53話 親和条約
遂に始まる東聖大陸イグザ連合国定例会。
ここでクラリス、カレン、スネ夫、オヤジ、俺の5人はシグマのスパイ容疑で呼び出されていた訳だが、オルタナやアイリーンの助け船もあってか、大事にならずに済んだ。
まぁクラリス達、軍の関係者は後程何かしらの処分が下るらしいが、俺には関係無いだろう…。
今回の議会でプレーリーの死を連合国へ伝えたオルタナとヨラム…。
混乱ざわめく中ネオンの解放を告げる。
怒り心頭の魔族達の矛先をシグマへ向ける事により連合国への確執を解消しようという案に、
賢人会の老人方々も渋々と納得のようだ。
そして、その子女様の護衛を務めていた人物を、議事会場へ呼び出す。
…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
場内の視線はゆっくりと開かれる扉の向こう側に集中している。
オルタナが内密に進めていた事案…
確かに場内の人々の顔を見れば、ネオンの件に関与して無いのが分かる。
あのアイリーンすら大人しく待っているからな…余裕が見えるのは、こちらの5人とオルタナとヨラムくらいか…。
「わぁ、人がいっぱい!」
そう言って歩いて来るのは、穢れ無き純白の髪の毛をなびかせ、魔族特有の黒いローブを身に纏った可愛い我が嫁。
ネオンディアナ・キングスター子女。
扉の直ぐ近くに居た兵士も膝を付きながらネオンをチラッと目で追う…。
ふふふ、可愛いだろ!って自慢したいぜチクショウ!!
ネオンの姿に場内の人々もザワザワと声を上げる。
「あれが子女様…」
「久しく見ていなかったが、お元気そうで何より…。」
そんな声が上がる中、ネオンが自身の後ろを振り向きながら手を招く。
長い間、ネオンを護っていた謎の人物の登場に、人々の注目は最高潮に…
そして現れる、誰もが知る人物…。
ピンク色混じりの金髪に金色の眼、普段見なかった特隊の鎧に身を包み、持ち前のロングソードを背中に背負いながら悠然と歩く姿に、皆息を飲む。
三英傑の一人、世界大戦終結の立役者。
そして我が嫁。
『水聖』ルビィ・パンダイヤ
あー!ルビィも自慢したいぜチクショウ!
「ここに来るのも久しいな…」
ボソリと呟きながらネオンの元へと歩みを進めるルビィ。
ルビィの登場に驚いたのか、それとも他のなにかに目を奪われたのか…先程までの騒がしさは静寂へと変わる。
自身の登場で、こんな風に静まり返るんだから、ルビィにとっては気分の良いもんじゃねぇな…。
でも…あれ?なにか変だな?気のせいか?
何故か皆は恐怖の対象としてルビィを見ている感じじゃないような気がするんだが…
恐怖して言葉が出ないというより、もしかして、目を奪われるってやつじゃないのか?
そんな事を考えていると、場内の一人が口を開く。
「ル、ルビィ様ッ!兜を忘れております!」
隣で座っていたクラリスが叫ぶ。
その声に場内は混乱にも似た騒ぎとなる。
「なっ!?あれが『水聖』の正体だと!?」
「東聖大陸の悪魔が、あのような出で立ちとは!?」
「ま、まさか、偽物であろう…又は同姓同名か…」
おやややや?コレはもしかして?
今まで素顔を晒して無かった流れですかね?
「くははははは!!!成る程のう人王よ!流石の妾も恐れ入ったわ!まさか『水聖ルビィ』に護らせていたとはな!」
突然大声で笑い出す
木王アイリーン・ペルシア。
連合国の王様ともなると、ルビィの素顔は見たことあるんだな…まぁ当然か…。
「木王か…久しいな、後程話したい事もある…ゆっくり酒でも飲もうか。」
「小娘が!生憎、秘蔵の酒は飲み干してしもうてな…良い酒を持ってくるなら付き合ってやろうぞ?」
アイリーンの誘いに合図をしながら、場内を見渡すルビィ。
つられて俺も場内を見渡すが、どいつもこいつも混乱状態だ、そりゃあ恐怖の対象とか、悪魔とか勝手な事言いやがって…。
オヤジとスネ夫だって見たとき驚いてたしな…お偉いさん達の中にもルビィの素顔を見たこと無い奴等は未だに信じられないって顔してるな…。
「ルビィ・パンダイヤよ…久しいな。お主が人王と共にこの様な隠密行動を取るとはな…。」
「命王か…久しい限りだな。そうオルタナを責めるな、良かれと思って内密にしていた事…」
「そうじゃの、しかしまさかネオンディアナ子女をのぅ…他にも適任者は居たと思うのはワシの考え過ぎかの?」
アイリーンに続いてルビィに気軽に話し掛けるのは、命王ルミナス・ベルジャン
オルタナより少し老け込んだ初老の男、見た目は普通の亜人種だけど、特徴的なのは頭の角だな。
確か、木人族と一緒で人族が嫌いなんだよな…。
その割にはルビィと仲良さそうな感じだけど。
「いよぉ!ルビィ!元気してたかぁ!?珍しく大勢の前で顔見せるたぁ、何か良い事でもあっかよ??」
「ライザック…。久しぶりだな、アイツは来ていないと聞いていたが、何をしているのだ?」
「さぁな!?なにやら前からコソコソやってたみたいだが、それもネオンディアナ姫関係なんだろ!?あの弟も人王の道楽に付き合ってたってのは驚きだぜ。」
大きな口を開けながら獣の咆哮にも似た声を放つ人物。
他の人達と比べて一回りは身体が大きいな…
オルタナやアイリーン、ルミナスと同じ並びに座ってるって事は…。
あれが獸王ライザック・ビースト
三英傑アイザックの兄貴なのか?
「道楽とは手厳しいな…獸王よ、余はあくまでも大戦勃発を危惧してだな…」
そんなライザックの言葉に向けて横やりを入れる、人王オルタナ・クードシャンス
連合国の王様達がルビィとネオンの登場により、次々と口を開く。
そんな連合国トップの反応を見ている賢人会や場内の人達はルビィの存在自体を信じるしかない…
「やはりあれが……水聖…。」
「各王の反応を見る限り本物のようだな。」
「素顔を初めて見たが……なんという美貌か…。」
「美しき悪魔…か…。」
おいおい、どいつもこいつも勝手な事言ってるな…そもそもなんで、ルビィが恐怖の対象なんだよ…
「さてと、、元気そうだなネオンディアナ。」
「叔父さんも、、、あとクリスタルありがとう、一瞬でケアルランドまで来られたよ!」
「ちっと張り切りすぎたんだが、無事転移出来て良かった。」
ポンポンと頭を撫でながら久しぶりの再会を果たすネオンとヨラム。
…
「さて、下らない話し合いも早急に終わらせるとしようか…。」
ネオンの横に立ちながら、相変わらずの軽い発言をするルビィ。
そんなルビィの一言で議事進行役の人が、口を開く。
「で、では!再会致します。ネオンディアナ・キングスター子女、そして『水聖』ルビィ・パンダイヤ両名共に壇上での質疑を願います。」
「はい。」
「構わん、続けろ。」
聞きたい事は皆多いと思うが、ネオンを護るのが三英傑の一人って分かった時点で話し合いもクソも無いような気がするんだがな…。
「ではワシから、『水聖』よ主はこれからも子女を護るという話しなのだが、それに異は無いか?」
と賢人会の一人が質問をルビィに投げ掛ける。
「実に下らぬ質疑だな…いちいちここで誓いを立てねばならぬ事なのか?」
流石なのかなんなのか返しがキツいな…。
まぁ確かに下らない問い掛けだしな、長い間ネオンを護っていたんだし、これからもそれを続けるのか?
なんてルビィからしてみたら当たり前過ぎて、あぁ言ってしまう…か…。
「む、そ、それは合意と捉えるが…」
「くどいっ!私が護ると言った以上それを成し遂げるまでだっ!」
ズバッと言い切るルビィに賢人会の人も狼狽える。
でもね、ルビィ…護るって言って無かったのに、いきなり逆ギレは良くないかなー。
「す、水聖ルビィよ、主には東聖大陸の秩序を守る役目として連合国軍隊長の座を任せているが、そちらはどうする気だ?」
「私以外にも適任者は居るだろう?そもそも名前だけの役職だ、今更どうでも良い勝手にしろ。」
ネオンと封印の地に居た時なんて、既に放棄してるようなもんじゃねぇか…
まぁ連合国的には、恐怖の対象としてルビィの名前を使いたかっただけなのかもしれないな…
ザワザワ…
「で、では副長のクラリスに…隊長を…。」
「いや、クラリス副長は先の議題で処分対象じゃ、昇格させてどうする?」
「しかし、他に連合国軍を纏められる者など…。」
「特隊員の中から選出するのはどうじゃ?」
「うむ、致し方ない。その方向で固めて行くか…。」
ルビィとクラリス以外の特隊なんて知らないから正直誰でも良いよ…。
あ、1人知ってるけど、まぁアレには無理だ、クラリスの様に民衆が味方しないだろうな。
「さて、私達の番だな…」
ボソリと呟くルビィ…
その一言でまた場内は静まり返る。
「まず、ここの賢人会そして五王には、魔大陸との親和条約を結び直してもらおうと思うが、何か言いたい事がある者は私に言えっ!」
完全に上から発言のルビィ様、そんな威圧しなくても誰も文句言わないと思うんだけどな…
結局ネオンを解放する流れに決まった訳だし、親和条約の結び直しも、とんとん拍子だろ。
「水聖ルビィよ、ワシから1つ聞きたいのだが…」
「なんだ?」
そんな俺の考えも虚しく、一人の老人が発言する。
「人族の者が魔大陸へ渡った際の安全確保はどう考える?ネオンディアナ子女という枷が外れたのだぞ?」
「貴様はまだそんな事を言っているのか?先ほどヨラムが話していたではないか!連合国の誓いを破る者は過激派として処す、忘れたのか!?」
「過激派を出さないのが安全保障ではないのか?」
「その為の親和条約であろうがっ!!!」
「今回のカリキ襲撃の件で、連合国内に住む多数の者が魔族過激派を恐れているのだ、その事実を無視して親和条約を結び直してしまうのは早計と言えようぞ…。」
こりゃ真っ向勝負だな。
魔族の過激派が残した爪痕は、親和条約って言葉で受け入れる事が出来るのか…って話しか…。
俺的にはネオンやスネ夫が近くに居るせいもあって、魔族に対する嫌悪や恐怖なんて何も無いけどな…。
カリキでも多少驚いたけど、それは魔族に限った事じゃないしな。
そもそもなんで連合国民は数ある種族の中でも魔族を特別警戒してるんだ?木人族だって何も言わず襲ってきた事もあるし、人種差別も甚だしいぜ…。
「私は、そういう事を言っているのでは無い!貴様等はいつまで過去に恐怖しているのだ!連合国内の民を護っている軍の内部にも魔族が居るではないか!」
「しかし条約はあくまでも、ネオンディアナ姫が此方に居るから成立していた訳であって…」
「ふざけるなよ貴様…ネオンが魔大陸に帰ろうが、此方で捕らえてようが関係ないであろう!世界大戦を終結させた英傑の1人は魔王なのを忘れたかっ!魔族含めの我等連合国であろうがっ!違うかっ!!?」
ルビィの気迫からか、はたまた正当性のある主張か、老人は息を呑みながら沈黙してしまう。
「他の者にも一言いわせてもらおう!!我等連合国は人族、木族、命族、獣族、魔族の5つの種族が共に平和に生活出来る国だ!!良いか!?平和だ!!この平和には各種族を受け入れ…そしてお互いを敬いながらの生活をする、そうやって大戦終結から今まで過ごしてきた!それを今更魔族だけ除名するとは如何なる理由か!」
「しかし水聖よ、その世界大戦の始まりもまた、魔族が原因なのを忘れてはおるまいな…」
え?
世界大戦って魔族が原因なの?
たしか人種差別とかなんとか、そんな感じだったような記憶があるんだが…
そういえばちゃんと聞いた事無かったけど…。
「過去は過去だろうがっ!その罪をも償う為に終結の手助けをしたのだっ!!おい!ヨラム!貴様も何か言え!ネオンと共に魔族の声を聞かせろ馬鹿者が!」
「馬鹿とは酷いな…ったく。」
熱くなったルビィの一言に、ククッと笑いながらルビィの横に立つヨラム。
「さてと…魔族の声ねぇ…。どうする?ネオンディアナは何か言いたい事は無いか?」
「うーん、色々あるけど叔父さんから先にいいよ。」
「そうか…?じゃぁ先に失礼するとしよう。
ーーー賢人会の皆さん、そして四王の皆さん、魔族代表代役のヨラム・キングスターです。
先ほどから述べる魔族の危険性ですが、正直言わせてもらうと完全に管轄下というのは無理です。
ですが、これは魔族に限った事ではありません。我が魔族はこれからも多種族と友好関係を築き上げたいと思っております。」
「しかしながら、まだ過激派が燻る中で其方の意見を聞かされてものぅ…。」
頭の堅いジジィだな…
正直苛つくぜ。
「頭の堅いジジィだな、連合国から魔族が離れたらどうなるか想像してみろと、これだけ柔らかく言っているんだぜ?」
おっと!?ヨラムが代弁してくれたぞ。
てか連合国から魔族が離れたら…それこそマズいじゃねぇかよ。
「それは脅し…ですかな代表代役?」
「脅し?まぁそう聞こえたんなら、そうだろうよ…こちとら魔族は過激派が居ようが居なかろうがずっと疎外されて来たんだ、アンタ等なら知ってるよな?そこら辺の講釈を述べてくれるなら助かるぜ。」
疎外…か。
魔族だからといって諸々不都合があったんだろうな…横でスネ夫がウンウン頷いているのが、いい証拠だ。
「まぁ魔族が疎まれてるのは、賢人会に魔族が居ないって時点で察していたけどな…」
「その件に関しては今の議題と関係は無い。」
「良いさ、とにかくだ魔族代表代役としての一言だが、アンタ等が魔族を嫌ってようが、我等魔族はアンタ等連合国の人達が好きなんだ…。一方的に嫌われるのは悲しいぜ?」
そんなヨラムの言葉に場内の人達はお互いに顔を見合わせながら、ボソボソと話し出す…。
危険云々よりも、同じ世界に生きる種族として、多種族と共存したいという想いが伝わってほしい…
差別意識の無い連合国だと思っていたのに、まさか魔族を除外したいなんてな…。
なにかこの流れを打開出来る案は無いのか…。
せっかくネオンが解放されたのに、魔族だけハブなんて話があるかよ、くそ!
「やれやれ、困ったものだな…」
と溜め息交じりに溢すルビィに対して、ヨラムとオルタナは肩を竦めながら苦笑いだ。
ネオンの頭を撫でながら、今の成り行きを見守るヨラム。
ザワザワ…
「ワシは魔族がそこまで危険とは思わんけどのぅ。」
「やはり、魔族が連合国へ与える各種資源を考えると切るべきでは無いのか…」
「魔族達の平和意識をもう少し見守るというのも手じゃのぅ。」
おっ!?
なんだ?なんか良い感じに話が進みそうな予感がするぞ!あと一歩ってとこだな。
ザワザワと各自話し合っている場内の面々、そんな話し合いすらも面倒くさいと言わんばかりに各種族の王様達は、欠伸をしながら場の流れを見ている。
命王ルミナスなんて寝てるんじゃねぇのか?あれ。
アイリーンに関しては髪の毛を指でクルクルしてるし…。
「あのー、ひとつ言いたい事あるんですが、良いですか?」
そんな透き通った声が聞こえると、場内はその人物へと視線を向ける…。
叔父ヨラムに頭を撫でられながらも、賢人会代表や議長の居る方向を真っ直ぐ見つめる眼差しは、兄の瞳と同じ色の紺色と、情熱に燃える真紅のオッドアイ。
魔人種正統眷属継承権第1位
ネオンディアナ・キングスター
「これは子女様、どうぞ発言を…。」
「ありがとうございます。」
ペコリと小さく一礼してから、ヨラムの横から一歩前に出るネオン。
「当時私は、魔族の一人が聖人を手に掛けた罪で処刑されると、そういう話を聞きました。だけどその真相は誰も知り得なかった、世界中にその情報だけが出回ってしまい私達魔族が悪いということで処刑は執行される…。私達魔族は罪もない同胞が処刑されるのは我慢できず、事の真相を探るためにネオシグマ帝国へと調査隊を送りました。」
これはルビィから聞いていたな…
あの時はまだ、この世界の事なんて全然知らなかったけど、魔族達と話したりしてると、この件は酷い話だぜ…。
「調査の指揮を取っていた私の兄は行方が分からず、他の面々は無惨な姿で魔大陸へと帰って来ました。そして、聖人を手に掛けた罪で処刑は執行されてしまいました。
そんな理不尽に私の父、魔王は報復せず人族を恨まず、平和的解決の為に私を人族に預け魔族達を抑えて来ました。
だけど、それは魔族が危険だから抑えていたのでは有りません!
父は、魔王はこう言いました。
『強すぎる力を持つ魔人種は多種族と共に歩み、私のような亜人種の魔族がこの先の未来を創って行く。』
そして、それが父個人としての小さな願いだと!
私や他の魔族だって怒りや悲しみは勿論在ります!だけど、そんな連鎖を続けて行く事を、父も、死んだ兄も望んでいません。
それは魔大陸の皆も分かってくれるはずです。
私達魔族は人族が憎いのではありません!
この悲しみが平和を乱す事が憎いのです!
だから!
だからお願いします!もう一度皆で平和な世界を創るために私達魔族も協力させて下さい!
お願いします!!」
驚いた…。
俺だけじゃない、場内の頭の堅いジジィ達にもネオンの声が届いたはずだ、その証拠に反対意見を呟いていた連中が、ぐうの音も出ない状況になってる。
こんな小さな姫に、ここまで言われて無下にするような連合国なら逆に願い下げだぜ…。
まぁ俺個人の意見なんだがな。
ネオンの祈りも届いたのか、賢人会を始め王様達や他の面々もすっかり引き込まれているように見える。
ルビィやヨラムもオルタナも、ネオンがここまでの発言をすると思ってなかったのか、驚き固まってるようにも見えるくらいだ。
もう、誰も文句は言わない…
このまま魔族はまた連合国と共に歩み続けて行ける、親和条約も結び直して連合国の発展に進んで行けるはずだ。
…が
俺の浅はかな考え、安堵感を壊すかの如く、賢人会代表サウロが口を開く。
「子女の仰有る事、魔族が平和的観念を持っているのは充分に伝わり申した。
が、しかし、それだけでは過激派への対策とは成りますまい。」
な!ふざけるなよ!
ここまでの想いを無視して魔族に限らず出て来る過激派への対策だって!?
馬鹿にしやがって!こいつ等本当に魔族を迎え入れる気が無いのか!?
「それは…今後の課題として、皆で頑張れば何とか…」
ネオンも過激派の事なんて考えて無かったのか、返答に困ってしまう。
仕方ない、俺だってそんな返しされたら「はぁ!?」ってなるわ。
「もう良い…ネオン。この馬鹿どもに話しても無駄だ。」
ポンっと肩に手を置きながらルビィが口を開く。
「でも!ルビィ…」
「落ち着け、ルビィよ…」
「ネオンもオルタナも黙っていろ、私も流石に頭にキてるのだ…。
全く揃いも揃って、過激派!過激派と喧しいっ!私が望んだ平和はこんなものでは無いぞっ!!それは共に戦ってきた面々も同じ事を言うだろう!連合国とは、種族の差別を無くし、互いを尊重し合い、共存して行く国を創ったのでは無いのかっ!何の為に血を流して戦ったのだ!心半ば命を落とした者達は、皆最期まで差別意識の無い平和な世界を創る!その信念を貫いてきた…貴様等は、それを侮辱しているのが分からんのかっ!!」
吼えるように叫びながら声を上げるルビィ…
本気で怒ってるルビィを初めて見たけど、怖いとかそういう感情以前に、自身の言葉に正しさという芯が通っているそのスタイルに感動してしまったぜ。
『水聖の言うことは、格好いいね…』
突如ルビィ達の背後から声が響く…。
俺の居る場所からは視認出来ないけど、腹に響くような低い声は場内の全員の視線を集める。
「お前は!?」
「何年ぶりかね?アンタとまた会うとは思わなかったけどさ…」
軽口を叩きながら、ヒタヒタと場内に入ってくる男…。
青い短髪に、垂れ目、少しだけ裂けた口の端が印象的な顔には、鱗のような模様…というよりは鱗が生えている。
薄そうな服を羽織るだけの服から、青白く透けて見えそうな肌が露出する。
「え!?なんで!?ここに!?」
ネオンがその男にいつもとは違う反応を示す。
「よぅ!ネオンデイアナ…魔大陸ぶりか、元気そうで何よりだ。」
「ライナスッ!!!」
ライナス?あれ?どこかで聞いたことあるような名前だな…
そんな混乱ざわめく場内に、男の後ろから、腕を組み歩いてくる一人の女性、マナだ。
え?あんなところで何してんだアイツ。
って!
ライナスって!?海王ライナスか!?
ゆるりと場内を見渡して、俺やアイリーンを発見したマナは軽く手を振り、また目の前の壇上へ向けてライナスと歩き出す。
「アンタの幼なじみがネオンデイアナ子女様とはね…。」
「俺は元々魔大陸出身だって言ってただろ?」
「覚えてないわよ、そんな事。」
突然の侵入者に、ザワザワと場内は混乱状態に陥る。
そんな事もお構い無しに、壇上に着いたライナスはルビィやオルタナ、そしてヨラムに軽く挨拶をした後、場内に響き渡る声で口を開く。
「あー、あー、海王ライナスだ。久しぶりにケアルランドまで来たけど、なかなか面白い事で揉めてるな…」
「か、海王よ、ここはイグザ連合国…故に連合入りしていない海人族は…」
「うるせぇ…な。」
ライナスへと発言した賢人会の一人だが、話してる最中、ライナスの一言でピシャリと切られる。
「俺達海人族は連合入りしていないのは百も承知、俺等は海を縄張りに生きてるからな、、連合入りする得も無ければ損も無い…」
「アンタ何言ってるの?」
「うるせぇよ、ババァは黙ってろ。」
マナの横やりもピシャリと切るライナスだが、マナにババァはよく言えたもんだな…。
「アンタ…また痛い目に遭いたいの?」
「おっ、違っ、先日身体が茹でられたばかりなんだから勘弁してくれよな!」
「ふん、口の利き方には気を付けなさい。」
あ、あれか、タカユキと一悶着あった時に、寝ているライナスへとエナを強制的に送るとか言ってたけど、ホントに送ってたんだな…
それにしても茹でられるって…なんだよ、おっかねぇ。
「ま、とりあえずそれは置いといてだ。
俺がここに居るのが不思議な奴等ばかりだと思うが、簡単に言わせてもらうと、俺も話し合いってやつに混ぜて貰おうと思ってな。」
魔族の親和条約の話し合いの最中、突如登場した海王ライナス。
議会はまだ続くのであった。




