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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
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54話 普通で在る為に…

 



 海王ライナス

 オルタナや、アイリーン、メルカイザーと同じ、9つの種族の王の1人。

 ライナスは先代の海王と違い、何処の種族とも連まない。

 他種族とは距離を置き、海人族の為のみ動く。

 他種族のいざこざに興味がなく、自らの種族を護る事に己の使命を燃やす。


 と、されていた男は俺の期待を見事に裏切ってくれた。








 …







「さてと、何から話したもんかね?」


 そう言いながら場内を見渡すライナス。

 王様ともあってか、怖いものなんて無いかのような振る舞いだ。


 ルビィと顔見知りなのは何となく想像ついたが、ネオンの幼なじみだというのには驚きだな。

 見た目から全然違うし、ネオンは完全な少女だけど、ライナスは全然上…というか、成人しているように見える。


 ホントにネオンやルビィは何歳なんだろ…


 カレンでさえ28才とか言ってたしな、マナだって何年も生きてるし、もうこの世界の見た目で年齢判断が難しいぜ。




「海王ライナスよ、何故このような集まりに顔を出したのだ。」


 っと俺が考えてる間に何やらライナスへの質問が始まったぞ?俺も気になるし、ちょっと聞いておかなきゃだな。



「俺は別に来る気は無かったんだけどな、たまたまバ…このマナに同行してたら、定例会と被った、ただそれだけだ。」


 またマナの事ババァって言い掛けたな…

 隣のマナが凄い顔で睨んでるし。


「むぅ、その横の者は…其方の従者なのか?」

「こんな怖い従者がいて堪るかよ…」


 もっともな疑問を素直に投げ掛ける賢人会の老人に、苦笑いしながら応えるライナス。


 そして老人達がまた口を開く前に、意外にもアイリーンが声を上げる。



「その者は先のシグマによるケアルランド襲撃を防いだ功労者であり、妾の友人じゃ!それ以上の説明は省かせてもらうぞ。」


「え?マナお前、いつから木王と友人関係なんだよ!?」

「何言ってるの?女は酒を交わせば友人よ、ね?アイリーン。」


「ふふ、本当に海王を連れて来るとはな、流石マナよ…妾も半信半疑であったのだがのぅ…。」



 ん?なになに?マナとアイリーンは、この状況を分かっていたの?

 てか一度酒を交わせば友達って、どっかの学生のノリみたいな事言ってるけど普通にアイリーンと仲良さそうだしな…


 納得せざるを得ないぜ…。




「そ、その者が今回の立役者というのは理解したのだが、それでも其方達が、この場に現れた意図を聞かせてもらえぬか?海王よ…。」


「意図っていうか、まぁ魔族の子女様に逢いに来たけど、たまたま会議してた。そんなところだ、、、だけど、気が変わった。

 ちょっと前から扉の向こうでやり取りは聞いていたんだが、魔族に対する処が納得いかなくてな…突然の乱入になってしまったんだが、そこは勘弁してほしい。なんせ俺の昔馴染みがアレだけの事を言ってるのに、何も伝わってないなんてな。」


「それは、連合国の問題であって主等とは関係の無いところぞ。」



 賢人会の老人もなかなか引かない…


 まぁ、代表のサウロが未だに納得いかないのか、なんなのか分からないけどイチャモン付けて来るんだからな…


 アウェイな空気の中海王ライナスとマナ、それにルビィとネオン、更にはヨラムが壇上で今後の展開を探る中、ライナスが口を開く。



「関係無い…ね。まぁ確かにそう言われちゃ仕方ないんだけど…

 んじゃ、こうしよう!今ここで海人族は魔族と提携関係を結ぶ事にする!そして、後々には水聖ルビィや顔馴染みの伝手で、竜人族もこの関係に加えたいと思う!それなら提携関係の魔族がこれからの事を話してるんだ、海人族も静聴したいもんだけど、どうかな?」





 突然のライナスの提案により、場内は更なる混乱状態に陥る。




「な!何を言うか!」

「海人族が魔族と!?」

「そんな馬鹿な!」

「竜人族だと!」




 どういう事なんだ?

 何処とも連まない海人族が魔族と提携関係、後々には竜人族ともその関係を結ぶって…





「ははははははっ!面白いぞ海王よ!流石マナの同行者よ!妾もその関係に加えてもらえぬか?のぅ命王よ?主もそう思わぬか?」


「ふふふ、まさか新たな連合を組むとはな…海人族との連合は魅力的ではある。なによりも、その後の竜人族は興味深いな。」



 ライナスの提案が余程斬新だったのか、アイリーンとルミナスの二人は乗り気みたいだな…

 こうなってしまえば賢人会もクソも無くなってくるんじゃないのか?





「良いぜ木王さんに命王さん、因みにだが魔族を毛嫌いするならお断りだけどな。」


「ふん、何を抜かすか。つい先程、海王の座に着いた小僧が…妾の噂くらいは聞いて居るじゃろ、妾は亜人の特に人族が嫌いなのじゃ!」


「先程って、そこまで最近じゃねぇよ。」

「アイリーンにしてみたら、アンタの海王襲名は最近なのよ。」



 廻りの人達も混乱状態からの混乱じゃねぇかよ。




「も、木王よ!その発言は連合国を裏切るものぞ!」

「竜人族だと!?まさか!そんな繋がりが!?」

「かと言って新たに連合国入りするとなると、また色々と…。」

「しかし海人族との今後を考えるならば…」





 何処の種族とも連まない、海人族が魔族の為に連合入りを促したんだ…いやむしろ、連合を出ても新たな勢力で新しい連合を造るって言ってるようなもんだよな、アイリーンもルミナスも乗ってきた以上、ここで魔族を切るような馬鹿な考えはしないだろうな。





「ネオンデイアナ、それで良いか?俺達海人族は魔族と共に歩んで世界平和に尽くす。

 ネオンデイアナと昔遊んでいた、あんな平和な時がまた訪れるさ!戦争なんか下らない事なんて起こらない新しい未来を創り出せる!」


「ありがとう、ライナス。

 竜人族はカエラやメルにお願いしてくれるんだよね?私感謝しかないよ…。」

「まぁ…ネオンデイアナが困ってるんだったら俺達は皆協力するさ、あ!でも、カエラはともかく、メルカイザー様には、水聖からお願いしてもらわなきゃだな…。」




 …




「なんという事か…」

「連合はどうなるのじゃ!?」

「新たな区分…いや、それよりも今後の管轄下を…」

「政府も一新せねば、外交問題も!」



 おー、おー、なんか難しい事言ってるけど、お前等が魔族をハブろうとしたからこんなんなってんの分かってんのかな?





「も!木王アイリーン!其方はこれからのイグザ連合国をどう考えるのじゃ!」






 話し合いにも痺れを切らした賢人会の一人がアイリーンに問い掛ける…。






「これから?貴様何を言っておる?先程水聖が言っていたであろうに、5つの種族あっての連合国とな、、、

 貴様等は魔族を受け入れない意向を示した時点で連合は破綻しているようなものでは無いのか?そんな破綻する連合へ残る方がどうかしておる、妾は好きなように我が種族のより良い方へ行く事よ、それについて言及する気か?妾は別に構わんぞ?申してみよ。」


 まさに正論。

 ぐうの音も出ないとはこの事だな。



「ぐ、ぬぬ!」


 まぁ、マナとアイリーンで何やら密談してたみたいだしな、ライナスを連合入りさせた後、何かしらの案でもあるんだろうな…と勝手に予想。


 にしても、オルタナやライザックが未だに何も言ってこないってのは少し気になるな…

 マナとアイリーンが密談してた後にもオルタナは同じ部屋で話してたはず…

 まさか本当にただ酒を飲んでた訳でもあるまいし、何かしらの策があるのか?

 それともライナスの独断で現状は混乱してるのか?

 ちくしょう、俺にはさっぱり訳分からないぜ。

 ルビィに関しては、どうなろうと構わないって感じだしな…



 混乱からの混乱で場内は途轍もない騒ぎとなるが、そんな中オルタナの声が場内に響わたる。




「皆様方、余からも宜しいですかな?」




 ザワザワとしている中でも、しっかり響くオルタナの声に場内の人々は皆オルタナへと視線を向ける。




「人王…其方まで連合を…」



「早まるでない賢人会の方々よ、そもそも皆様方に言いたいのは、突然の海王の案も、木王、命王の発言も、全ては魔族の親和条約の結び直しが始まりである事を忘れては居るまい?

 これほどまでに、多種族から愛されし魔族を受け入れない連合国、是は如何なものかどうか今一度考え直して欲しい…。」



 オルタナめ…上手いこと被せて話してるけど、魔族の親和条約を受け入れないと、連合は破綻するって言ってるようなもんだよな。




「サウロ殿どうじゃ?これは脅しにも聞こえるかもしれんが、余は魔族を受け入れるべきじゃと思うがのぅ?」




 ピリッと緊張が走る…

 この後の代表の一言で連合国の流れは大きく変わるというのは、場内の皆気付いているんだろうな。



 少しの沈黙の後、賢人会代表サウロが口を開く。




「我が連合は、魔族との親和条約の結び直しを受け入れる。」



「だ、代表!?」

「何故に!」

「まだ議論中ですぞ!」


 何やら周りの老人共が言ってるが、代表サウロの言質は取ったぜ、これで今まで通り魔族は連合国のままって事なんだよな…。



「寛大なる素晴らしい判断です、サウロ殿。」


「ふん、大方ここまでが人王の策であろう…

 誠に曲者よの…。」


「ふはは!流石サウロ殿、まぁ海王の案には余も驚きましたがな!

 して、海王ライナスよ?先程の魔族との提携は進行中と捉えて宜しいのか?」




 オルタナの問いに、ライナスが口を開く。




「何度も言わせてもらうが、俺、いや、俺達海人族は魔族と提携関係のまま、今後の世界を考えて行く、魔族が連合国を抜けないなら、海人族が連合国入りするって事なんだよな?

 人王が言いたいのはそこだろ?」


「海人族は連合国入りに反対意見は無いのか?」


「今まで連合国入りしなかったのは先代海王の意志だ、俺の代になったんだから、そこは自由にやらせてもらうつもりだ。だから特にこれと言って反対するような事は無いな、世界平和を目指すっていう1つの信念の元、海人族も協力するぜ?」



 どうやらこの件に関しては上手く纏まったみたいだな、なんか多少強引なやり方にも見えたけど、結果オーライか…。



「では改めて、ここに魔族との親和条約の結び直しと、新たに海人族の連合入りを宣言させてもらう!!まだ何か意見があるのなら今ここで言ってもらおう!」








 場の空気と流れを完全にものにしたオルタナの宣言により、親和条約の結び直しは確定した。






 プレーリー…まず1つだ。

 お前のやり残した事は着々と進んで行くからな。










 …








「では次に…」






 先程から永遠と訳の分からない話の応酬が続く。

 正直眠すぎる…、隣のカレンは既に爆睡なのに、クラリスやオヤジ、ついでにスネ夫まで会議に集中してやがる。

 まったく、俺にとっては御経以外の何者でも無いぜ…。


 んで我が可愛い嫁達は?っと、、

 ルビィは椅子に腰掛けながら腕を組みつつ下を向いたまま動いていない…。うん。完全に寝てるな。

 ネオンは姿勢良く背筋を伸ばしているが、コックリコックリと頭を揺らしては、ハッとした顔で会議に集中してるが、寝るのも時間の問題だ。


 アイリーン…意外としっかり話を聞いている姿勢を保ってるけど、頭の髪飾りが光ってる…あいつさては、例のクリスタルで起きてる様に見せてるな…


 マナ…は、と探していると、丁度大欠伸をしている最中に目が合う。タイミングが悪かったのか気まずそうな顔をしているが、何やら俺に指で合図をしている…。


 ん?外に出ろって事か?



「クラリスや、ちと席を外すぜ。」

「うむ、まだ議事は続く、少し身体を解してくるが良かろう。」

「ははっ、ありがとよ…」



 クラリスに断りを入れてから、席を立ち場内の外れまで歩く…

 特殊な形をした場内各所には外への通用口が多数あるが、マナの出て行った出口に向かう。





 …




「っくぁー!!疲れたぁー!!」


 っと身体を伸ばしながら、徒労の息を漏らす。


「本当、無駄な話し合いが好きなのは、どこの世界も変わらないわね。」


 と、自身の肩を揉みながらマナが軽口を叩く。





「んで、なした?何か秘密の話でもあるのか?」

「秘密の話って…まぁ小休止も兼ねてね、ユウも随分眠そうにしてたし、丁度良い息抜きがてらの話よ。」

「封印の地か?」

「御名答。」


 この定例会が終わったらマナを連れて封印の地へと戻る、そこでマナが何をするのか、まだ詳しく聞いてはいないがルビィの力が必要とは言っていた。

 ルビィの力…って、結界術…か?

 用心棒の為って訳でもなさそうだしな、それこそライナスで事足りるだろうし。


「んで、封印の地でマナはルビィに何の結界を張ってもらうんだ?」

「あら?私話してたかしら?」

「普通に考えて、結界術だろ、、オルタナを封印の地まで出張らせるのは難しいし、それこそ自由の利くルビィを名指しで選んだんじゃないのか?」


「うーん、少し違うけど大方当たりね。ルビィにお願いしたいのは、私自身をタカユキから見つからない様にしてほしいの…。」

「タカユキから…か。…でもアイツは、何かしらの括りでマナを見てるんだろ?それがいきなり見えなくなったら逆に怪しいっていうか…」


 タカユキは魔眼の括りで見る事が出来るんだよな、マナは個人を見る事が出来るみたいだけど、、、

 てか俺ももっと何か視えないかねぇ?

 ショボかったけど、俺の特殊能力、干渉されたエナを視る事が出来る魔眼…


 マナやタカユキは更に色々ありそうだし…。



「そう、そこも賭けの要素よね。だから、ケアルランドを発つ前に私に結界術をかけてもらうつもり。でもそうすると今度はユウに注意が行くかもしれないの…」

「間違いないな…んでも、封印の地までの道程でタカユキが何か仕掛けて来るのは難しいんじゃねぇのか?向こうはシグマ、こちとらイグザ連合国、それに封印の地は最南端だぜ?連合国を縦断しながら俺達を追って来られるとは考えにくいけどな…。」


「だからこそネオシグマ帝国、いえ、タカユキは魔族を引き入れたのかもしれないわね。」

「ん?なんで魔族……って、そうか転移術。」

「アイツは私達の知らない眼の力や、種属の秘密、そしてクリスタルに関する情報…様々な点で上を行くわ…だけども、私が封印の地のネオクリスタルを使う事が出来れば…」

「出来れば?」

「アイツの企みを防ぎ、そして元の世界への道筋、更にはゲートの研究も再開出来るはず、今は眠っているショウヘイも協力してくれるはずよ!」


 今は眠っているショウヘイ…か…

 遠い昔からこの地に居たっていう他の面々。

 その存在はマナとタカユキの話から真実味を増している。



「何度も気になってた事なんだけどさ…この眼の力って何なんだ?」


「……私も…覚えてないし、確実な事は言えないけど、ショウヘイやキョウコ、そしてタカユキが言うには『世界を視る』力よ。」

「世界を視る…ねぇ。なんか大袈裟な気もするけど、実際問題不思議な現象続きだからな、あながちってもんだぜ。」


「私達の見えてる景色って、所詮は眼球レンズを通して脳が映像化している…というのは知ってるわよね?」

「まぁ、仕組み的なのは知ってるさ。」

「でもこの世界だと、それ以外が見えるの、普段は見えない透明なモノや、時の流れさえも。」

「時の流れ…」

「もちろん私は見えないわよ?そういうのが視る事が出来る人も居たって事は聞いていたわ…」


 時の流れが視えるなんて、凄いな。

 まぁこんな世界だし、なんでもありな感じで結構受け入れちゃうな。



 場内の議論も一段落したのか、ザワザワと声が漏れてくる…。


 そんな騒がしさの中マナは話を続ける。



「キョウコ……は、もしかしたら視えてたのかもしれないわね。」

「ナガイキョウコ…か…聞く度に特別感が増すな。」

「あの子は、普通の女の子よ、でも自身の未来を視えてたのなら、、、」



 ナガイキョウコ…

 マナが探していた人物の一人か…タカユキの話の流れからすると、生存は怪しいけど…

 でも、もしかしたら彼処に行けば手掛かりが在るかもしれない。



「マナ…キョウコの事で1つ寄りたい場所が在るんだが、というか封印の地に向かうのなら、寄る事になると思うけど…」

「どういう事?」

「前にも少し話したけど、カリキの街に『滅剣のライデン』って奴の幽霊が居るんだ、俺はそいつからキョウコの事を探して欲しいと頼まれてる、もしかしたらマナの知らないキョウコの情報を知ってるかもしれない。」

「幽霊…キョウコの力…ね。」


 キョウコの力…幾ら眼の力があってもそれを他人に見せる様な事が出来るのか?


「なぁ、マナ…キョウコの力って言ってるけど眼の力だけでそんな事が可能なのか?」

「……眼の力はあくまでも視る事よ、それを如何するかは多分クリスタルでしょうね。」



 クリスタル…か。

 生存が怪しいキョウコ…

 使用者に関係無く未だに展開されてるって事は…

 ネオクリスタルか。


「まぁ、とにかくそのライデンに一度会ってくれよ、アイツもキョウコの話を聞きたいだろうし。それに、何か伝言みたいのも預かってるって言ってたから…もしかしたらマナ宛かもしれないしな。」

「伝言…か、タカユキの話を聞いちゃったからね、余計に気になるわね。良いわ、カリキのライデンに話を聞きましょう。」


「だな、何か分かると良いな。」



 タカユキは長寿人種の集落を滅ぼしたと言っていた。その時に近くに居たとされるのがキョウコか…その規模がどれ程のモノが分からないけど、マナ的には生存は諦めてる感じなんだよな。




「ふーっ、身体も大分解れたわね。」



 小休止は終わったのか、マナはまた場内へと足を向け歩き始める。


 俺も戻りますかな、そろそろ終わってくれよ-。睡魔との戦いは一番しんどいぜ…。


 マナの後ろを歩きながら身体を伸ばす俺に、マナが問いかける…。






「ねぇ…ユウ…」

「ん?」




 ゆっくりとした歩みは止めず、後ろを振り返る事無くマナは続ける。



「前の世界じゃ思わなかったんだけどね、、、」

「あぁ…」

「昔キョウコが言ってたの、それを思い出して、私もそう思えてきた…。」

「キョウコが?」

「普通になりたい……ってね、言ってたの、あの子。私もそんな風に思い始めちゃった。普通に年をとって、学校行って、恋愛して、結婚して、そして家族に囲まれてこの世を去るの…」


「…なんか…すまねぇな。俺だけ浮かれちまって……。」

「違っ、わない、事も、うん、やっぱり少しは影響あったかも………いや別に反対するような事は無いのよ。ただ、きっかけみたいになったのかな…てね。」



 多分だけど、ずっと長いこと仲間を探してきたマナ…ショウヘイはまだしも、キョウコの安否はほぼ絶望的なのが結構響いてるんだろうな…。

 それに俺という元の世界の人間がこっちで家庭を築き始めたんだ、置いていかれる感じは分からないでもない。



「マナは、いや、マナやタカユキを含めた皆は何で年を重ねないんだろうな…」

「本当…。それだけ見ても普通じゃないわね…」




 普通じゃない…か。

 俺の視える干渉されたエナ…これ1つでも元の世界から考えて普通じゃないよな。

 それでもマナは俺を普通の人間として見てくれてるのか…。


「まぁ、言っても俺だってこの世界に来てからまだ1年も居ないんだし、年をとらないかもしれないな。」

「ふふっ、お人好しね。」

「普通の生活に戻れるさ、いつか絶対に…。だから諦めんなよ、出来る事は協力するぜ!」






 俺の言葉を背中から受けていたマナ…ゆっくりとした歩みは、やがて止まり俺の方へ振り返る。

その表情は何とも言えない寂しそうな顔をしていた…が、俺に向けて言った言葉は「ありがとう、ユウ…」その一言だった。






 何故かその表情はどこかで見たような気がした…。









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