここ2~3日ずっと外で頑張っていたし、何か持てなしてやろうかなって思ってさ、、、リン、お前も協力してくれるだろ?」
「そりゃ、キョウコ様が帰ってくるなら、何でもするわよ!広場で宴とか言ってたけど?キョウコ様はいつ頃帰ってくるの?準備はどれくらい進んでるの?料理は?」
急にスイッチが入ったように坦々と宴の計画を脳内でイメージしだす真面目なヤツだ。
「あと、そうね、お酒とかも蔵から幾つか卸さなきゃだし…新鮮な野菜なんかもあれば良いわよね、あとは…ブツブツ」
おぉ、見事にやる気満々だ。
これなら他の皆への指示はリンに任せて大丈夫そうだな。
俺はもう少し他の家に声をかけるかね。
「とりあえずリン、この後の仕切りは任せるぞ!俺は他の皆にも声をかけてくるわ!!」
「1人辺りの食材が……だから……合計8~10は用意して、後は時間を……」
何やら自分の世界に入り込んでるのか、とにかくアイツに任せりゃ大丈夫だろう。
面倒くさい仕事を押し付けられる前に、そそくさと家から姿を消す…
……
隣の家や、川向こうの家に声をかけながら、里をゆっくりと巡回する。
特別足が早い訳でも無いが、里を全て廻るのに然程時間は必要無い、小一時間もしないうちに皆への声掛けは終わり、俺は広場へと足を運んでいた。
森の木々をかき分けながら道を進んで行くと、賑やかな声と共に良い匂いが俺の鼻を刺激する。
広場には既に大勢の人達が集まり宴の準備を着々と進めている、もちろん中心で指揮を取っているのはリンだ。
本当真面目な性格故に、こういうのをやらせたら右に出るヤツは居ないな…。
大人子供関係なく指図して、坦々と作業を進めて行く。
その中に、里のお偉いさんが混ざってるのは見なかった事にしよう。
「あ!ライデン!やっと来た!椅子が足りないの!ちょっとズバッとやってきて!!」
なんだよ、ズバッってのは、分かり易く言ってくれ、まぁリンの言わんとしてることは分かってしまうのが悔しいけどな…
「了解、後は何かあるか?」
「とりあえず椅子!終わったらまた言うから!」
「へいへい、、、」
頭をポリポリと掻きながら、広場から離れた場所へと足を運ぶ。
森へ入り、ある程度人気のない所で足を止める。
目の前に手頃な太さの木を見つけ、それに向かって剣を一振り。
シュンッ…
と、風を切る音と共に目の前の木は地面へ引き寄せられるように倒れ始める…
騒々しい音を立てて皆の邪魔するのもアレだしな、、
素早く剣を振るい、目の前の木を斬り、削り、刳り貫き、細かな破片だけを辺りにパラパラと散らばしながら加工を進める。
サクサクと、目の前の木は地面に届く頃には一端の腰掛けとなり、俺はその出来たてホヤホヤの椅子を広場へと運ぶ…
「相変わらずの腕前だな。」
そんな俺の終始を見ていたマノズが口を開く。
「大したもんじゃないさ、俺にはコレしか無かったからな、皆のように術だって上手く使えない。」
謙遜もあるが、本音だ。長寿の血を引いている以外には俺には皆と違うところが多い。
「お前は昔から独りで頑張っていた、それは知っているさ、剣もお前が見出した結果の1つだろう、そんなに卑下するな、立派な才能だ。」
立派な才能…か、俺の費やした時間がコレなら、あの化け物に通じなかった事実は一生トラウマもんだぜ…。
「それに、お前は剣以外にも持っているモノがある、それをキョウコ様も気付いているんじゃないか?」
「俺…の、持っているもの…?」
「ハッキリとは言えないがな…ライデン、お前は皆とは違うかもしれん、だからといってそれは悪い事ではないのだ。お前にしか出来ない事もある。そういう希望的観測もあるのだぞ?」
なんだかよく分からないが、マノズは俺を慰めてくれてるのか?里一番の使い手とも言われた俺が、タカユキ相手に何も出来なかった…その事を責めること無く、剰え俺をまだ必要としてくれてるような言い回し……。
「アンタに心配されるなんて、俺もヤキが回ったな…」
「ふん、里の纏め役として、当然の事を言ったまでだ。お前にはこれからも里の為に頑張ってもらわなければならないからな。」
「ちっ、分かってるよ、俺の持つ力は皆の為さ、そうやって教えてくれた恩人にも胸張って言いたいからな!」
ふふっと小さく笑いながら無言で俺と椅子を運ぶマノズ、特にこれと言った話はしなかったが、お互いに思うところは一緒だろう。この先の里での生活…今はまだ何も無い、けど、この先も何も無いなんて保証は無い、だから…俺も、マノズも、そして里に残った皆、出来ることを適材適所にやるだけ。
不安はある。明るい未来なんて、まだまだ想像出来ないが、俺が、残された皆が希望を持たなきゃ先に進めない、、そして、皆の不安が取り除かれるその時まで、俺は俺の出来る事をする。
キョウさんが戻ってきたら、話をしよう。
現状、外がどうなってるかも聞こう。
皆に希望を与えられる話をしよう。
今日は、そのための集まりだ。
広場へ戻り宴の準備を手伝う。
席取りや、料理、人の配置など、着々と進み、いつの間にか日は沈む。
……
到着の遅いキョウさんを待たずに、マノズの演説と共に宴は開かれる…。
緊張状態だった皆が久しぶりに楽しく騒げている光景を見ながら、俺も酒を舐める。
リンは相変わらず運営に徹底している。
「アイツ、疲れないのかねぇ…まぁ性分ってのもあるけど。」
リンを見ながらボソリ呟く。
皆の笑った顔、不安や怯えなど見せない、昔から知ってる顔が広場を埋め尽くす。
まるで数日前の事が嘘だったみたいに…
昼間から続いていた地鳴りも宴の最中には一切気にならない程度のモノだった。
明けることの無い夜の賑わいは何時までも続く…
そして、キョウさんが里に現れたのは、それから2日後の事だった。




