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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第四章 異世界 ~聖地~
66/78

61話 泡沫の…

 





 …










 息苦しい…


 何故立っているのか自身でも不思議だ。


 膝は震え、足の先から感覚が抜けていく…

 肩から下は、どうやって動かせているのか分からないくらいにひしゃげている…

 胴体に外傷は無いが、破けた衣服の内部は、骨を通り越し内臓の至る所を壊している。

 ボロボロの身体は今にも果てそうだが、俺の中の何かが呼びかける。







 前へ進め。






 そう聞こえた気がした。







 鳥籠のような光に完全に閉じ込められた里…

 そして動き出した時間。

 皆の状況は、あの男は、


 ーーー様々な考えを巡らせながら、ゆっくりと先程まで居た場所へ向かう。





 遥か上空から降り注ぐような光…広範囲に散らばり里全体をスッポリと覆い尽くしている。

 俺の直ぐ後ろには、光の筋が地面に突き刺さり、まるでここから先は里の外と言わんばかりの様だ…。



「……なん…だか…閉じ込められた…気分だ…な。」



 里の端まで飛ばされたって事は、このペースで歩いてたら、皆の所まで着く頃には日が暮れる…。


 かと言って、立っているのが奇跡的な状況で、これ以上の酷使は出来ない…。

 向こうは大丈夫なのか…?

 せめて状況だけでも分かれば良いのだけど…



 耳を澄ましても、木々の揺れる音しか聞こえない…

 いつもの里と何ら変わらない、さっきまでのやりとりが嘘みたいだ。


 だが、自身の状態が噓ではないと知っている。


 確かにあの男が里に来たのは事実…キョウさんも奮闘し、俺もこのザマ。沢山の人が犠牲になっちまった…残された皆は無事なのか…



 ぐるぐる同じような考えが頭を巡るが、それで良い…。思考を止めるな。意識を保つんだ。



「はぁっ……はぁっ…。」



 乱れた呼吸が口から漏れる…

 身体の内部が健常でないことを訴えるように息が乱れる…。


 分かってる。分かってるさ。

 動いちゃ駄目なんだろ?

 知っている。知っているさ。

 自分の身体だ、どんな状況なのか言われなくとも分かってる。


 奇跡的に立ち上がれたんだ、一歩でも前に進めてるんなら、その奇跡を繰り返すだけ。


「はぁっ…はぁっ…」


 痛みなのか、なんなのか、もう既に痛覚なんてものを凌駕した感覚が全身を蝕む…

 そのおかげで意識を失わずに済んでいるのも皮肉なもんだが…



 ジリジリと目的の方向へと足を進めるが、一向に近づいている実感が無い…


 それもそのはず、ふと後ろを振り返れば、眩いくらいに光る壁が近くにある。

 即ち、起き上がり歩き出してから大した距離を進んでいない証拠だ。



「はぁっ…はぁっ…俺的にはもっと進んでいた気がしてたんだがな…」



 口ではそう言っても、現実的に光の壁から離れていない事実…

 自身が歩いた距離が一目瞭然だ。



 





「はっ…」




 意識せず声が漏れる。

 足が、下半身が、身体全体が、限界だと訴える。


 ヨロヨロと眼前の木を避けようとするが、足元の木の根に躓き、体勢を崩す…

 只でさえ立っているのが不思議な状態、些細な、きっかけさえあれば身体が地に伏すのは当然の結果だ。


 地表に触れる身体の全てから、痛みが襲いかかる。


 ゴボゴボっと、口の中には逆流した血液が溜まり、咄嗟の事に呼吸を乱す。



「ガハッ…、こんな事なら…リンに治癒でも教えてもらっておけば…良かったな…はぁっ…はぁっ…。」



 何気なく口にした『治癒』の術。遠い昔に里の大人から教えてもらったが、俺には使いこなす事は出来ずに放置していた…

 リンは何事も難なくこなせるヤツだから苦戦なんてしなかったんだろうが、俺は苦手分野の術は一切手を出さずにいた…



 そのツケが、このザマかよ…。



 あの時もっと学んでいたら…


 いや、馬鹿馬鹿しい…過去を振り返り後悔して、今の現状がどうこうなる訳じゃねぇしな…

 俺の今やるべき事は、皆の元へ行く。それだけだ。



 だから…




 もう少し我慢してくれよっ…






 眼を閉じ、深く息を吸い込む。

 身体の中心から手足の先まで意識を巡らせる、ズキンズキンと痛みが邪魔をするが、エナのコントロールをゆっくりと行う。


 里に蔓延する澄んだ空気から、ゆっくりと右手にエナを集める。


 ほどよい熱が手のひらに集まっていく感覚…

 体内に巡らせているエナを慎重に右手に干渉させて行く…



 ポゥッ…っと右手に白い光の球体が出来上がる…拳サイズの見た目以上に、凝縮されたエナの塊…。



「はっ…はっ…はっ。」



 意志とは関係なく漏れる短い呼吸…

 身体は、脳は分かってる。

 この後俺が起こす行動を…




「っ…耐えてくれよっ!!!!!」






 血反吐を吐きながら掠れた声で叫びながら、右手に集めたエナを全て解放する。


 高密度に凝縮されたエナは、元へと戻るように勢い良く霧散する。

 そこに自身の手のひらを盾にするように衝撃を受け止める。


 ある程度の術士が凝縮した拳サイズのエナなら、里の大樹1本くらいは簡単にへし折れるのだが、俺の集めたエナは大樹を傷付ける事も無く、目の前で小規模な爆発を起こす。


 集めたエナを身体に取り込まず、手のひらだけで受け、それを元の状態に戻す。

 ただそれだけの事だが、強引に圧縮されたエナの欠片達は、凄まじい勢いを撒き散らし、辺りの物を吹き飛ばす術となる。


 この取って付けたような術の応用が様々な技に一役買うんだが、今はこれだけで良い…。





 ベキッ…ベギンッ!…と鈍い音を立てながら、目の前の小規模な爆発を受け止める右手、その威力によって、俺の身体は背中から吹き飛ばされるように、目的の方向へと飛ばされる。


 ある程度の制御で、自身の身体がバラバラになることは避けたつもりだが、それでも距離を稼ぎたいという想いがあっての事なのか、想像以上に腕へのダメージが生々しく伝わる。



 意識が飛びそうなくらい…

 という表現など通り越して、痛みが俺の意識を支えてくれていた。





 もう…右手は駄目かもな…。




 宙に浮きながらも、絶望的な破壊音を身生で聞きつつ、冷静に分析している自分…。


 それよりも皆の元へ…


 俺の身体はどうなっても良い…

 だけど皆は!キョウさんは!リンは!

 俺の大切な人達だけは無事でいて欲しい!


 それを早く確認したい、ただそれだけだ。




 ズザッ…


 っと、身体の一部が木の枝に接触し、勢いが和らぐ…

 飛ばされた勢いなのか、自身のバランス感覚なのか分からないが、幸運にも姿勢を維持したまま身体は空中を漂う…。



 このままだと落下の衝突で、俺は駄目かもな…

 運良く致命傷にならない事を祈るか…



 目まぐるしく変わる景色も、段々と勢いが無くなるにつれハッキリと視認出来る。


 いつもの森の木々…

 よく歩いた道…

 そして…


 ふと、俺の目に映ったのは、里の人々が倒れる姿…

 そしてその近くの小川で身体を休めている複数の人影…

 その中には幼なじみのリンの姿が見えた…。


「良かっっ…た…リン…。」


 焦りにも似た感情が安堵と共に消えていく…。

 だがそれは自身の危機管理すら失っていることに気づいていなかった。




 空中から地面へと自由落下を始める身体…



 酷いやり方だが、無茶した甲斐があった…

 皆の姿を見られた。


 途切れそうな意識のまま宙を舞う俺に、木の枝や葉が次々と手荒い歓迎を始める。

 身体の至る所に細かい切り傷や擦り傷を増やしながら落ちて行く身体…



 空… 木…


 と、物凄い早さで変わる視界。

 いよいよ地面に衝突するであろう、目まぐるしく変わる視界の中、冷静にそんな事を考えてしまう。


 覚悟を決めた訳ではないが、目を閉じ、この後来る展開に歯を食いしばる…




 だが









「ライデン!」




 その声は、どこか幼さの残る、だけどとても安心できる、そんな声だ。


 フワッと身体から重さが無くなるような感覚が俺を包む。


 訪れるであろう、終焉に備えていたが、見事にまた救われてしまった。





「キョウさん…俺…」


「大丈夫なの!?その怪我いったい…」


「す…すまねぇ…せっかくキョウさんが…残してくれた時間…俺…何も出来なかった…。」


 自身の無力さを呪いたい。

 しかし、そんな俺に優しく声を掛けてくれる命の恩人。

 ガキの頃から世話になりっぱなし、本当俺の恩人だぜキョウさんは…。



「ライデンが無事で良かった…アタシも気付いたらこんな有様…いったい何があったの?」


「あの…男が…上空から光を…放っ……ッガハッ!」



 ビシャッと口の中に溜まった血を吐き出す、それを見かねたキョウさんは、俺の身体に触れながら眼を伏せる。

 キョウさんの手にはクリスタルが握られ、そこから暖かい感覚が俺に流れ込んで来る。


「ライデン、もうちょっと辛抱しててね、今治癒してあげるから…。」


「そんな、事より…。キョウさん、アイツは何を…。」




 キョウさんに介抱されながら、空を見上げると、先ほどから変わらない光の檻は轟々と風を鳴らし、上空から俺達、里全体を包み込んだままだ。




 ポゥッと、暖かい感覚が全身を巡る。

 ゆっくりと傷も塞がり、痛みも引いて行くが、失った体力は元に戻らない…かなり肉体に無茶していた故に、自身の体力は限界近くだ。





「あれは…」


 俺の治癒をしながら空を見上げるキョウさん…


 徐々にその表情を曇らせ、なにかやり切れない想いを噛み締めるようだ。





「ライデン…すぐ皆と広場に行くわよ、彼処なら里の中心…まだ時間は稼げる!」


「何を…?広場に?」




 俺の治癒が終わったのか、その場からスッと立ち上がり、皆のいる方に向けて声を上げるキョウさん…




『皆聞いて!今から私と一緒に広場まで来て!里の家の中から出てない子達も!皆呼んで来て!全員よ!』






「キョウコ様…?」

「いったい今のは…」

「何か分からないが、言うとおりにするんだ。」



 決して大きくはないキョウさんの声は、離れた皆へと響く、森の傍らで休んでいた皆も、その声を聞くなりワラワラと立ちあがり、行動を開始する。




「大丈夫ライデン?動ける?」


「あぁ、何とかな、助かったぜキョウさん…でも何でまた皆を?」


「後で…話すわ…アタシも色々と考えを纏めなきゃ…。」


「俺は皆が無事だったのを確認できて良かったんだが、まだこれから何かあるのかよ…まぁ、あの光の檻が物語ってるけど…。」


「…そうね…。」



 里に降り注ぐように広がっている光の筋を、チラッと見ながらキョウさんは皆の方へ歩き出す。

 俺も身体を起こし、急いで後を追う。







 …









「ライデン!大丈夫ライデン!ねぇ!」


「あー!うるせぇな!大丈夫だよ、キョウさんに治してもらったし、ピンピンしてるわ!」


 広場に向かう道中、というか、起き上がってすぐの所に居たリンが俺に駆け寄り声をかける。


 声色からして、かなりの心配掛けちまったみたいだな…後で何か美味いものでも食わせてやるか…。




「それにしても、さっきの人…何だったの?急に目の前が光ったと思ったら、ライデンも居なくなって…」


「あぁ、さっきも言ったけど、アイツに深入りしねぇ方が良い。お前は何も心配すんな、キョウさんも居る、さっきみたいな事にはさせねぇさ。」


「う、うん、、、さっきね、倒れた人達に頑張って治癒の術かけてたんだけど…さ…、、皆駄目だったよ。」


 うっすら涙を浮かべながら、俺に語るリン、多分だけど俺がここに帰ってくるまでの間、目の前の倒れていった里の皆を助けようと必至だったんだな…。


「お前のせいじゃねぇ…だから気に病むな!悪いのは…アイツ一人。」


 キョウさんの顔見知り…話の流れからすると元々は仲間か…そんな感じだったな。


 しかし、あの光の檻の効果は何なんだ…今のところ皆の様子を見る限り特に違和感は無さそうだが…

 だがキョウさんは里の広場に皆を集めようとしている。

 単に安否確認なのか、それとも何か他にも理由が…。



 先ほどまでの展開から、ようやく頭が回り出すくらいには落ち着いてきた。


「とにかく、リン。お前は俺から出来るだけ離れるな、これから何が起こるか分からねぇ、そして情けない事に、お前を守り切れる自信がねぇ…」


「え!?何よ!いきなり、私だって自分の身は守れるわよ!」


「ちっ、相変わらず可愛げが無いな…でもその意気だぜ。」



 俺の心配を余所に、強がりでもそう言ってくれるリンの姿に感謝する。


 対峙した俺だから分かるが、あの男をどうこう出来るなんて思わない。だが、間接的被害を食い止めるくらいなら俺にも出来るはずだ。


 …ったく

 あの男と対等に遣り合ってたキョウさんも規格外だぜ…




「ねぇ…聞いてるの?」


「あん?何か言ったか?」


「もう!本当に聞いてなかったんだ!もういいよ!!」



 プイッとそっぽ向いて俺を置き去りに先行くリン、、


 考え事してて聞きそびれたな、、、


 無事いざこざが終われば、ゆっくりと話聞いてやるか…




























里の広場は、森に立ち並ぶ木々を拓き、有事の際、皆が集まれる様に広く整備された、この森の丁度真ん中に位置する広場だ。


だだっ広いこの場所なら、里の全員集まっても見渡せる広さだ。


キョロキョロと辺りを見回す、あちらこちらに散らばってるが、大体皆揃ってるな…。

俺とキョウさんの所に来ず、この広場に残って居た奴等も何人かいるみたいだが…

彼処に来てしまった何人かはもう…。






「ライデン…」



と背中からキョウさんが俺に声を掛ける。


振り向くと、真剣な顔で俺の眼を見つめるキョウさん…


「キョウさんか…どうしたんだ?」




「やっぱり、、、さっき気が付いた時ライデンが近くに居なかったから変だとは思っていたけど…」


ん?なんの事だ?


「あの時アタシはタカユキを仕留めたはずだった…けど、タカユキが『時の術』を展開するなんて……

咄嗟に『滅拳』の発動を外に逃がしたけれど…タカユキの目的は遂行されちゃった訳だ…」


「ちょっ、ちょっと待ってくれよキョウさん、話が全然見えねえ、どういう事なんだ?」


「あっ、…ごめんなさい、ちょっと先走ってたわね、アタシはタカユキの術の効果内で動けていたライデンが…ね…」




俺は何もしていない…てっきりキョウさんが俺を奴の術から守ってくれたものだと思っていた、それにアイツもキョウさんが俺に何かしたと思っていたようだけど、、、違うのか?




「確かに俺はあの時…音の無い、時の止まった空間でアイツとやり合った…でも何が起きたか分からねえ内に、吹っ飛ばされて、さっきのザマだ…」


「やっぱり…そう…よね…。

ライデン……あの術の中で動けるなんて、やっぱり干渉してしまったのね…。」


「干渉?何を?」


「いえ、なんでも無いわ…忘れて。

でも…本当にゴメン。

貴方にはこれから重いモノを託してしまうことになりそうだし…先に謝っておくわ。」



重いモノ?なんだってんだ?さっぱりキョウさんの言うことが分からねぇ…

俺の理解力云々もあるが、実際キョウさんの言ってる事がフワフワしてて掴みようが無い…





「ね、ねぇキョウコ様、、、その、、ライデンは大丈夫なの?」



俺とキョウさんの間に身体をねじ込ませるように割り込むリン。

その声は不安に満ちているのがよく分かる。



「リン…色々ゴメンね、アタシがもっとしっかりしてれば、こんな犠牲も出さずに済んだかもしれないのに…」


「そ、そんな、キョウコ様は里を守るため一生懸命にやってくれました!それでもどうしようも無い事態なのは私以外の他の皆だって分かってますよ!だからっ!

だから…謝らないで下さい…」


「うん、ありがとうリン…。そうよね、謝るのは早いわよね…。まだ…終わってなんかないんだもの…」






そうだ…

キョウさんの言う通り、まだ終わっちゃいねえんだ。

この光りの檻みたいなのもそうだし、あの男の居場所も気になる、そしてキョウさんは皆を此処に集めていったい何を…




「なぁ、キョウさん…皆をこんな所に集めてどうするんだよ…何か考えがあっての事なんだろ?俺の事はいいから、こっちの方を教えてくれよ。」


「そうね、大体皆揃ってきたみたいだし…そろそろ準備しなきゃよね…」


「準備?」





ぐるっと辺りを見渡しながらキョウさんは、広場のど真ん中に立つ。






「皆!出来るだけ私が立っている処まで近寄って!これから先は森から出ないように気を付けて!」



広場の皆に聞こえるキョウさんの声は、特別大きいものでもないが、誰一人として聞き逃さなかった。

里の皆はその言葉通りにワラワラと広場の真ん中へと歩みを進める。




「ライデン…キョウコ様は何を?」


「俺にも分からねぇ、けど、キョウさんの言う通りもう少し近寄ろうぜ…」




キョウさんを囲む様に、広場の中央に皆集まる。


それを確認したキョウさんは、ゆっくり深呼吸をし、そっと眼を伏せる。







「皆…いきなりの事で混乱してると思うけど、何も言わずアタシの言う通りにしてくれてありがとう。」





優しいその声は多少混乱していた皆を、すぐに宥める安心感のある不思議な声だ。


そんなキョウさんの声を聞き、里の皆も次々と口を開く。




「何を仰いますか!キョウコ様の言う事です!間違い無いですよ!」

「ワシらを導いて下さった御方…誰がキョウコ様の言葉を疑いましょう…」

「キョウコ様が我等の元へ来てくれただけでも喜ばしいのです。貴女の為なら皆どこまでも付いて行きますよ。」






そんな皆の言葉を受け止めるキョウさん…





「…本当にアタシは幸せ者だ…こんなに沢山の人に愛されて、ホント、ホント、幸せだよ。ありがとう皆。」



優しい表情で、里の皆を見つめる。

慈愛にも似たその表情は母親の様な、とても穏やかな顔付きだ。



「でも、まずは私の話を聞いてもらいたいの、えっと…何から説明すれば良いかな…」




そういって、キョウさんは度々考えながら言葉を選び、俺達皆に今の状況を説明していた。








里を襲撃してきた男は、様々な種族の滅亡を企てる存在。

ほとんどの長寿人種の純血種は、この森に集まっているから今回の襲撃には都合が良かったのだろう。


そして、その企みに気付いたキョウさんが、男を止めに来たのが、さっきの話し。

ヤツの使う術は特殊なクリスタルを使用していて相当手強いらしい。









「、、、ざっと説明したけど、みんなゴメンね…」



キョウさんの話を全部は理解出来ないだろうが、みんな真剣に向き合って聞いていた。

キョウさんは里を守ってくれた、それだけだ、謝る必要なんて無い。それなのに…



「キョウコ様が謝る必要なんてありません!!」

「そうだ!悪いのは里を滅ぼす者!」

「我等長寿人種、そう簡単には滅びぬぞ!!」



辺りの皆も口々に声を上げる。

小さな里の広場の真ん中で俺達はまた1つ団結力が上がったように思えた。





だが、そのキョウさんが次に放った一言により広場は静寂に包まれる事になる。










「ありがとう、でも、聞いて欲しいことがあるの、、

 ーーーーーーーーーーー」

































「そ、そんな、それは本当なのですか?」



辺りの静けさに耐えきれなくなったリンが思わず口を開く。






「本当よ。」


「そんな…じゃぁこのままじゃ皆…」




落胆の声を漏らすリン…

無理も無い…俺だって今までのゴタゴタが片付いて少し緩んでいたところもある。


さっきまでザワついていた里の皆も、キョウさんの一言が信じられないのか、一向に口を閉ざしたままだ。




「キョウさん、残りの時間はどれくらいある…」


「早くて半日、持って1日ってとこかしら…」


「そうか、その間に覚悟決めろって事だな。」


「勝手な事を言ってるのは分かってる、けどお願い…。」



それ以上キョウさんは何も言わなかった。


里の皆も何も言えなかった…


広場から一人、また一人と、人が帰って行く…。

自身の家に。

家族と過ごすのか、友と過ごすのか、最愛の者と過ごすのか、それぞれの想いを秘め、皆広場から姿を消す。















「あと、一日、か…。」




ぼんやりと自室の天井を見ながら独り言を漏らす。



キョウさんが言っていたのが本当なら、俺達は…。

いや本当も何もねぇ、あんな状況で冗談言ってどうすんだよ、本当の事なんだ。受け入れるしかねぇんだ。


あの男が消えた理由も、目的が達成された以外に考えられねぇ。

俺達は…本当に…







…コンコン







と部屋の扉から乾いた音が響く。







「リン…か、ノックするなんて、珍しいじゃねぇか」


扉の向こうの主を確認する前に、正体を暴く。

ゆっくりと開かれた扉の向こうからは、案の定リンの姿が見える…



「珍しいって何よ…いつもちゃんとしてますー。ライデンが寝ていて気付かないだけなんだからね。」


「おう、そっか…」


「そうよ…」


「…。」


「…。」




うーん、お互いに会話が続かないな…

まぁ朝から色々有りすぎたし、それにこの後の事を考えたら、呑気に世間話なんてしている空気でも無いしな。







「ねぇ…ライデン。」


「ん?」


「さっきのキョウコ様の話し…」


「あぁ、里全体が世界から外されるってヤツだろ?」


「本当…なの…かな…って、、、多分皆も半信半疑なところあると思うし…。」




キョウさんの言っていた事が本当なら…か。

俺も思っていたけど、多分本当だろうな。




「詳しい事は分かんねぇけど、キョウさんが嘘や冗談を言う必要も無いしな。本当なんだろ、、、」


「で、ライデンは里から出るの?それとも…」


「俺は…」



俺はどうしたいんだ…

このままキョウさんの言う通り、里と一緒に世界から外されるのか…。

それが一体どういう事か分からないが、皆と一緒ならそれも良いかと考えてしまうところは有るな。



「こんな時だから言うけどよ、、このまま里で暮らすのも悪くねぇかなって思っちまった。こんな小さな里だけどよ、それなりに退屈しねえ事だってある、外に出たから幸せって訳でもねえし、このまま皆と一緒に居るのも悪くねえさ。それにリン…お前も居るしな…」


「ちょっ!?え、なに、よ、」


「リン…お前はどうなんだ?里を捨てて生きて行くのか?それとも皆とここで暮らすのか?」


「それは、皆と、ライデンと一緒が…良い…ゎょ。」


「へっ、そう言うと思ったぜ。」


「いっ!今のはズルいわよ!誘導よっ!」


「そうか?珍しく素直に発言しただけなんだけどな、、

まっ、一応キョウさんには伝えに行くか…リンも一緒に来るか?」





リンの回答は分かってる。

間違いなく俺と同じような考えのはずだ。

他の皆も同じ気持ちだろう。



「待って、私も一緒に行くわ。」


「だろうな、さて、んじゃちょっくらキョウさんに、報告でも行きますか。」




ゆっくりと身体を起こし、リンを連れて部屋から出る。

外は丁度昼くらいだろうか…陽の光が先程よりも眩しい…



案の定リンも同じだったな。


この里を離れて生き延びるくらいなら…ってな。












『アタシ達を探して…』












ふとキョウさんが俺に言った言葉が頭に過る。



なぜだか分からないが、その言葉を胸に俺は、リンと共にキョウさんの居る広場へと歩き始めた。


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