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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
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52話 議会開始

 





 ルビィとネオンの2人と簡易的ではあるが、将来の誓いを果たした俺は、一応皆に報告も兼ねて、先ずはカレン達の居る軍の宿舎へと向かったのだが、皆はオルタナに呼び出されて城に向かったらしい。


 そう俺に教えてくれたルーメイに結婚報告をすると、遥か上空を見上げるように固まったまま動かなくなってしまった。


 ホントに最初見たときのキャラは何処へ行ってしまったのか…この男は。




 とりあえず全員城に集まっているなら都合が良いとルビィが言うので、そのまま3人で城へと戻る。







 城内に入り、立っていた兵士に話を聞くと、オルタナの居る部屋に、タイミング良く全員揃っているとの事でそのままオルタナの元へと向かった。


 オルタナの部屋に着くなり、クラリスの号令の元、スネ夫やオヤジが膝を付く。

 そんな中、風のようにルビィ目掛けて飛び込むカレン、本当にルビィ大好きってのが見てても分かるくらいの表情でルビィにすり寄る。


 何故かクラリスも便乗しようとしていたが、ルビィがカレンを引き剥がし便乗のタイミングを逃してしまったみたいだ。




 スネ夫とオヤジは初めて見る『水聖ルビィ』の想像と違う姿に驚きを隠せずいた。

 なんせ恐怖の対象とまで呼ばれていたのが、こんな美人の姉さんだったら、俺でも固まるわ。

 ざまぁまろってんだ。







 …







「てな訳で、結婚したわ。」



 と軽く言った途端に、クラリスに滅剣を放たれそうになったのは心底驚いたが、いつものようにルビィによって床に頭をめり込ませていた。カレンは何もせずポカーンと立ち竦んでいた…。てっきり俺の首を斬りかかっても、おかしくないと思っていたのだが、何故か「おめでとう…いいなぁ。」呟いていたのが印象的だった。




 オルタナに関しては、目を丸くしてたが、毎度の事に一々驚いてられないってな事を言っていたが、顔は混乱状態だったのを俺は見逃さなかった…




 ヨラムは明日の定例会には顔を出すらしいので、その時には報告しようと思う。

 義理の叔父になるのか?よく分からないが、まぁ親戚だな。




 スネ夫とオヤジは、ただただポカーンとしていていたが、最終的には俺達3人を祝福してくれたので、そこは正直嬉しかったところでもある。


 スネ夫に関しては、魔族の子女様と初めて面と向かって話せることに何やら言い得ぬ感動があったらしく、テンションがおかしな事になっていたが、ネオンは優しくスネ夫に接してやっていた。

 後から聞いた話だが、どうやらスネ夫の師匠ヨラムの話で盛り上がっていたらしい…。


 オヤジはルビィに今までの誤解を謝罪し、改めてルビィの親衛隊として忠義を尽くす事を誓っていた…

 相変わらず似合わない事をする奴だ。






 そしてクラリスは滅剣発動の際ルビィに顔面を床にめり込ませられたが、何事も無かったように復活。

 その後彼女の脳内では俺の結婚報告を無かった事にすることにより平静を保っているらしい、時偶話の流れで俺達の結婚話の流れになると、奇声を発しながら廊下に出て行く姿が今でも忘れられない。





 マナにも報告したいんだが、まぁ定例会が終われば会えるだろうし、それまではゆっくりと過ごすか。





 後はネオンの父ちゃんに挨拶もしなきゃだな。

 俺もついに魔大陸進出か…楽しみだぜ。









 …









 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 







「ふぃー。」




 と用意された部屋のベッドで、疲れから漏れた声を出す。



「ふふふ、お疲れの様だな。」

「あー、なんか色々あり過ぎてよ、ハイライト処理してたわ。」

「相変わらず、謎な事を言うのだな。」

「へへーん、分からなかったら意識通信すれば良いだろ?」

「ほう?懐かしいな、どうやら、また目を潰されたいらしい…」


 ニヤリと笑いながら2本指をチラつかせるルビィ…


「ちょ!冗談だろ!!ったく!」

「ははは、私も本気じゃないさ。」




 と他の人には見せない笑顔を俺に向けてベッドの端に座るルビィ…





 おっと…

 この後は…ゴクリな展開なのか?









「お風呂空いたよー。」



 そんな俺の邪な期待を見事に破壊する美少女ネオン。

 大丈夫、勝手な事はしないさ。

 僕ぁ紳士だからね。



「ユウ、なんでそんな変な顔してるの?」

「してねぇよ!顔は生まれ付きだって何回も言ってるだろ!」

「んん??なんで怒ってるの?」

「怒ってないぜ、ネオン、これは悲しみが混じった男の悲鳴なのだよ。」

「ねぇルビィ…ユウお酒飲んだ?」


「ふふっ、まぁ私達2人に酔ったのだろうな。さて、私も湯浴みしてくるとしよう。」

「おい、上手いこと言ったみたいなドヤ顔で去っていくのを止めろ、俺が惨めだろうが!」

「何を言っている?今夜は初夜だぞ?亭主に惨めな想いなどさせる訳が無かろう。」





 初夜って…言っても…ねぇ?




「ユウ…やっぱり変な顔してるよ?」

「もう!顔は直らないのー!」

「やれやれ、では先に頂くぞ?」

「はいよ、ごゆっくりー。」



 風呂へ向かったルビィに軽く手を振り、またもやベッドへ倒れ込む。

 ネオンは、いつものように風の術を上手く使いながら自身の髪の毛を乾かし始める。


 懐かしい感じだな、と言っても全然最近まで3人で生活してたのに…

 この1ヶ月が刺激的だったからだな。


「ねぇ、ユウ…」



 と髪を乾かしながらネオンが背中を向けたまま、なにやら真剣な声で俺に話し掛ける。



「ん?どうした?」

「あのさ、お兄ちゃんと話したんだよね?」

「ん…まぁ、ちょっとだけどな。良い兄ちゃんだったな。」

「うん。私の自慢のお兄ちゃんだよ。」


 プレーリー…お前との約束だもんな。

 ネオンの幸せを守るぜ…。


「プレーリーの話さ、ちょっとで良いならしてやるよ。」

「ホントに?」

「でも、本当にちょっとしか無いぞ…」

「いいよ、どんな事話したか教えてよ。」

「そっか…先ずは何から話すかな…そうだな…」





 …





「そっか、ネオンはプレーリーから継承権を…」

「うん、まだ他の魔族の皆には内緒…。お父さんや叔父さんは気付いてると思うけど。」

「アイツ…ネオンとの結婚式見たがってたなぁ。」

「お兄ちゃん驚いてなかった?」

「目を丸くしてたぜ?でも本当にネオンの事を大好きってのが伝わった…」

「うん。それは私も知ってる。」



 プレーリー…お前にもちゃんと報告するからな。



「封印の地の外れにアイツの墓建てたんだよな、定例会終わったらちゃんと挨拶しなきゃな。」

「そうだね、後は魔大陸に戻ってお父さんにも挨拶しなきゃだよ?」

「いきなり娘はやらん!とか言われないかな…」

「う、可能性はあるかも…。」

「えっ?マジで?」


 まさか魔王の娘を嫁に貰うとは思ってもみなかった訳で、勿論挨拶に行くその相手がルビィと同じ『英傑』クラスの歴史の立役者…か。

 ん?てことは、魔王の義理の息子になるの?



「ユウなら大丈夫だよ。お父さんも分かってくれるはず。」

「なんかネオンの話聞く限り不安しか無いけど、一人二人反対したくらいじゃネオンは手放さないもんねー!」


 と背中から優しく抱きしめてやる。

 相変わらず冷たい身体だが、柔らかく良い匂いのする小柄な少女。


「ちょ、わっ!ビックリするから!もうっ!」

「ごめんごめん…」


 頭を撫でながら髪の毛の匂いをクンクン嗅ぐ…


「ユウ犬みたいだよぉ…」

「そうか?くんくん。」

「ちょっと、くすぐったい-!」

「くんくん、くんくんくん。」

「あはははは!やーだー!もうっ!」


 足をバタバタと大笑いするネオンに、くんくん攻撃の手を緩めない。


 ふはは!獣化した俺の本気を見せてやろうぞ!!






「随分楽しそうな事をしているな?」




 お風呂上がりのルビィの一言に思わず冷静になる俺とネオン。

 バスタオル一枚を身体に巻き付けただけの無防備な姿で腕を組みながら上から見下ろすように俺達を見るルビィ。


「あ、れ?なんか怒ってます?」

「ふん!別に怒ってない!」

「なんか怒ってるね…」

「いや、ネオン。あれはヤキモチだ。」


 ぷいっと横を向きながら分かりやすいヤキモチを焼くルビィ…

 やれやれ女性経験ビギナーの俺に2人同時嫁はエクストラハードモードだぜ…。


「まぁこれでも食えよ、ほら。」


 と部屋にあったデザートをスプーンで1口掬い、ルビィの口元に持って行く。


 チラッと横目で見ると、顔を真っ赤にしながらゆっくりと俺の方を向くルビィ。



「本来は結婚式でやるはずだったんだろ?」

「お、覚えてたのか…。」

「まぁな。一応形だけでも、こっちの世界の結婚の儀式みたいにしないとな。ほれ、あーん。」

「…ん。」


 パクリと抵抗無く食べるルビィ…

 いつぞやの風邪引いた時を思い出すぜ。


「旨いか?」

「特別な味だな…」


「ユウ…私も…」

「了解お姫様。ほれ、あーん。」

「…はむ。」



 ネオンにも1口食べさせる。

 満足そうにモグモグと味わっているネオンも、未だにバスタオル一枚姿のルビィも嫁なんだよな…。

 当たり前だが結婚なんてしたことないから初めて尽くしだ。

 でも、こういう何気ない事を、何度も繰り返す事によって俺自身ようやく結婚したという実感が湧いてくるんだろうな。







 そんなこんなで結局いつも通りの夜を3人で過ごした。








 …











 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 







「では、ここで待機していて下さい。」



 大議事場へ続く廊下で俺達5人に告げる兵士。


 クラリス、カレン、スネ夫、オヤジ、そして俺は、定例会真っ最中の大議事場へ入るべく待機させられていた。



「ふーん、もっと罪人扱いされると思ってたんだがな…結構普通じゃねぇか?」

「俺もそう思ってたぜボンズ、それにしても向こうは騒がしいな…。」

「もう議会は始まってんだ、そりゃ騒がしいだろうよファル。」

「ねー?ご飯まだー?」

「貴様等もう少し大人しく待って居られないのか…。」



 と言ってもなぁ…

 向こうから聞こえてくるのは訳の分からん難しい話だし、、俺達5人の出番まで待機とか言われてもなぁ…。



 両開きの大きな扉の向こうからは、やいのやいの騒がしい声が飛び交う。

 王様5人で話をするもんだと思っていたのに、ギャラリーのようなお偉いさん達が何人も居るんだから、そりゃ騒がしくもなるわな。




 …




『では次の議題に移るとしようか。』




『はっ!つきましては先日南の港街カリキでの一件ですが、敵方はネオシグマ帝国と判明その中には魔族も居たと言う情報もありますが、人王オルタナ・クードシャンス様お応え願います。』



 おっ?オルタナの質疑応答ってヤツだな。



『人王オルタナである。

 先日カリキで起きた件は皆の者存じ上げる事と思うが、先ずは魔族の有無から率直に言わせてもらうと、魔族はネオシグマ帝国と共に連合国を攻めた事は事実である。』


『なにっ!?魔族は連合国との協定により不可侵条約があるではないか!!』


『落ち着いて聞いてもらおう、連合国を襲った魔族は過激派と呼ばれる者達の集まりであり、魔大陸の総意では無いということだ。』




 そうだそうだ、魔族全員が連合国を攻めることに賛成するわけねぇだろ!馬鹿かよ!




『その件は、本日不在魔王フェンネル・キングスターの代役として王族のヨラム・キングスターを呼んである。ヨラム…ここへ。』



『なっ!いつの間に!?』

『急に現れたぞ!?』




 とザワザワしている場内…。

 多分転移で、いきなり姿を現したんだろうな…ヨラムらしいぜ。




『初めまして、の方々も多いようだな…御紹介与りました魔族代役ヨラムと申します。以後お見知り置きを…。』

『ふむ、さてヨラムよ魔族が連合国を襲った事は存じていると思うが、それは魔族全体の総意なのか?』

『御冗談をオルタナよ、此方は子女様を連合国へ引き渡している身、ネオンディアナ姫の事を考えたらそのような大それた事など出来る訳も無かろうに…。』




『し、しかし!現に魔族の一部の者はネオシグマ帝国と通じていたではないか!』

『全くだ!それを信じろと言うのか!』




 とガヤが煩いが、聞いたことのある透き通った声が響き渡る。



『やかましいぞ小僧共!揃いも揃って下らぬ事に目くじらを立てるな!そこの魔族代役の能力を考えれば、ここに居る全員を皆殺しにする事すら容易いであろう。それをせずそこに立っているのが不可侵の証、違うか?』




『木王よ、暴論ぞ…。』

『しかし、木王の言うことも一理あるかと…』





『ふん、暴論とは片腹痛いわ。そもそもカリキ襲撃は不発に終わったのだ、それで充分であろうが、まぁ前日のケアルランド襲撃にも魔族が関与しておると言うのなら話は別じゃがな?』




 アイリーン、なかなか良い事言うじゃねぇか。

 これで魔族に対する疑いは少し減ったような気がするぜ。




『ケアルランド襲撃はネオシグマ帝国の仕業と木王の元より報告を受けておるしな、その点は問題ないであろう…。それで良いかな賢人会の皆様。』




『むぅ、致し方ない。』

『これ以上無意味な問答なぞ無用。』

『水掛け論に持ち込まれてものぅ…。』




『どうやら、魔族の総意では無い事が分かってくれたようだな、助かったぜオルタナ王、そしてアイリーン王。』





 ヨラムがオルタナとアイリーンに感謝の意を伝え、この議題は流れるみたいだな。

 これで連合国の魔族への当たりが和らぐと良いな。





『では、次の議題でもある、ネオシグマ帝国と通じていた者の処遇についての議論に移ります、まずは、その者達に話を聞く為、この場で証人喚問を始めたいと思います!』



 げげげ!!この流れで俺達5人出番なの?

 カリキ襲撃もケアルランド襲撃も、俺とカレンが一役買って解決したのは良いけど、それはそれで説明しにくいなぁ…おい。





 と、中の様子に聞き耳を立ててると、目の前の扉がゆっくりと開かれる。



 ゴクリ…と生唾を飲み込む音が聞こえそうなくらい、扉の向こうでは多くのお偉いさんが待ち構えていた。





 …




「よし、行くぞ…付いてこい。」


 と言いながらサクサク歩き出すクラリス。

 あれだけの光景に動じないのは、流石連合国軍副長ってところだな。


 クラリスの後をスネ夫、オヤジ、カレン、そして俺の順番に付いて行く。


 扉をくぐり抜けると、まるで円形闘技場(コロッセオ)のような造りの議事場が俺達を迎える。

 中央の壇上前に5人並ぶが、どう考えてもこの位置は晒し者以外の何者でも無いなこりゃ。



「さて、私は賢人会代表サウスである。諸君等には嘘偽りない証言を誓っていただこう。」


「はっ!イグザ連合国軍副長クラリス、以下4名神聖なる議事の元、証言する事を誓います!!」


 と膝を付きながら誓いを立てるクラリス。

 そのクラリスに同調しながら、一糸乱れぬ動きで膝を付く、スネ夫とオヤジとカレン。

 もちろん遅れ気味だが、必死に俺も合わせる、、


 さっき練習しておいて良かったぁ…。





「ふむ御苦労、では議事を続けたまえ。」

「はっ!では始めます。

 先ず連合国軍副長クラリス!元同部隊小長ビシャスについての報告を!」


「はっ!元第三部隊小長ビシャスですが、第三部隊副長ゴーダの元、イグザ連合国南部の調査及び管轄を半年程前から、マルティア城跡にて行っていた事は軍の資料にも掲載してあります。私自身の南部調査の際、マルティア城跡で同第三部隊カレン、ファルコ、ザンザスの3名と小長ビシャスを含めた4名が不祥を働いた為カリキへの岐路に同行致しました。」


「その際、ビシャス元小長に不審な言動等は無かったのですか?」


「私が見る限り不審な動きがあったとは思えません。それは同行していた、ここに居る4名も同じ事が言えるでしょう。」



 ウンウンと頷くスネ夫とオヤジ。

 まぁ確かにカリキ襲撃までは本当に仲間してたもんな、、、、未だに信じられないってのが本音だぜ。


「では、ビシャス小長がネオシグマ帝国と通じていた事は知っていましたか?」


「勿論知り得もしなかった事柄です。」


「なるほど…ではマルティア城跡からカリキ襲撃まで常に行動を共にしていたと報告を受けていますが、それならばどのようにネオシグマ帝国を手引きしたと考えますか?」



 うん、たしかにな。

 ビシャスさん1人でコソコソやってても、あの日にシグマの軍艦が攻めるタイミングは少し強引だった気がする、それにあの日クラリスが…いや俺達がカリキに着いていた事に驚いてたベルンもそうだ。


 やっぱあの前日のロレース襲撃くらいまでが敵の策で、それに失敗するとは思って無かったからベルンも驚いてたし、シグマの襲撃もクラリスとカレンの活躍によって失敗に終わったんだよな…。


 って当事者の俺達なら分かるけど、これの説明を間違えると魔族の評判も悪くなるし、尚且つ俺達5人の疑いも晴れないパターンだ…。


 てかこの話はオルタナにしておいたはずだし、何とかまとめてくれるんだろうな。

 というか、それしか方法が無ぇ!



「ネオシグマ帝国を手引きしたのはビシャス以外の者と考えます。ビシャスは手引きした者と通じていただけで、直接的なカリキ襲撃には関わっていない、私的意見では、そう考えます。」

「なるほど…。では貴女達5名はビシャス元小長と今でも繋がってないという証明が出来ますか?先日のケアルランド襲撃はネオシグマ帝国の者による仕業と報告が上がっています。今回も此方の情報を流し手引きしたのでは?」



 ってくるのは想定内だな。

 俺でもそう思うわ。



「はっ!此度のケアルランド襲撃については、どのような計画で実行されたなど、皆目見当も付きません…

 が!私はケアルランドへ向かう道中、ザンザス、フアルコ両名は襲撃の被害者、そして、カレン、マガミ両名はカリキ襲撃、及びケアルランド襲撃解決の立役者、故にネオシグマへの手引きは考えにくいかと思われます!」


「確かに理屈は通っています。賢人会の皆様、何か有れば挙手の元、発言を願います。」



 と議長なのか進行役なのか分からないが、彼の一言により、賢人会の1人から質問を受ける。



「ワシから聞きたい事があるのじゃが、、そこの『首斬り』は以前連合国軍内で問題を起こしていたな。その遺恨は無いのか?」



 うへぇ…カレンの昔の不祥事かよ…。

 ここまでくると何でも有りだな、疑わしきはなんとやらってことか…。



「別に…何も無いよ。」



 いつも通り素っ気なく応えるカレン。

 そんなカレンの発言に分が悪いと感じたのか、ようやくここでオルタナが立ち上がる。



「議論も途中ですが皆様。此度の論をもう一度客観的に見ると、先ずここに並ぶ5名はネオシグマ帝国の密偵と道中を共にしてしまったというだけ、ただそれだけの理由でここに居るのは何とも滑稽…。

 カリキ襲撃及びケアルランド襲撃解決は其処に並ぶ2名の活躍によるもの、これは既に周知の事実。故に今の『首斬り』に対する質疑も不毛と捉えますが?」


「っく、人王は随分と『首斬り』を買っているようじゃな、、、まぁ良い今の発言は取り消そう。」


「寛大なる心遣い感謝致す。ただ密偵と道中を共にしていた事も有り、クラリス副長には何らかの処分を与える、是によってこの議論は仕舞にしようと提案するが如何かな?」


「ふん、責任を取るのなら何ら問題有るまい、好きにせよ!」




 よっしゃ、流石オルタナ!これで俺達5人は晴れて無実って訳だな!




「で、では、続きまして、、、ぇっ?」



 議長の声が止まる、何やら動揺してるみたいだが、まさか例の話がこのタイミングで?

 もう少し場を柔らかくした方が良いんじゃねぇのか?


 とオルタナとヨラムの方を見るが、2人とも全く動じてない。というか早くやれ!と言わんばかりの顔をしている。



「どうした!議事を進めよ!」


「し、失礼致しました。で、では次の議へ移りますので、副長クラリス以下4名はお下がり願います。」






 そう言われ、俺達は議事場内の席に案内される。見事な1人掛けソファーはとても座り心地が良く、思わず寝てしまいそうになる。



「え、えー。では次の議題、魔人種プレーリー王子死去に伴う今後の連合国の対策について、です、、、え、えー、オルタナ王詳細をお聞かせ願います。」



 議長のその一言により、場内は巣を突かれたハチのような騒ぎになる。


「なっ!!!王子が!!」

「そんな!どうするのだ!?」

「何故!先日救い出したばかりではないか!?」




 混乱犇めく中、オルタナが、腰を上げ壇上へ降りて行く、その後をヨラムが付いて歩く姿を見て場内の人々は息を呑む…。



「代役は知っておるということか…。」

「魔王自ら場に現れないのは、この為か…。」



 などとボソボソ話す声すらハッキリ聞こえてしまう、静まり返った場内。






 オルタナとヨラムが壇上に立つと、場内の全員が視線を集中させる。

 それだけ事は重大って訳か…。




「さて此度のカリキ襲撃の際、我が連合国の精鋭の働きにより、プレーリー王子奪還に成功した。

 是によって魔族側からの危険は薄れ、本日子女の解放に望むはずだったが、我等の力及ばず王子は先日息を引き取った。」




「ならば子女解放は見送りか?」




「いえ、余は子女解放を宣言しようと、この場に立っております。」





 ザワザワ…


「狂ったか人王!」

「解放に至れば魔族は東聖大陸に渡って来るに違いない!」

「何とかして王子の死を伝えない様にせねば…」



 口を揃えてネオンの解放に反対する面々。

 そんな中ヨラムが口を開く…。




「あー、いいかな?」



 ザワザワと混乱状態にあった場内も、魔族代表代役の一言にピタッと静まる。



「今回のプレーリーの件、俺個人的に怒りや憎しみとか無いか、と言われたら勿論あると答える…。これは魔大陸や東聖大陸の魔族殆どが同じ考えだ。」


「だ、代役よ、ならば報復か?」


「何を馬鹿な…我等魔族は多種族共存関係を壊す事は無い。これは個人的意見ではなく、魔人種の長…魔王フェンネルの意思も同様である。」



 シーンと静まり返る場内。

 自分達の危惧していた事態は、魔族代表代役のヨラムの一言によって不安から安心へと変わる…。


 それだけヨラムの一言に力が有るって事に俺は驚きなんだがな…。



「妾からも良いか?」



 と聞き慣れた声が聞こえる。

 木王アイリーンだ。


「先程はどうも、アイリーン王。どうぞ?」



「主等が幾ら和平を仄めかそうが、実際問題過激派がまた動き出すのは明白、其奴等の対策、及び処遇はどうする?過激派とはいえ同じ魔族、同胞をどうするか主の考えを聞きたい。」


「過激派という呼び方は好きでは無いんだけどな…まぁ簡単な事。今後魔大陸にて同じ発表をするが、勿論連合国への侵略行為は御法度、それを守らない者達には各自対処してもらっても構わないって事です。」


「ほぅ?過激派かどうかは処する者の判断に委ねる…と?して、魔大陸の魔族の怒りや憎しみ、そういった負の捌け口はどうする?下手に抑え込めば更なる過激派を生み出すぞ?」


「その為のネオンディアナ子女解放です。」


「ふふふ…。成る程…連合国への確執を無くし、怒りの矛先、即ち魔族側の敵をネオシグマ帝国1本に絞るそういう事か…」


「流石は木王、話が早くて助かる。」




 2人の会話を聞いて改めてこれからの打開策を理解した場内の面々…。

 心なしか表情も和らいでいるように見えてくる。



「確かにそれならば、怒れる魔族達も連合国よりシグマ帝国へ向かうはずだな。」

「うむ、子女解放をする事により、連合国の協力関係を誇示出来るのぅ。」

「ならば、人王の案受け入れるのか?少し早計では?」

「しかし、解放せねば…また新しい過激派が生まれるのも事実。」



 ワイワイガヤガヤと色んな意見が飛び交うが、この流れならネオンを魔族側に還すのは容認されそうだな。


 長い間、あの何も無い封印の地で過ごしていたんだ…もういい加減自由にしてやって欲しい。

 当初の世界大戦再発を完全に防げた訳じゃ無いけど、ネオンが拘束される理由は無いはずだ。



「して…代表代役、そして人王オルタナよ、子女解放をした後はどうする?それこそネオシグマ帝国の手の者が子女を狙って来るやもしれん。そこの対策は考えておるのか?」


 賢人会の老人がもっともな発言をするが、ヨラムに代わりオルタナがそれに応える。



「まず皆様に言いたい事は、子女の匿う場所も人物も全て内密に行っておりましたが、それを責め立てる事も無く、今日を迎えられた事に感謝を…。

そして子女解放に伴い、長い間子女の護衛をしていた者の紹介したいと思います。」


「ふっ、妾も知り得ぬ情報が遂に解禁とはな、いつも通りの辛気臭い議会より楽しめるというものよ…。のう命王よ?」

「ようやく人王の企みの一部が分かるという事か…彼奴の秘密裏に事を運ぶ癖、事が明らかになる時が楽しみの1つとも言えよう。」



 アイリーンの横で話してるのが、命王って奴か…。

 2人ともシグマ嫌いで有名なんだっけな…。

 今回の議会でシグマが魔族側の対象になった事は2人にとっては良い事なんだろう…




「では、入るが良い!」




 オルタナの一言により扉が開かれる、扉の奥から見える人影…

 場内の人々は、どんな人物が現れるのか息を飲みながら、入場を待つ。





 議事はついに、ネオンの解放へと移るのだった…


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