表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
54/78

49話 可能性を求めて。

 




 空間、時間、因果の法則

 自然の科学と、人類学者達が追い求める科学と化学


 しかし結果を観測するものが人である以上人の限界は超えられない事実。




 原因があり、結果がある。

 歴史に刻まれた運命というやつは同じ結果に導かれるように収束していく。


 故に過去に戻ってやり直そうが、結果は変わらない。


 これがマナの言うゲートシステムの欠点の1つ。





「俺は原因からの結果は途中の過程次第では変えられると思うんだが違うのか?」

「因果律っていう不思議な力で、私達研究者は納得してるけど、正直解明出来ないのが本音よ。それ故にタイムマシンのような時間の遡りは観賞する事は出来ても、干渉は出来ないとされているのよ。」


「んじゃぁ、やっぱり俺が元の世界から飛ばされた以上、遥か昔にここで過ごしてたってのは無理があるんじゃねぇのか?」

「そうね、話を聞く限り同じような時代みたいだし、それに日本で100年前と言ったら文明が違いすぎるわ、少なくとも100年200年じゃ足りないくらいの膨大な時間を体感的とは別に、当時の私達はこの世界で過ごしていたはずよ?」

「マナが目覚めた時は結構種族は居たのか?」


「この前の話の途中になるけど、私が目覚めた場所は本来皆が住んでいた場所とは違う所だったの…。でも、種族はかなり発達していたわ、今と同じように言語も使えるし、街だって発展してたわ。」

「なるほどね、元々研究していた所じゃなかったから、2人はタカユキの元へ行ったって事か…」


「そう…ね…。」

「あ、いや、そんなつもりじゃ無かったんだが、、悪い。」

「気にしてないわ、それよりも随分遅いわね……」


「あぁ…そうだな……」


「いつまでここに、こうしているのかしら?」

「まぁ、そろそろ迎えが来るはずだ。」





 今俺とマナはケアルランド城の1室で寛いでいる。

 簡易的な客室のような所で軟禁状態だ。

 と言っても迎えが来るまでなんだが、どうにも待機状態ってのが性に合わない。

 他の皆も気になるところだが、俺の予想だと明日の尋問会まで、ここにいる流れだよな……多分。









 ……








 遡ること半日前…











 ……









「お?空が青いじゃねぇか!タカユキの野郎ちゃんと術を解いたんだな。」

「ユウちゃん、カレン疲れたー。」

「私も疲れたわ…というか、まだ夕暮れ前なのね。」


「まぁ、俺も疲れたわ、、結構な時間歩いたりしたと思ったんだが、まだそんな時間…か。」

「とりあえずどうするの?また宿にでも戻る?」

「まぁな、一応オヤジとスネ夫が心配だしな。んでもって街の様子も気になるし、一度戻る方向ではいたぜ?」


「そうね、術は解除されても、他の人達の状態は心配ね…」



 森の中を歩きながら今後の方針を固めていくが、如何せん人の気配が無いので術が解除されたという感覚があまりない。


 シングルの男を付けてた時も感じていたが、城から相当歩いたんだよなぁ…そりゃ帰りも歩かなきゃだぜ…



「カレン、おぶってピョーンって出来ないのか?」

「ん?いいよ?」

「冗談だよ、本当にやるからなお前は…」




 カリキの時は抱えられながら海を渡ってたしな…



 こんな下らない事を言いながら森を歩くのも悪くはない。

 今の今まで緊張しっぱなしだったから脱力感というか、なんというか、、しっくりこないけど、1つの問題が片付いたような安堵感故に心身ともにリラックス状態なのかもな。




 ……




「ん?街の入り口が見えてきたな。」

「色々と長かったわね。」

「んだな、腹も減ってきたし何か旨いものでも喰いたいぜ。」

「カレンもお腹空いたー。」


「私はお酒が飲みたいわね、、、」

「お前昼間っから飲みまくってたじゃねぇかよ。」

「まだ足りないわよ。」

「カレンもお酒のみたいー。」

「あら?カレンもお酒飲めるの?」


 ちょっと前までドンパチやってたとは思えない会話だ。

 緊張感の欠片も感じられない。


「んじゃマナのオススメの店でも行ってゆっくりしようぜ?」

「そうね、ケアルランドはどこも美味しいから近場の所を案内するわ。」




 森の出口から街の入り口へ向けて、道も舗装され辺りには建物も増えてくる、そんな建物の影から見える人影に、術が解除された事を改めて確認する。



「お!人が歩いてるな。」

「しっかり解除されたみたいね。」



 空だけ戻ってたんじゃ話にならねぇからな。


 街の近くでは人々がさっきまでの不思議な現象について話してるのが聞こえてくる。

 突如爆音と共に空が染まり、バタバタと倒れていったんだし、そりゃすぐに普段通りって訳にはいかねぇよな。



 街を歩き、ゆっくりと城を迂回しながら中央地区へと向かう俺達。

 オヤジ達、目覚めたら俺らが居ないんだもんな、ビックリしてなきゃいいけど。


 スネ夫あたりは今頃クシャミでもしてそうだな。



 そんなこんなで街の人達の賑わいも徐々に大きくなってくるが、混乱状態の街中を闊歩するには人が多すぎる。


 こんだけ外に人が出てると迷子になってしまいそうだぜ。




「えっと、、土地勘ねぇからどっちの方が宿に近いんだ?」

「こっちから回って行った方が近いかしら。」

「サンキュー、カレンはいるか?」

「いるよー。」


 と後ろから声が聞こえる、低身長のカレンは目を離すとすぐに消えるから心配だったがどうやらまだ無事らしい。



 マナのナビに従いながら手前の道を入ると、見慣れた鎧に身に纏った兵士が数人こちらを指さしながら走ってくる。


 ん?なんだアイツ等?




「いたぞ!あそこだ!」



 あれ、俺達の事だよな。




 あっ!

 思い出した、あれは今朝街の入り口で絡んで来た特隊の奴等じゃねぇか……


 …って忘れてた!!!

 そうだよ!何故か知らねぇけど追われてるんだった!!!!




「おい!カレン!マズいぞ!」

「どしたのー?」


 と気の抜けた返事をしながら俺の後ろから顔を出すカレン…




「首斬りも一緒だ!!」




 とあっという間に目の前を塞ぐ特隊の兵士2人。


 うへー、ダリぃな。てかカレンの強さを身にしみて分かったんじゃねぇのかよ。

 それとも何か作戦でもあるのか?



「貴様等捜したぞ!」

「え?なに?何かあったの?朝の件か?見逃してくれたじゃねぇかよ、、、」


 カレン同様に惚けたふりしながら相手の出方を見るが、この自分達が偉いという高圧的な態度は未だに慣れないというか、気に食わない。

 どうせスパイ容疑の人間をウロウロさせない為に捕まえに来たんだろうけどな。




「貴様等4人には捕獲命令が出ていた。もちろん連合国軍全ての兵士にだ。」

「ほらみろ、俺達を捕まえに来たんじゃねぇかよ。

 ってか、ん?出ていた?」

「たった今捕獲命令は取り下げられた。」

「ふーん、何かわかんねぇけど助かったわ、んじゃなんでまだ、特隊様達が俺達を捜してたんだ?」


 命令が取り下げられたんなら、別に関係ないじゃん。

 それともアレか?あの頭の悪い男、エルマとか言ったか?アイツに何かしらの圧でも掛けられてるのか?



「木王アイリーン様の勅令により、お前達を保護する。」

「は?アイリーン?」

「今言った通り連合国軍全ての兵士がお前達4人を探してるのだ、しかし命令が取り下げられた今、その伝達よりも早く一般兵がお前達を見つけた場合、何かあっても遅いという事で、我等特隊が保護を申し出たのだ。」


 ほぇー、てかアイリーンがねぇ。

 アイツが一番俺達を狙ってたのに…



「まぁ、そういう事なら保護されても良いけど、見ての通り全員じゃねぇんだよ。だから先ずは全員合流したいんだけど…」

「安心しろ、国軍第3部隊ザンザス、ファルコの両名は無事保護してある。」

「あら?仕事早いねぇ、んじゃ問題ないけど、、、」


 てか保護してもらえるのは良いとして、マナと話したいんだよな…昔の事とか、これからの事とか…



「あのさ、コイツも連れなんだけど、一緒に行って良いかな?」

「まぁ、見たところ危険は無さそうだし良いだろう。」


 見たところね…

 お前等が想像している以上に危険だぞ、マナは。




「って訳だ。カレンもマナも良いよな?」

「いいよー、でもカレンお腹すいた-。」

「保護してもらえるなら歓迎ね、もう少しゆっくり今後の話がしたかったし、それに私もお腹空いたわ。」


「お前達は食い気のが強いのな…」







 ……








 まぁ、そんなこんなで特隊2人に付いて行くと城の近くの宿舎でオヤジとスネ夫に再開する。



「おいおい!無事だったのかボンズ!」

「全くどこ行ってやがったガキ、目覚めた時は辺り一面混乱状態だったから、心配したぜ。」

「悪い、悪い、ちっとばかしあの不思議な現象引き起こしたバカに物申してただけだよ。」


「相変わらずの無茶してきたんだろ?ったく。」

「ガキの無茶は今に始まった事じゃねぇからな…」

「2人の中で俺はどんな存在放ってんだよ、ってかオヤジ、用事はもう大丈夫なのか?」



 オヤジはケアルランドに早く着きたがってたしな。


「おう、ここに来る前に済ませて来た。多少なりバタバタしちまったが何とか定例会前に済ませて良かったぜ。」

「オッサンも身内には甘いからねぇ…」

「おいファル!勝手な事を言ってんじゃねぇ!」



 身内の事って、、、あぁ…ベルンの件か。

 従兄弟って言ってたしな、カリキじゃ護衛隊の副長やってたんだし、諸々あったんだろうな…



「さて、とりあえず俺はアイリーンの所に顔出しに行くけど、お前等はどうする?」


「ボンズ…気は確かか?」

「ガキ、おれはまだ死ぬ気はねぇから行くなら一人で行ってこい。」

「カレンもお腹すいたからここにいるー。」


「お前等……」



 まぁ、俺とカレンは直接逢って話してるからアレだが、オヤジとスネ夫は完全に警戒してるな。

 てかカレンは来ないのかよっ!アイリーンはともかく、あの側近のルーメイが苦手なんだけどな。


「私は一緒に行こうかしら?」

「ふぇ?マナはてっきりここで酒でも飲んでるのかと思ってたけど?」

「そこまで酒飲みじゃないわよ、失礼ね。」


 昼間にフラフラになるまで飲んでたのに、今さっきまで酒飲みたい言ってたじゃねぇかよ。完全にアル中だよ。


 まぁアイリーンには今回の顛末は話しておきたいから、マナが付いてきてくれるなら話は進むと思うし、まぁ助かりだな。




「んじゃ、行こうぜ、マナ。後で戻って来るから3人は適当に寛いでてくれよ。」

「ここはボンズの家じゃねえだろ、まぁ気を付けてな。」

「おう、こっちの事は心配すんな、せいぜい王様を怒らせるなよ!」

「ふんぐもーあんあー。」


 カレンは既に何か食ってるので何言ってるか分からんけど、とりあえず3人に関しては大丈夫だろうな。

 んじゃ城へ向かいますかね。




 宿舎の隅で座ってた特隊の兵士に声を掛け、城までの案内を頼む。


 アイリーンへの謁見は最初門前払い対応だったが、話を聞いてくれると、すんなり案内してくれた。


 宿舎から城へは舗装された道を真っ直ぐ歩くだけだったが、辺りには何人もの兵士や術士がウロウロしていた、俺達を連れて歩いている兵士は特隊なのもあってか、すれ違う人々は皆頭を下げている。

 さすが特隊。てかこの特隊のトップがクラリスなんだよなぁ…未だに信じられないわ。







 ……











 コンコン…







 とさっき見たばかりのデカい扉をノックする兵士。




「マガミユウとその連れの者、2名をお連れしました。」



『構わん、通せ。』



 中から籠もった声で返事をするアイリーン。


 ゆっくり音もなく開かれる扉の奥には、リラックス状態のアイリーンが片手にグラスを持ちながら座っている。

 その横には案の定、側近のルーメイも一緒だ。





「では私はこれにて…なにかあればお呼び下さい。」


 と礼儀正しく言いながら部屋から去っていく兵士。



 相変わらずの威厳を身体中から放つ女王様。

 正直苦手なんだが、一応解決報告でもしておいてやらんとな…アイリーンもシグマ嫌いだし、聞いてて不快な話でもないだろうしな。






「よう、無事帰ってきたわ。」

「ふん、主が出て行ってから暫くして空が元に戻ったのを確認したわ。本当に解決してくるとはのぅ、驚きじゃ。」

「まぁな、シグマってか元凶の野郎には顔面に一発ぶち込んで来たからよ、今回はそれで勘弁してくれ。」



 軽い発言にギラリと睨みつけるルーメイ、そんな側近を余所に俺に返してくれる不思議な女王様。




「ふはは!誠に愉快な男よ、本来なら首謀の首を所望するが、主の講釈にて妾の酌も進むというもの…大義であった。」

「別に俺がやりたいようにやってきただけだからな、まぁでもスッキリしたぜ?」

「してマガミユウよ、主の横に居るその者は?」

「あぁ、紹介が遅れたな、こっちは海原麻那(カイバラマナ)俺の同郷で今回の事件の解決を手伝ってもらったんだ。」



 愉快に笑うアイリーンにマナを紹介する。

 問題は同郷なのはマナだけじゃなくシグマ側にももう1人いるって事なんだけどな…


 そんな事を考えていると、マナは俺の一歩前へ踏み出し、腕を組みながら仁王立ちでアイリーンに言葉を放つ。



「始めまして木王アイリーン、私はカイバラマナよ。」

「ほぅ?なかなか面白い挨拶じゃな?その男の無礼もそうじゃが、貴様等の国では礼儀を学ぶ機会が無かったのか?」

「私達の国は、世界的にみても礼儀を重んじる傾向にあったわ、でもね、貴女のように椅子にふんぞり返る人には、この挨拶で充分なのよ。」




「ぶっ…」



 思わず吹いてしまったけど、マナは何であんなに高圧的なんだよ、アイリーンと同じ目線で話してるじゃねぇかよ。



「アイリーン様?この女如何致しましょう?」

「どうもせぬ。黙っておれルーメイ。」



 物騒なルーメイを宥めながら、ジッとマナを見つめるアイリーン。この我が儘女王様に礼儀やわびさびなんて通じるとは思えないけど、マナ的には納得いかなかったんだろうな。




「これはなかなか、其方も不思議な能力(ちから)を秘めておるのか…」

「木王ともなると、その辺は敏感に反応するのね。」

「ふん、そこの男同様、妾に対して臆せぬとはな。種族の王という偉大さが理解出来ぬ訳でもあるまいに…」


「おいおい、どうでも良いけど喧嘩すんなら出てくぞ、今は話に来ただけなんだからよ。」

「ふっ、妾相手に喧嘩とはまた面白い、が、主の言う話の方が妾の酌の肴になろうものよ、話すがよい。」

「本当に面倒くせぇな女王様はよ、とりあえず今回の事件はシグマの連中の仕業だったって事はもう知ってるな?」


「馬鹿にしておるのか?それとも主の頭の中が腐っておるのか?先刻妾と話したばかりであろうに?」

「くっ、面倒くせぇー。おい、マナ、お前も何か言ってくれよ、この調子だと話が進まねえ。」


「え?そんな事よりも、そのお酒ずいぶんと珍しい色ね?」


 人の揚げ足を取るのが得意な女王様に俺のモチベーションが下がる中、マナはアイリーンの飲んでるエメラルドグリーンに光る酒に気持ちが向いているようだ。


「ほう?よくぞ気付いたな、コレは我が国固有の果物から造った酒じゃ。」

「へぇー?木人種のお酒なんて初めて見たわ、ねえ私にも一杯もらえるかしら?」

「ふふ、本当に怖いもの知らずよ、しかしその度胸に免じて妾と杯を交わすことを許可しよう。ルーメイグラスを…」



 マナの無茶苦茶がアイリーンにはお気に入りだったみたいだな、ルーメイは大人しくグラスを持って来てるし。



「我が国自慢の一杯じゃ、味わうがよい。」

「いただきます   …なにこれ!美味しい!」

「ふふっ、当たり前ぞ妾の口にするもの不味い訳あろうか…。しかしこの酒は人族には、ちとキツいと思ったが其方も中々イケる口よのぅ?」

「確かに少し度数は高いけど、鼻に抜ける香りが独特でもう一口欲しくなるわ。」


 と、女同士で酒盛りが始まろうとしている。



「おいおい、酒飲んで盛り上がってるとこ悪いけどよ、事の顛末はどうすんだよ?」

「下らん、ルーメイに話しておけ、、マナとか言ったな、こっちにも妾の秘蔵の1本があってだな…」

「ちょっと、そういうのは早く出しなさいよ、一人で飲むより二人で飲んだ方が美味しいでしょ?」




 マジかこいつら、仕方ねぇな、簡単にルーメイに話だけしておくか…



「くっ、何故私が貴様相手にっ!」

「俺のセリフだよ、、まぁお互い苦労するな…」


 ポンっとルーメイの肩に手をやりながら、今回の話を始める。



 アイリーンと違って聞き上手なルーメイに、俺もスラスラと話せて楽だった。

 マナとアイリーンは、すっかり意気投合して酒盛りに明け暮れている…さっきまでの険悪なムードは何処行ったんだよ。














 ……













「そこで、現れたのが四聖将剣聖アクアだ!」

「ほぅ、噂に名高いあの女剣士か…」

「やっぱり有名なのか?めちゃくちゃ強かったぜ、てかまだ全力じゃなかったけど、カレンと良い勝負してたしな…」

「剣聖アクアは昔中央に居たのだが、当時は水聖ルビィに敗れた後に、シグマへ渡ったと言われていたが、そうか…実力は衰えていなかったという事だな。」



 木王の側近ルーメイが言うって事は、相当な手練れってとこだな。

 しかしそれを倒したルビィは化け物じゃねぇかよ。

 あのドジッ娘がねぇ…



「して、どうなったのだ!」

「おいおい食いつきますなぁ…まぁ慌てなさんなルーメイさんや、ここからが良いところよ。」




 と男同士でも話は弾む…


 あー俺も飲みたくなってきたぜ…









 ……








 ん?顔に何か固い物が…

 なんだコレ?テーブル?


 気付くと、いつの間にか椅子に座ったままテーブルを枕に寝てしまったらしい…

 俺の相手をしていてくれたルーメイもいつの間にか対面でうつ伏せに寝ている。


 そうだ、あの後酒が欲しくなって、マナとアイリーンに貰いに行ったんだったな…しかし、もらった酒がかなりの度数で俺もルーメイもいつの間にか潰れちまったんだよ…。


 いてて…頭がガンガンするぜ…あんな危ない酒をガブガブ飲んでたアイツ等は大丈夫なのかよ。



 と俺の心配を余所に、隣の部屋から笑い声交じりの会話が聞こえてくる。




『おとこはねー、頭が良くなきゃだめなのよー。』

『分かる!分かるぞマナ!我が国の者共は知性が足らんのだ!』




 あぁ…まだ元気いっぱいだね。

 てか今何時だよ?窓の外は真っ暗だし、結構遅い時間なのか??






 ……コンコン




 と入口をノックする音が聞こえる。

 起きる様子も無いルーメイをチラッと視界に入れながら、入口へと対応に向かう。





「はいよー?」




 とまだ酒の抜けてない顔で普通に扉を開く。



「マガミ!?」

「ユウ!?ここで何をしている!」




 そんな驚きの声と共に俺の視界に飛び込んで来たのは、連合国5王の一人人王オルタナと、連合国軍副長クラリスだった。




「あれ?オルタナとクラリスじゃん?何でこんな所に居るんだ?」

「こっちの台詞だ馬鹿者めっ!ここは木王アイリーン様の滞在中の部屋であろう!お前こそ何をしているのだっ!」


 今にも人を殺しかねない勢いで俺に詰め寄るクラリス、そんなクラリスの態度を見てもまだどこか酔いが冷めない駄目な俺。



「まぁ、落ち着けクラリス、マガミよ余とクラリスは先程到着したのだが、何やら一悶着あったそうではないか…」

「ん?そうそう、大変だったんだぜー?てかお前等2人が居ればもっと楽だったのによー。」

「ふむ、その話は後ほど詳しく聞かせてもらうとして、肝心の木王は何処に?」

「あぁ…アイリーンなら奥の部屋で酒盛り中だぜ?まぁ、まだまだ飲んでるから話そうとしても無駄だ、現に俺が無視されて今この状態だからな。」


 と酔い潰れてるルーメイを指さす。



「ん?この者は?どこかで?」

「アイリーンの側近のルーメイって奴だぞ?知ってるのかクラリス。」



 そう俺が口にした途端、潰れてるルーメイを無言で蹴り倒すクラリス。



 …ガシャーン!



 と激しい音を立てながら、椅子から転げ落ちるルーメイ。



「!?!?????」



 さすがに何が起きたのか分からないルーメイは、寝ぼけ眼のままキョロキョロしている。





「おいおいクラリス、お前何考えてんだよ。」



 無礼って言葉が可愛く思える仕打ちだぞ、てか木人族と険悪になってどうするんだよ。



「目が覚めたか?」


「くっ!クラリス様っ!?」



 天地がひっくり返ったルーメイはクラリスの顔を見て、更にパニック状態の顔をしている。


 え?何?どういう事!?



「貴様…まさか、木王を蔑ろに酒に呑まれるとは、連合国軍護衛隊長としての自覚が足らんようだな…。」

「もっ、申し訳ございません!!!!!」



 護衛隊長??

 ルーメイって護衛隊だったの??



「ん?護衛隊長ってカステルさんじゃねぇの?」

「マガミよ、各王には各護衛隊が付いているのだ、余にはカステルとクラリス、木王にはルーメイじゃな。」

「おっ、オルタナ王っ!!!!???」



 おいおい少し落ち着けルーメイ、初登場の時のキャラが完全に崩壊してるぞ?




「なるほど、我が部下2人は酒盛り中に寝ていたということだな。」

「いやいやクラリスよ、俺はアイリーンに今回の事件の話をしに来たのな?」

「結果がこうでは話にならん!」

「申し訳ございません!何卒!ご容赦を…」


「大丈夫だルーメイ、クラリスは意外に優しいんだ。」

「ふふっユウよ…貴様にはまだ言いたい事があってだな…」

「ん?なんだろ?今回のご褒美か何かかな?」

「貴様、私に何か隠していることが無いか??」



 隠し事?なんだろ?


 チラッとオルタナを見ると何やらバツの悪そうな顔をしている。




 あ…やべ…

 なんか分かちゃったかも。




「ふふふ、オルタナ様から聞いたぞユウよ、明日ルビィ様がケアルランドへ来訪するらしいな?」

「う、うん、そうだよ?あれ?言わなかったっけ?アレー?オカシイナ??」

「ほぅ?シラを切るつもりか?良いだろう、後ほどゆっくりと話をしようではないか?なに、安心しろ、私は意外に優しいんだろ?ふふふ…」




 ヤバいなこりゃ…久しぶりの暴走モード突入不可避だ。

 ルーメイも完全に縮こまってるし、クラリス様パネェっす!怖ぇっす!


 なんて事を思ってると…







 バゴォォーンッ!!!!









 と、マナとアイリーンが酒盛りしていた扉がぶっ壊れるんじゃないかと思うくらいの音を立てながら開く。






「ガタガタとやかましいぞ!!貴様等っ!!」






 片手にグラスではなく酒瓶を持ちながら、赤い顔で怒鳴りつけるアイリーン。

 もはや女王様の威厳ゼロ、誰がどう見ても酔っ払いだな。



「久しいの、木王よ。」

「これは木王様、お久しぶりに御座います。夜更けに何分騒がしく申し訳ありません。」



 アイリーンの登場に素早く膝を付く根っからの軍人クラリス。


「なんじゃ、人王ではないか?こんな夜更けに妾の部屋を訪ねるとは随分と大胆な事が出来るようになったものよのう。

 先日のカリキの件耳にしておる、クラリス以下4名には妾も刺客を差し向けたが、それも杞憂じゃったわ…許せ。」



 おい、ふざけんな。

 それ相手してたの俺等だし、謝る相手間違えてるから!



「ふっ、相変わらず小僧呼ばわりとはな、余も見た目だけは老け込んだはずなんじゃがのぅ…其方の差し向けた刺客もどうやら皆無事で帰ってきたようでなにより、こちらも被害は出て居らぬ手打ちで良いじゃろ。」


 おい、ふざけんな。

 それ相手してたの俺等だし、勝手に手打ちで纏めんなよ!



「ふん、人種の違い故に貴様が王と呼ばれたのは昨日くらいの感覚じゃ。」



 昨日って、言い過ぎだ。

 ただの酔っ払いの戯言じゃねぇかよ。


 でもまぁ、この流れで俺とルーメイは救われたんじゃないか?クラリスもなんか暴れられる様子じゃないしな。


 頑張れアイリーン!!

 もっと絡め!



「まぁ、久しく貴様の顔を見られて良かったわ、妾はもう少し嗜んで行く、小僧お前も飲むか?」

「そうじゃな、たまには付き合うかのぅ。」

「ふふふ…小僧め、麗しき美女2人と酌が付き合えるとは果報者よ。」




 あれ?オルタナそっち行っちゃう感じですかな?

 ヤバいな、早めに行動に出なければ、この後の展開が…



「さ、さて、お目通しも済んだ事だし、我等は宿舎の方へ退散しましょうかね?なぁルーメイさんや。」

「そ、そうだな、連合国軍最高幹部が居るならば私はここに留まらなくとも大丈夫だなマガミ。」



 ルーメイもこの後の危険を感じたのか、上手くこの場を離れる事が最良とシンクロする。



 が…






「ははは…お前達何処へ行くつもりだ?」


 と俺とルーメイの首根っこをガッシリ捕まえる暴君クラリス。


「あの、その、少し風に当たりに…ね?」

「無駄だ…マガミよ、諦めろ。」

「おい!ルーメイお前!何格好良く覚悟決めてんだよ!」




「分かった、分かった、ここでは物が壊れる…外で話すとするか…」

「ちょ!ちょっ!クラリスさん?物が壊れる話ってどういう事ですかね?話ならここで良いですよー?」

「ふふ、マガミ往生際が悪いな。」

「お前はさっきからキャラブレしまくってんだって!!何悟ってんだよぉぉぉぉっ!!!!」




「さぁ、行くぞ、寝るにはまだ早いからな!はっはっはー!!」



「ルーメイにマガミよ、精々クラリスに揉んでもらえ。」

「アイリーン!てめぇふざけんなよ!大事な側近と俺が命の危機だぞ!おい!」

「やかましいわ、妾には関係無い。」


 と一蹴された俺は仕方なく覚悟を決める…。








 そんなこんなで、この後クラリスに城内演習場でボコボコにされた俺とルーメイ…


 2人の間に変な友情が生まれたのはこの時からだった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ